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聞いていないけれどね。

 先生の大変に役に立ったアドバイス、流石年の功というか、やはりどんな人物の話には、それなりにその人なりに、利があるものだ。


 後悔というよりは、取り繕うように、結城先生への笑顔を絶やさずにいた。


「とりあえず、実技試験は合格ですね」

「まぁ終わってみれば、楽勝だったな」


 確かに終わってみれば、楽勝だったと言い切れるかもしれないが、フェイバリットシステムが作動しなければ、こう着状態が続いていたのだから、楽勝とは言い難い。


 でも、まぁ実技試験が合格でおわれば、魔法少女キュアトロールの望み通り、暴れられる部署でもどこでも、南野社長が用意してくれて僕はこんなわけのわからない状況から、抜け出せるのだから、彼女の見栄ぐらい茶化さず、黙って笑顔でいることぐらいなんでもないことだ。


 南野社長は呆れ気味だったが、眉をキッと寄せ、咳払いをした。


「ゲームで言うところのチュートリアル、序盤も序盤であそこまで苦労するとは、正直思いませんでした」


 チュートリアルだったら、もう少し親切にお願いしたい。


「特にあなた方は、ロクに説明も読まず、聞かずに行き当たりばったりにもほどがあります、アプリのカードを使えば、遠距離移動もできたでしょうし、回復カードもあったでしょう」

「おい、井上どういうことだ」

「知らないよ、初耳だよ」


 南野社長さん、ソコ大事だよね。


 ビックリして、南野社長を凝視したが、呆れるのも疲れるとばかりにため息をつき、僕のスマホを指差した。


「アプリ起動したあと、操作説明を押せばわかりましたよ」

「一番使わない操作だよ」

「アプリがアップデートされたのに、何故目を通さないんですか」


 コッチが悪いみたいな空気を出しているけど、明らかにソッチも悪くないですか。


 6割くらいソッチが悪いですと言い張りたいが、さもあたりまえみたいに空気を作っていくのは、とてもズルイ。


 その空気を打ち破る様に、結城先生がパンと手を打ち鳴らす。


「まぁこの2人はフェイバリットシステムが作動するぐらいには、チュートリアルを突破するぐらいには、運と才覚があったって事よね」

「そうですね」

「この2人ならば、魔法少女の限界突破をできるかもしれないと推薦した私の給料、ボーナスとか査定にプラスに働くわよね」

「まぁ、そうですね」


 途中から、結城先生の給料とかボーナスとかの変な方向に話がいって無いだろうか。


 この状況は、どういうことであるのか首を傾げても、頭を捻っても言葉が見つからない。


「結城先生?」

「何か言いたい事でもあるの?」

「ボーナスとか給料って何ですか」


 結城先生は首を傾げて、あからさまに悩んだふりをして、答えてくれた。


「お金かな」


 指でお金のジェスチャー付きで、答えてくれたけれど、そういう事ではないし、そのジェスチャーが無性に腹が立つのは、僕の器量が狭いせいではないはずだ。


「そうじゃなくて」


 わかっているから、落ちつけとばかりに手のひらをこちらに向けて静止する。


「まぁ私世界を救ったあと、この会社のエージェントで、後進育成とか空想生物との荒事交渉が主な仕事なのよ、学校の教師は表の顔よ」


 軽い口調とこれ迄の言動のせいで、結城先生のカミングアウトを僕の脳みそが理解する事を拒否してしまいそうだ。


 おかげで、魔法少女キュアトロールが、僕のキラキラデイズのアプリのマイルームに出這入りできる事の説明を聞き漏らしそうになったり、南野社長に何か聞きたいことがあったのだけど、何か思い出せずモヤモヤしたりした。


「家まで送りますから、後はこの契約書にキチンと目を通して判子押して提出して下さいね」


 その用紙には、キラキラデイズ開発担当として働くと記載されて、魔法少女キュアトロールと僕の名前が記載されていた。


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