自明の理
「何やら騒がしい出来事があったようですね」
「いや、騒がしくみえても猫が一匹いなくなっただけのことさ、なぁ井上」
「ネズミ達もいなくなったけどね」
「まぁ細かいことは置いてだ、それより井上さっさとかぐや姫に渡すのがあるだろ」
「私が求めた物を持って来たと言うのですか?」
「驚くということは、井上をただ単に屋敷をウロウロしてた変態だと思っていたか?」
「お前じゃあるまいし、かぐや姫さんがそんな事思うわけないだろう」
「目を逸らされているんじゃないか、もしくは井上お前が現実から目を背けているか」
「背けてねぇよ!」
「変態かどうかは私からは問いませんが、本当に私の幸せを見つけてきたのですか?」
「まぁ出来れば、変態かどうかは問わなくていいですけど」
「それは井上が問わなくても変態だと言うことを聞かずともわかるという事だな」
「違うわ!」
「あの私の幸せを証明するものを持ってきたのですよね」
「そうでした」
「おいおい、忘れんなよ大事な事だろ」
「キュアトロールの野蛮さを証明するのは簡単なことですが、あなたの幸せを証明するという事は至極難しい事です」
「その難しい事を貴方は成し遂げたと」
「えぇ答えを出す事に苦労はしましたが、手に入れるのは簡単でした」
「ただの竹の様に見えますが」
「はい、屋敷近くに生えていたので、手に入れるのは容易でした」
「竹とってきたのはお前じゃねぇけどな」
「この竹が何故、私の幸せを証明するのですか」
「この竹をあなた自身が上手く割れば、あなたの幸せが証明出来ますが、下手に割れば幸せは逃げてしまうでしょう」
「なるほど」
「割らないのか、かぐや姫さんよ」
「いえ、まるで詐欺みたいな話でビックリしてしまいました」
「まぁ確かに、井上はかぐや姫の幸せを持ってきたとも言えるし、持ってこなかったともいえる詐欺みたいな話だな」
「詐欺みたいな話ですか、でもまぁお互い様ですよね」
「確かに、それでも私は欲しかったのです、自分の幸せの証を欲しかったのです」
「それを他人が証明することは出来ないと思うし、そもそも幸せなんか証明することはないんですよ、幸せは感じるものであるし証明することもなく存在できるんですから、証明いらずの自明の理ってやつです」
「本当に詐欺みたいな話ですが、私の幸せを証明できるものを持ってきたとも言えますので、貴方のものになりましょう」
「ありがとうございます」
「なぁ井上自明の理ってヤツはそれは井上が変態だと証明しなくても変態だと確定しているものか?」
「違う」