死んで花実が咲くものか 21
3人は駅前ロータリー近くの喫茶店に入って話をした。
美佳とtamaは遠慮したが、勘定は治子が持つからということでそれぞれミルクティーとアメリカンを注文した。治子もミルクティーを頼んだ。
店内は暖色系の電灯で薄暗く照らされ、穏やかなジャズの音色が流れていた。
客はそれほど多くなかったし、美佳とtamaと同年代という感じの人もいなかった。
「まず最初に断っておきますが、私が言う幽霊というのは、あらゆる宗教と無関係の存在です。美佳さんとタマさんのご家庭がなにを信仰していらっしゃるか存じませんが、宗教とは無関係、という点だけ第一にご承知ください。」
治子はかねてより、もし真面目に幽霊の話をするならまず最初に宗教との関連性について断っておかなければならないと考えていた。
美佳とtamaは戸惑いながらも
「はい。」
と短く答えた。
「で、幽霊の存在は信じていらっしゃる。」
語尾が質問調のように上がったわけではないが、治子の視線が美佳とtamaを真っすぐに捉えていたので、tamaが
「これまでは特に信じていたわけではありませんが、例のサイトの不可解な自殺を見て、幽霊もいるのかなぁっ、て思うようになりました。」
と答えると、
「なるほど。」
と治子。
「実際に自殺予告をなされているのはタマさんですが、このことはご両親には伝えていらっしゃいますか?」
「いえ。」
「死ぬのなら一人でひっそりと死にたい。」
「そういうわけでは……。」
「では、まだご自身が実際に死ぬか否か、半信半疑といったところでしょうか。」
「いえ……。」
治子の矢継ぎ早な質問にtamaはしどろもどろになっていた。
彼の隣に座る美佳はそんな彼の曖昧な返答に接して、自分だったら親に言えるかなと考えた。
「ご両親との仲があまり良くないから、できれば親に知られずに解決したい……。タマさんにご両親からの信用がなく、話しても無駄だと考えている……。そもそもご両親が頑なに怪奇現象の類を信じようとしない人である……。」
tamaを見ながら事務的に予想を並べ立てる治子に、彼はようやく
「はい、できれば親には話さず解決したいんですが。」
とオドオドしながら答えたが、
「解決するころにはご自身はお亡くなりになられていても構わない……と?」
彼女はそんな彼に事務的にそう告げた。




