僕は誰かを幸せにできるか?
あなたを幸せにしてあげると堂々と言える人は、思い上がっている相当な自信家か恋に舞い上がっているバカップルだろう。
冷静に夢のない事をいってしまえば、現実的な部分では幸せにできるかどうかの保証なんてないのだから。
大切に思う事と大切にする事と幸せにすることそれぞれがイコールなんかではないと悟るようにニヒルにつぶやけるようになれれば、大人というものだ。
「いきなり甲斐性を問われるとは思いもしなかったな、ありゃあ井上には酷な質問だよ」
「甲斐性がないとは失礼だな」
かぐや姫が出した質問はとりわけ酷な質問と言うわけでもない。
かぐや姫はカタログにある様に赤い和服に黒いおかっぱ姿でとてもかわいからしく、伝統的なコケシや日本人形がこの可愛らしい姿を表しているのが嘘っぱちの話だと言われたら、その話に乗っかるぐらいに可愛らしい姿であった。
まぁ可愛らしい姿に和んだのはその初対面で見惚れていた時ぐらいで、その見惚れていた、かぐや姫の言葉が僕の浮かれていた熱を奪った。
「あなたは私を幸せにすることができますか?」
ノリでうん任せて下さいと胸をドンと叩ける浅ましくも図太い精神が欲しかった。
ただ、かぐや姫のその言葉がでなく戸惑ってしまった。
そして答えが出ずにチョイと散策しますと偽って屋敷まわりの鬱蒼としげる竹林へと逃げてしまった。
ついてきた気の利かないキュアトロールが見透かすように茶化すのも無理はない。
可愛らしい女性に幸せにできるかと問われて何も答えることができなかった僕は確かに甲斐性がないのだろう。
「井上は甲斐性はなくても変態性はアピール出来るやつだとは思っていたんだがな」
「そこアピールして何かあるのか」
「それともあれか、井上は存在だけで変態性アピールできるとか」
「キュアトロールじゃあるまいし」
「まぁ魔法少女という存在感は隠しきれないと自負している」
そっちじゃないという代わりに鼻でわらう事にして、もし魔法少女キュアトロールや結城先生並みの図太い精神が僕に欠片でもあれば、かぐや姫の問いに答えることができたのにと思えば悔しくてならない。
「それで井上、どうすんだ?」
「どうすんだ?」
「かぐや姫を使い魔のメイドとして契約することだよ」
「かぐや姫を幸せにできるかな」
「まぁ控えめに言って、お前の使い魔メイドというものでかぐや姫が幸せになれるとお前が思っているなら、井上は何処の魔王だよと殴って教えたい」
「うん、お前が殴りたいだけだよな」
「ただ魔法少女井上なら
愛とか希望かがける魔法少女ならば誰かに誰かの思う幸せの数千分の一ぐらいの幸せは届けられるだろ」
「僕の評価もの凄い低いな!」
全くもって殺伐とした魔法少女キュアトロールだ。
ただかぐや姫のメイド姿見たかった理由を思い出すことができたのだから、良しとしよう。
「やっぱり、僕はかぐや姫をと使い魔メイドの契約をしたい」
「えっ井上殴ってもいいのか」
「いやだよ」
愛とか希望何処にいったんだよ。
それでもかぐや姫の質問から答えられず逃げた僕はもう一度かぐや姫が住む屋敷へと、この鬱蒼とした竹林を後にした。