癒されたいと願う
日常に足りないもの。
お金、時間、刺激、自由、愛とあげればあげる程に虚しく、また日常に足りないものが多すぎるのか、それとも人間の欲望が多すぎるのか分からなくなる。
満たされるのはほんの僅かな時しかなく、あとは何処かしら欠けて足りていないのだ。
それを良しとするのか悪しとするのかが生き方になるのかもしれない。
その生き方が良いか悪いかその生き方で後悔するのかどうかすら誰にだって分からない。
ただ、分かっているのは結局のところ日常に満足することはないだろう、日常に満足する事が幸せか不幸か知る由もないという事だろう。
いつもの放課後にアンニュイというのかわからないが、少しばかり哲学めいた事を考えてしまうぐらいに疲れていた。
初仕事から数日経っているというのに、筋肉痛のように身体が重いと感じてしまう。
鬱陶しいぐらいに、煩わしいぐらいに普段なら感じない風がまとわりついて、不快としか言えない気分が哲学めいたことを考えさせてしまうのだ。
そう、僕の日常には足りないものがある。
「癒し潤いが足りていない」
「学生のくせに何OLみたいな事言っているの」
「いや、察してくださいよ」
察してもらえる事に期待出来ない様な環境。
ズボラでチャランポランと音がなりそうな人が教師で顧問であるのに加えて、最近では危なかしい言動と怪しい風貌で魔法少女を名乗るキュアトロールが、日常にいるのだから癒しと言うものが欠けているとしか思えない。
「癒しとかつまりあれか井上お前は、メイドとかそういうのがいてほしいというわけか?」
「そういうことは言っていない、ペットとかでもいいから癒されたい」
「ペットとかならあれ癒されるとかじゃなくて、自分より下がいるという優越感らしいわよ」
「僕現在進行形で自分より下がいるのに癒されてないんでそれ俗説ですね」
「井上はつまり優越感に浸りたいのか、メイド服を見たいのかどっちなんだよ」
「どっちかと言うとメイド服かな」
「なんだ、てっきりメイド服を見て優越感に浸りたいというと思った」
キュアトロールは僕をそんな性欲のつよいお金持ちのイメージを持っているのが以外だ。
そんなことなんか思うわけがないのだが、この思いを吐露するだけでも疲れてしまう。
「じゃあ次の土日にペットを兼ねて使い魔のメイドでも探しに行けば?」
「あーいいですね」
使い魔って癒される為にいるのか、メイドがいるのは疑問だが、魔法少女らしくないキュアトロールがいることだし適当に頷くことに抵抗がない程に僕は疲れていて、結城先生の提案を抵抗なく呑み込んだ。