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肝試し ⑫

 算数の授業後、治子は琢磨の席に駆け寄った。すぐに呼び止めなければ、彼もほかの男子と同じようにあっという間に校庭へ飛び出してしまうからだ。


「たくやん、なんか変わったとこととかない?」


 彼女が尋ねると、琢磨は頭に疑問符を浮かべながら彼女の爪先から頭のてっぺんまで視線を走らせて、


「別に、いつもどおりじゃん。」


 と答えた。


「私のことじゃなくって、たくやんになんか変わったことないかって聞いたの。」


 言いながら、この調子なら別になんともなさそうだな、と彼女は思った。一方、琢磨は眉間に皺を寄せ、片頬を膨らませて思案したが、


「特になにもないよ?」


 と言った。


 それから、なんで? と聞かれたので、治子は観音様の所にいたお爺さんの幽霊が来ていたことを彼に話し、


「あれから観音様のとこには行ってないよね?」


 と確認すると、彼は分かりやすく回答に窮した。その様子を見て、彼女は目を丸くした。


 ダン! と彼の机に片手を付いて、彼の顔を覗き込むようにして


「行ったのですね?」


 と彼女。新喜劇と時代劇、そして推理モノのドラマが大好きな彼女はまさにいま、女性刑事になったつもりでいたのだ。


「ほら、なにしたか言いなさい!」


 と彼の頬を軽くつねると、表情を変えた彼の顔に異変が起きていることに彼女は気付き、また目を丸くした。


「たくやん、たくやん。ちょっと目をつむってみて。」


「なんだよ?」


「いいから!」


 琢磨が目を閉じると、彼の瞼に目が描かれていることが分かり、彼女は大笑いした。


「たくやん、わざわざ瞼に目を描いたの?」


 彼女は古典的な笑いが大好きだったから、琢磨の瞼の目がツボに入ってしまったのだ。彼女の大笑いに周りのみんなも琢磨の席に引き寄せられてきて、みんなで彼の瞼に描かれた目を見て大爆笑。


「居眠りに精を出すのはいいけど、せっかく描いたんなら突っ伏して寝ちゃダメだよ。」


 と誰かが言うとまた笑いが起こった。


 当の琢磨自身が訳が分からないといったふうにキョロキョロしてるのが、みんなには余計に面白かった。


「たくやん、見てみ?」


 と、女子の一人が琢磨に鏡を差し出し、鏡を受け取った琢磨が


「おお!?」


 と驚きの声を上げたものだから、また大爆笑。


 その日、琢磨はめでたくクラス1の人気者になったのだった。

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