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他人の正気

 誰だって正気ですかと聞かれたことなどあまり無いが、正気ですかと思ったことのほうが、数多くあるだろう。


 そうなると人生は他人の正気を疑うということに多くを費やしている事となる。


 いやこんな考えを導き出した僕の脳に正気ですかと問いたいが、まぁ僕の弱い心を守るために弾き出した自己防衛のためなのだ。


 人生は他人に正気ですかと思われている時間だと言えなくも無いと言う事だと。


 だから南野社長に、そんな目で見られても人生的に、長い目で見てみればそれは気にすることも無い日常なんだと考えることが出来るということだ。


 癒されたいのでメイドの使い魔探しに行きたいですと言ったならば、正気を疑うということをしない方がおかしいかもしれない。


 だって僕は初仕事をしたばかりなのに癒されたいと口にすのだから。


 しかも、メイドの使い魔で癒されたいとか理解不能と思われる単語を言うのだ。


 他人の正気を疑うのが人生。

 他人に正気を疑われるのが人生。


 そう思えば少しばかり気は楽になるだろう。


「癒される為に疲れるっておかしくない?」

「使い魔のメイドって二重表現なのかって疑問ぐらいにはおかしいかもな」

「そりゃあ難問だ、さっき考えたけれど答え出なかったし」

「井上お前そんな事考えている暇あるなら、社長に連絡しろよお前がメイドの使い魔探しに行きたいって言うからだろ」

「あー言ったのか覚えてないなぁ」

「結城先生が連絡して、南野社長に今日呼び出されて会社前でうずくまって随分と時間が立っていることも」

「忘れたかったなぁ、もぉ絶対怒られる」


 結城先生はこんな時に限って、教職員って忙しいからとか逃げているし、キュアトロールじゃあ何の役に立つのかわからないし。


 いや結城先生もそうだけど。


「なんか考えたら、さらに疲れたんだけど」

「使い魔のメイドが二重表現かどうか気にしていたらそりゃあ疲れるだろうよ」


 人の気を知ってか知らずか、適当な答えをするキュアトロールを恨めしく思いながら、南野社長がまつ場所へと移動する。


 南野社長がまつ場所へと近付くにつれて癒されたいと願う気持ちのほうが大きくなる。


「あら約束の時間より早いですね」


 部屋の扉を開けてみると拍子抜けするほどに、怒っている様には全く見えず、和やかに出迎えてくれた南野社長がいた。


「正気ですか、南野社長」

「急になんですか」


 拍子抜けした気持ちのやり場をどうしまったら良いのか分からず、先ほどまでの気苦労の分、南野社長に掴みかかる勢いで、南野社長の正気を疑ってしまった。

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