不安と冷静
「先生、なぜに黒塗りのいかにもな車に乗せられたんでしょうか」
運営に報告したら、数十分後に三人まとめて黒塗りのいかにもな車に乗せられていた。
乗せられていたと言うより、乗った。
運営の女性が丁寧に誘導してくれ、それに従い、結城先生を先頭に車に乗り込んだ。
学校からドンドンと離れて、隣町の見覚えのある本屋を通り過ぎた辺りから、不安がバクバクとやってきた。
このまま、二度とは帰れないんじゃないだろうか。
警戒心がくるよりも混乱した状況であったとしても、迂闊過ぎたのではなうだろうか。
「安心安全な所で話をするためですよ、井上君は案外おバカですね」
「いや、いや、向こうにとってはですよね、僕らにとって安心安全とは限らないですよね」
「ふっ、早くも悪がそこまでやってきた、魔法少女キュアトロールの出番のようですね」
「不安しかないんですけど、この面子」
役ただずの僕、役ただずの先生、わけのわからない魔法少女。
「大丈夫よ、井上君スマホとか没収されてないでしょ」
「あぁ確かにそうでした、結城先生冷静ですね」
そうだ、国家権力とかに電話出来る手段が残されているし、GPSという機能やSNSなどの通信手段があるという安心感がすごいしてきた。
さすが文明の機器は、人命の危機を回避してくれる。
「つまり、没収しなくてもどうにかできる自信があるって事ですから、ジタバタしても無理という事です、魔法少女井上、腹くくりましょう」
「いや、先生そんな冷静さは求めていないですよ」
後誰が、魔法少女だ。
「つまり私の魔法少女キュアトロールが、暴れてこのピンチからの脱出をすれば、万事解決するのではないだろうか」
「それは、最終手段としましょう」
「最終手段とか言うとあれだな、残された魔法少女が最後の希望みたいで、なんかカッコいいな」
「不安しかないんですけど」
「大丈夫だ井上、私には希望しか見えてない」
「井上君、今気づいたんだけど、希な望みで、希望って事は、井上君の運じゃ掴めるか不安しかないわね」
「いや、結城先生だからそんな言葉は、求めていないんですよ」
不安しか抱きようのない、車内から降ろしてもらう頃には、日は沈みかけて、知らない街の知らない地下駐車場だった。
先ほどから運転し、騒がしい車内でも何一つ喋らない、運営の女性が来たときと同じように丁寧にこちらですとついて来るように促す。
僕らに比べて、いや僕を除く二人に比べた場合、常識とかがある様に思える。
なんなら、こちらの方が信用出来そうであるが、冷静に考えてみると、僕を不安しかない場所へと連れて来たのが、まぎれもなくこの運営の女性であるのだ。
しかし、ノコノコとついていくしかないのだし、マイナスの事ばかり考えていてもしょうがない。
先生を見習って、何も考えないほうが、精神的にいいのかもしれない。
地下駐車場からエレベーターへと乗り、グングンと上に上がっていき、目的の階でドアが開く。
そのまま寝転ぶことも出来そうなふかふかの絨毯の上を歩くと、見間違いであってほしいが、社長室とプレートが飾られた部屋へと通される。
黒く、豪勢な椅子に座りながらこちらを見ているのは、ハゲ頭にサングラス姿の中々にナカナカなお爺さんであった。
「おかえりなさい、社長」
「はい、ご苦労様でした」
ナカナカなお爺さんは、椅子から腰をあげて、そのまま部屋から出て行った。
「そちらのソファにでもおかけください、あぁ自己紹介が遅れて申し訳ありませんでした、七限無限社社長の南野灯です、別に危害を加えるつもりはありませんから、リラックスして下さいね」
丁寧な運営の女性だとばかり思っていたが、社長だったとは思わなかったが、やはり社長ともなると、滲み出る常識人としての信用度が、結城先生より段違いだ。
社長ともなるとこうも違うものか、一瞬感心したが、いやあの中々にナカナカなお爺さんを代理として置いておくのは、普通じゃないよなと思い直しながら、ふかふかのソファーへと腰かけた。