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死んで花実が咲くものか 29

 翌日の夕方は美佳の家の最寄り駅で彼女とtamaは待ち合わせた。


 学生服姿の彼女を見て、tamaが彼女に学校へ行ったのかと尋ねた。彼女がそうだと答えると、彼は彼女のことを強い人だと感嘆の声を上げた。実際、彼は彼自身の自殺予告があった月曜の翌日、火曜から木曜までの3日間、学校をサボった。金曜は最後だと思い学校に行った。そして土曜はまたサボって美佳と遊んだ。日曜は親孝行でもしようと思ったが、学校も塾もサボっていたことが露見していたから、親の言うとおり勉強に精を出して見せただけで、特別なことはなにもできなかった。


 今日も彼は学校へ行ったが、サボりが多少なりとも人間関係に影響を残した。家での立場も悪くなった。死ななかったからセーフというわけじゃなかった、と彼は思った。


 だから予告に動じず、学校へ行った美佳のことを偉いと思った。


 だから、


「タマと同じように、U公園の真ん中らへんで身動き取れなくしてもらえれば助かるんでしょ?」


 と彼女が尋ねてきたとき、答えに詰まった。そのときの彼女の声は若干震え気味で、口元は小さく笑みを湛えていたが、眼差しはなにかを訴えているようで、彼には彼女が不安なのだと分かった。


 100%助からないとは言い切れないが、100%助かるとも言えない。なにしろ昨晩、撮影していた動画を確認してみたのだが、午後3時50分、画面内に治子が現われたのだ。


 治子はスーツ姿ではなく私服だった。特になにか儀式めいたことなどをした様子などはなかったが、彼はいま自分が生きているのは治子がなにかをしたからだと思っていた。


 そのことを美佳に話すと、彼女はJRI駅に行こうと言い出した。


 治子は以前、会社に来るなと言っていたから、前と同じようにJRI駅で待とうと美佳は思ったのだ。


 まず、tamaを救ってくれたお礼を言わなければならないし、幽霊の正体についても話を聞いておかなければならない。できることなら美佳の自殺予定日にも一緒にいてほしかったが、それを望んでも治子はすぐには首を縦に振るまい。それでも治子の存在を抜きに、この怪奇現象を語ることはできなくなってしまっている気がしたから、会わないわけにはいかない、と美佳は考えたのだ。


 美佳とtamaはすぐ電車に乗り、JRI駅前で治子が出てくるのを待ち構えた。


 午後6時になり、tamaが塾があることを気不味そうに美佳に伝えたが、彼女が彼の塾行きを承服しなかった。礼を述べるべき当人がいなくなってはいささか間抜けだからだ。


 そして午後7時過ぎ、スーツ姿の治子が改札から出てきたので、二人は急いで彼女に駆け寄り、声を掛けた。

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