死んで花実が咲くものか 26
午後2時になったら手足を縛るという約束で、いま、美佳の携帯の画面には13:45と表示されていた。
上空は風が強いのか、雲が足早に流れていた。
美佳はもうそろそろだなと思い、上体を起こし、気になっていたことをtamaに尋ねた。
「最後に一緒にいるのが私で良かったの? 家族と上手くいっていないからっていっても、やっぱり家族といる方が良かったんじゃ……。」
憂いを含んだ表情の彼女を見て、tamaが答えた。
「なに言ってんだよ? 今日は学校がある日だぜ? それに……、親はこんなことに付き合ってくれないしな。」
彼女が思っていたより、理由は単純なものだった。彼女が立ててある三脚にセットされた一眼レフを一瞥して、
「そだね。」
と返すと、彼が続けて
「それに、ミヤちゃんといると気持ちが楽なんだ。」
と言った。
「どういうこと?」
彼女が意味を尋ねると、
「ん、ネットのタマがある意味本当の僕で、僕はふだん、誰かといるときにタマのような態度は取れないんだ。でも、ミヤちゃんといるときなら、僕はずっとタマのままでいられるから。って、こういう話もミヤちゃんにじゃなきゃできないし。」
そう言われてみて、初めて美佳はCR内のtamaといま目の前にいる男性が同じなんだと得心したように思った。CR内では特に女の子同士という感じの話はしてなかったしなぁ。
日はまだ高い。彼女は芝をいじっていた手を止めて、
「よっこいしょ。」
と腰を上げると、
「じゃあ、縛るよ?」
と確認してから、彼を拘束した。




