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肝試し ⑦

 幽霊がいると明言したって意味がないことは、治子も先から分かっていた。


 琢磨や英明が反発するのも分かっていた。その点、竜也は治子と特に仲が良かったから、彼女の言うことにも理解を示してくれたし、修と健はおとなしい方だったから、結論が出るまではなにも言わなかった。


 治子はお爺さんの幽霊に見張られているような感覚に陥っていたので、なにがなんでも彼らが観音様に手を出すのを阻止しようと思った。


 幽霊はいま、手摺りに腰掛けて手を前で組んで、まるで眠っているかのように治子たちの足元に視線を落としていた。その口元は微笑していて、まるで彼らが観音様に悪戯するのを期待しているようにも思えた。


「観音様に悪戯したら罰が当たるんだよ? 分かってないの?」


 と、彼女が言えば


「だから、罰が当たるかどうか試すんじゃん?」


 と琢磨が言い、あろうことかほかの男子もそれに同調した。


 彼女の中に怒りが沸々と湧き上がってきて、その感情の変化に当人が驚かされてしまう始末。理由は定かでないが、観音様に悪戯するなんてとんでもない! という気持ちが本人が思うよりも強いようだった。


 ああ言えばこう言う琢磨に辟易したものの、治子は平静を保って話を続けた。観音様に供えられているお花のことを話すと、竜也と修、健の3人が悪戯反対に回った。琢磨と英明の2人は男子3人の翻意と彼女のことが気に入らないようだったが、


「たくやんたちが帰るまで私ここで見張ってるから。もし観音様に悪戯したら明日、先生に言ってやるんだからね。」


 と彼女が言い放つと、2人は不服そうながらも悪戯せずに帰ることを受け入れたので、彼女もほっと息を吐いた。ところが、


「ねえねえ、最後に心霊写真だけでも撮って行こう? いるんだろ? 幽霊。」


 と、帰り際に琢磨がねだると、たちまちほかの男子も琢磨に賛同。その様子を目の当たりにして、彼女は頭を抱えつつも、


「好きにしなさいよ。」


 と言って、彼女も一緒に6人みんなでフレームに収まりパシャリ!


 琢磨が持ってきていたのはデジタルカメラだったので、その場ですぐに彼は写真を確認した。

 

「うお!」


 カメラの画面を覗き込んでいた琢磨が叫んだ。


「オレたち、6人で写真撮ったよな?」


 分かり切ったことをわざわざ確認する彼に英明が


「そうだよ。」


 と短く答えた。


「1人映ってない……。」


 信じられないといった調子で呟く琢磨に、彼女は誰か見切れてるだけなんじゃないの? と思ったが、ほかの男子は興味津々でカメラを持っている琢磨を囲んだ。


「んん、1、2、3、4、5、6……みんな映ってるじゃん。」


 と竜也が言うと、


「肝心の爺さんが映ってないだろぉ~!?」


 と琢磨が悲鳴を発したので、彼女はどうでもいいとばかりに肩を竦めた。

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