フェイバリットシステム発動
「フェイバリットシステムが、起動しない」
「故障かよ、使えねぇな」
「ちなみにフェイバリットシステムの起動方法って知っていたりする?」
「知らないのかよ、フェイバリットシステム使えねぇな」
奇跡はおきなかったというか、おこせなかった。
いや、起動方法がサッパリわからなかったのだからしょうがないと言えば、しょうがないところである。
魔法少女キュアトロールも教えてくれる様子の無い事から、知らないようで、こうなってくると結局絆とかより、人の話をきちんと聞くという基本の大切さがわかる。
結城先生の話でさえ、キチンと聞いていれば1厘の価値があったのかもしれない、盗人にさえ3分の利が存在するぐらいだ。
本当に役に立たない先生である。
そもそも、こんな状況になったのだって、結城先生が渡したパックを開けたら、魔法少女キュアトロールが出現したことが、原因だというのに、元凶たる自覚というものが無いというのも困りものだ。
しかし、先生の話を思い出してズボンのポケットをまさぐると、カサリとした確かな感触があった。
「あった」
「どうした、財布でも落としたか」
「希望ですよ、先生から貰ったカードパックの残り4枚があるんです」
「なるほど、もしかしたら確かに希望になるかもしれない」
魔法少女キュアトロールが、出現したパックならば、奇跡的にこの状況を打破出来るかもしれない。
キラキラデイズは元々世界の危機を救うために、空想生物と戦うためのものだとも言っていたし、期待できるかもしれない。
カードの数だけ夢がある。
息を大きく吸い込み大きな声で叫ぶ。
「こいやぁーーーーーーー」
取り出したカードは、フィールド海、フィールド森、フィールド学校の3枚だった。
再録されてはいるが、女の子が初期版と再録版は違うけど、結局のところ、今は役に立たないであろうフィールドカードだった。
「クソっ」
「おい、奇跡は起きたか」
「3枚はフィールドカードだった」
「使えそうなのか、何も起こって無いんだけど」
確かに変化などない。
僕だって変化があるわけでもない。
奇跡を起こすカードだって、引ける確証なんてない。
さっきだって、一気に引くつもりだったのに、怖さに日和って3枚しか引いた。
でも、やることは変わらない。
いつだって、希望を奇跡を夢見て、僕は引いてきた。
この一枚でもやる事は変わらない。
当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ、本当に当たってください。
目を瞑り祈りながら引いたカードを確認するとその瞬間に、何かの意思が流れこむ様な感覚がした。
そして、それはまちがいなく奇跡を呼ぶ一枚。
「魔法少女シンデレラをフェイバリットシステムで召喚」
流れるように、カードから白いドレス姿の女性がでてくると転がっているカボチャが馬車となり階段を駆け上がって行く。
「おぉ、意味ねぇな階段がどんどん上に伸びているぞ」
「いや、魔法少女シンデレラはここからだ、魔法は十二時迄だよ」
怪訝そうに此方を見ていたけれど、あたりに鳴り響く時計の鐘の音が聞こえてくると、理解した様に頷いた。
時計の鐘の音が静かになると魔法少女シンデレラと、天まで届く様な階段が消えていた。
代わりにその場に残されたのは、ガラスの靴と僕たち4人。
僕と魔法少女キュアトロール、魔法少女ジャック・ラーンと見覚えのない僕たちひざ迄の辺りしかない、少女だった。
向こうが驚く前に、魔法少女キュアトロールは、魔法とは名ばかりの剛腕をふるい、倒した。
空想空間が崩壊した様に、姿をかえもとの社長室へと戻っていた。
「合格ですね」
小さい少女をいたわる様に撫でながら、僕たちに合格を言い渡す。
「やるじゃない、私のアドバイスがあったにしては遅かったけどね」
まぁ結城先生アドバイスなんて役に立ったかどうかなんて言うに及ばずだ。
「見越し入道、見越したって言えばあの階段消えると暗にアドバイスしたんだものね、答えを見越したなんてね」
だから、見上げる度に階段が大きくなっていったのか。
「もちろん役に立ちましたとも」