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肝試し ⑥

 お爺さんが幽霊だと分かり、治子の身体に戦慄が走った。


「まだなにもしてないよね?」


 ほかのなににも優先して真っ先に男子たちに尋ねた。


「まだなにもしてないよ。なにをするかいま話してるとこ。」


 治子の問いに屈託なく答える琢磨。まるで自分たちが悪いことを仕出かそうとしているという自覚がないのだ。さらに


「ハルちゃんも来たかったんならそう言えばよかったのに。」


 と、早くも彼女を仲間入りさせようとする始末。ほかの4人も彼女を歓迎して、観音様の目の前の特等席を彼女に譲った。なんだかんだで、一旦つるむとみんな優しいのだ。


 治子は小さなお堂の中を観察した。


 30cmの定規ほどの高さの観音像と、その足元にお皿が置かれ、お皿には数枚の小銭が転がっていた。お皿の両脇にはお花を挿した牛乳瓶が1つずつ。観音像もお堂もみすぼらしいものだったが、お花が生きていたので、誰かが毎日世話を焼いているのだろうと思われた。であれば、その人を悲しませないためにも、なおさら悪戯をさせるわけにはいかない、と彼女は思った。


「後ろにお爺さんがいる。」


 お堂の方を向いたまま、小声で隣にいた竜也に伝えた。


「お爺さん?」


 と言いながら振り返る竜也。だが、そこにお爺さんの姿はなかった。手摺り越しにすみれ色の空と海、そしてT町が見えるばかり。


「誰もいないよ?」


 と竜也が治子に言い返した。念のため彼女も振り返って、目の端にお爺さんの姿を捉えると、


「幽霊だからね。」


 と言った。みんな口々に驚きを露わにしたが、琢磨が


「マジコで!?」


 と言ったのが癇に障った。琢磨は小学校入学前からの友達だったからなおさらだった。


「そのお爺さんって良い幽霊なの? 悪い幽霊なの?」


 と隣の竜也が若干興奮気味に尋ねた。彼には幽霊が出たという事実がすでに嬉しいのだ。


「まだ話したことないから分からないけど、これだけははっきりしてるの。ふだんはなにもしてこない幽霊も、理由があれば人を殺すんだ。」


 そうこう話している間にも日は沈んでゆき、辺りは真っ暗になろうとしていた。

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