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肝試し ⑨

 お婆さんの言う“ 姉 ”とは治子の姉のことではなく、お婆さんの姉のことらしかった。


 お婆さんの姉の子供時分の姿と、治子の木登り姿が重なったというのだ。お婆さんの姉は重信と同じで、大正14年にS町を襲った土砂災害によって14歳の若さで亡くなっていた。お婆さんと姉は3歳離れた姉妹で、お婆さんは現在87歳。なお、お婆さんの名前はナツで、姉の方はハルといった。


「一等目の女の子が春だから、二番目が夏ってね。単純でしょ?」


 久方ぶりに姉のことを思い出し、懐かしくなったのか、お婆さんは姉のことを饒舌に語った。治子は話を聞きながら庭のすももの木を見て、何十年も前にいまの私と同じように、お婆さんのお姉ちゃんが登ってたんだ……なんだか不思議な感じ、と思ったものだった。


 その日、治子は結局自分が採ったよりも多くのすももの実を家族への土産にとお婆さんから貰って、小島家をあとにした。


 家に戻って母に事情を話してすももの実を渡すと、その日の夕食時に小島家のことが話題に上った。


 治子の父も当時を偲びながら、


「婆さんが元気な頃は小島にもよく遊びに行ってたみたいだけどなぁ。」


 と言った。それは治子も連れて行ってもらったことがあったから薄らとは記憶していた。それから、小島家と児島家は元々同じ家で、小島が本家で児島が分家なのだと父は言った。


「小島から分かれたからウチはこどもの児になってるんだ。」


 と。


「元々小さいのに、そのこどもってんだからオレらはもっと小さくなってなきゃならないんだぜ?」


 と肩を竦めて父は面白がっていた。


「じゃあ、ウチと小島さんって親戚になるの?」


 と治子が尋ねると、


「そうだよ。どれくらい遠いのか知らないけど、系図を辿ればどこかで繋がってるはずだ。」


 と父。


 治子は小島商店をはじめとするS町内の小島さんと児島さんを頭の中で数えながら、S町だけでも結構親戚がいるんだなぁと思った。


 ――――――――――――――――


 というのが治子が小島家を訪れるようになったきっかけで、それ以来、彼女は足繁く小島家に通うようになったのだった。

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