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死んで花実が咲くものか 30

「あれはデモンストレーションでございます。おそらく自殺予告者が死を免れたのはタマさんが初めてではないかと思いますが、いかがでした? 私の仕事、ご理解いただけましたでしょうか?」


 先日も治子と共に利用したクラシックな雰囲気の喫茶店。3人はテーブル席で前回と同じ飲み物を前に話していた。


 tamaと美佳からお礼を受けた治子だったが、純粋に助けたのだと思われては都合が悪いため、準備していた回答を2人に披露した。現場にカメラがあり、撮影を止める方法も分からなかったので、逆にその撮影記録を利用しようと考えたわけだ。


「それで、今週の自殺予告者は美佳さん、あなたですよね?」


 治子に尋ねられて、美佳は「はい」と言って頷いた。


 サイト内で使用しているmiyaという名前が美佳のことだとは治子に教えていなかったが、CRでのtamaとmiyaのやり取りを閲覧して、miya=美佳であると治子は判断したのかもしれない。


「美佳さんからが本番です。」


「本番……と言いますと?」


「つまり、料金が発生するということです。」


 美佳さん“ から ”という言い方をして、治子の脳裏にある考えが過ぎった。


 CR内のこの怪奇現象……自殺予告者の死を回避させるだけに留めておけば、つまり、元凶を生かしたままにしておけば、一週間ごとにそれなりの収益を上げられるのではないか、と。


 彼女は思わず口角が上がるのを感じ、いかんいかんと口元を改めて引き締めた。


 人の命を商売に利用するなんて……どうかしてるわ。いや、それを言い出したら、生命保険だって成立した当初は人の命を博打にするな、と叩かれていたじゃない?


「ちなみに、料金はいかほどで?」


 治子があらぬ妄想を展開していると、美佳が緊張を滲ませた顔で尋ねた。


「2億円!」


 妙な勢いで告げられた金額に美佳は絶句した。


「すいません、それはちょっと高過ぎませんか?」


 隣のtamaが治子の料金設定にケチを付けると、


「これから料金の内容をお話します。」


 と言って、治子は飛びっ切りの営業スマイルを浮かべた。

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