治子6歳の戦い ⑫
千堂が
「いまから案内する部屋は結界になっていて、霊は入れないはずです。」
と言ったから、父、母に続き部屋に入った治子はくるりと後ろを向いて、重信を手で制して言った。
「ここから先は結界になってるから入ってきちゃダメ。」
「なんで?」
と重信。治子の仕草と言葉に、彼女の後ろを歩いていた姉も面喰った。
「いまの私に言ったわけじゃないよね?」
「お姉ちゃんは入って来て。」
重信を擦り抜けて部屋へ入る姉。姉に続き
「僕も~。」
と部屋へ入ろうとする重信に対して治子は
「バリアがあるから入れないのッ。」
と手を部屋の入り口に向かってバタバタさせた。
「バリアなんてないもん。」
と彼女の言うことを聞かず、入ろうとする重信に対して彼女は本気で怒り出した。
「ルールなんだから、ここにバリアがあるんだから、入って来ちゃダメだってば。ルールも守れない子とか……一緒に遊んでても面白くないから、もう帰ってくれる? もう、二度と遊んでやんない。」
「ごめん、僕、ここにいるよ。」
しょんぼりと部屋の入り口手前の廊下に座る重信。
「話が終わるまで待っててね。」
ちょっと言い過ぎたかと思った彼女が優しく重信に声を掛けたが、彼はふくれっ面で彼女を見返すだけだった。
母が千堂に菓子折を手渡したりしながら、話は本題に入った。
両親が末娘の現況について千堂に説明した。
娘は幽霊を見ることができ、かつ現在、大正14年に亡くなった子供の霊に憑かれている。いまのところ彼女は無事だが、放っておくと霊に殺され、あの世へ攫われていってしまうのではないかと考えると、生きた心地がしない。なんとかならないものか、と。
それに対し、千堂はお任せくださいと自信たっぷりに言う。
そんな千堂を見て、この人も安徳寺の住職と同じで髪があるからダメだと、治子は思った。




