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肝試し ⑬

 治子は帰りの会が終わると一目散に校門から飛び出した。


 琢磨はあのあと、


「誰が描いたんだ!?」


 と喚いた。それを聞いた彼女は大笑いから一転、完全に興醒めしてしまった。ああいうのは本人がやるから面白いのであって、人からやられたのであれば、やったヤツがつまらないヤツってだけだ……というのが彼女の持論だった。それよりなにより、彼に気付かれることなく彼の瞼に目を描くなんて芸当ができる犯人がクラスの中にいないことと、観音様を訪れたか、という彼女の質問への回答に彼が窮していたことを合わせて考えると、答えは1つ。


 たくやんは昨日、観音様に悪戯したんだ!


 彼女はまたもや女性刑事になったつもりで、自分の推測が当っているかどうかを検証するために観音様のところへ向かった。悪戯の痕跡が消されてしまったあとでは敵わないと思い、急いで教室を出たわけ。


 息を切らせながら坂道を大股で歩き、お堂の中を見てビックリ。


 観音様の目の部分にマジックで目が描かれていたのだ。


 なるほどぉ、と彼女は思った。


 それから水筒を取り出して、ハンカチを湿らせて観音様の目を擦ってみたが、油性ペンで描かれたようで拭い去ることができなかった。


 う~……と治子が唇を尖らせていると、


「あら、お姉ちゃん。キレイにしてくれてたのね? ありがとう。」


 と女性に声を掛けられた。ペコリと頭を下げる治子。


「でもそれ、水じゃ落ちないのよ。ちょっといい?」


 お堂の前を女性に譲ると、女性はシンナーを貰ってきたのだと治子に言ってから、観音様を拭いた。


「今朝、この落書きを見つけてね、観音様にこんな落書きする子がいるなんて世も末だと思ったけど、お姉ちゃんみたいな子もいるから、まだまだ日本も捨てたもんじゃないわね。」


 と女性は言って治子の頭を撫でると、観音様に手を合わせてから去っていった。


 これにて一件落着! と治子は思い、帰ろうとしたところ、琢磨と修の2人がノコノコと坂道を上がってくるのが見えた。

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