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死んで花実が咲くものか 25

 11月19日、月曜、tamaの自殺予定日。


 美佳とtamaは学校をサボった。


 朝、2人はT駅前で落ち合い、それから自殺しないためのアイテムを購入して、彼の要望で焼き肉を食べに行った。


 彼の自殺予定時刻は午後4時で、自殺方法は彼の通う高校の校舎からの飛び降りだった。yuiを死なせたのと同じ方法。その前にもどこかの女の子が学校で自殺してたな、と美佳は思った。


 美佳とtamaはお昼過ぎにJRU駅の近くにある公園に入り、公園の中央で、制服を詰め込んだスポーツバッグを枕にして二人して寝っ転がっていた。


 青い芝が広がっていて、外周に道とベンチ、トイレがあるほかはなにもない。


 なにもないから、なにかあっても安易に自殺などできまいと考えたのだ。拘束するのはerosと同じだが、拘束後、美佳は現場を離れることになっていた。その際、ビデオカメラでtamaを撮影して、彼になにが起こって自殺に至ったのかを確かめられるように段取りしていた。


 これはチャットで話し合われた末に達した方法ではない。


 最初、チャットで大勢を占めていたのは窃盗罪を犯して留置所に入ろうというものだった。そこで怪奇現象のことを警察に話せば、予告当日の数時間程度は特に目を掛けられ、運が良ければ保護を受けられるかもしれない。それに、もし留置所もしくは出先で自殺が断行されれば、怪奇現象が警察の知るところになり、次の予告からは警察の助力も得られるようになるかもしれない、という見通しがあった。CR内の人たちとしては、tamaの死を犠牲にしてでも確実に一歩、解決に向けて前進したいという考え。


 だが、tamaは悩んだ末に、犯罪に手を染めて生き永らえるのも厭だし、死んで汚名を遺すのも厭だと言って、そのアイデアを否認した。


 その断り文句に対してみんなはいろいろなことを言ったが、最終的にtamaが


「極論……とは言わないのかもしれないが、これは僕の命だ。それに、僕には家族がいる。だから不名誉な死に方を選ばせないでほしい。お願いします」


 と書き込むと、みんな黙った。


 ただ、一人だけ


「気持ちは分かるが、これはみんなで立ち向かうべき問題なんだ。キミのように勝手を言い出されると作戦行動が取れない。キミは団体行動ができないヤツなのかい?」


 とtamaを煽った。それに対し彼が


「集団ってのは苦手だ」


 と書き込むと、煽った人物からも


「悪かった。オレもだ」


 という書き込みが為された。


 いま、美佳とtamaが行なおうとしているのは、その後に彼が“ 動画撮影をして予告時刻帯の行動を記録するのでそれで容赦してくれ ”という主旨のことを提案したのをきっかけに、またみんなで練り直した作戦だった。

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