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治子6歳の戦い ⑪

 日曜日は早朝から慌ただしく出掛ける準備。


 身体の弱い祖母に留守を頼んで、父と母、姉と治子の4人で安徳寺の住職から紹介された千堂せんどうあきらという人物に会いに行った。


 海沿いの道を走り、いくつものトンネルを抜けて山の中へ入り、しばらくするとまた海沿いに出ての繰り返し。車で2時間ほど走り、目的地であるT市のM町に到着した。この町には江戸時代の武家屋敷や寺社が残っていて、映画やドラマのロケ地としてもしばしば使われている。


 白壁の蔵や旧家を横目に石畳の敷かれた道を進み、坂道を上ったところに千堂宅はあった。由緒もなにもないどこでも見られる外観の建屋。呼び鈴もふつう。出てきた人物もどこにでもいる中年男性といった感じ。


 中肉中背、色白で7:3に分けた頭髪が霊を研究しているというより、ただのサラリーマンといった印象。


「遠いところをわざわざお越しいただき、ありがとうございます。私、趣味で怪奇現象や心霊現象の研究をしております、千堂晶と申します。」


 来意を告げた父に千堂は挨拶すると、一家4人を家に招き入れた。


「おじゃまします。」


 ぞろぞろと土間から廊下へと上がる4人に先を行く千堂が尋ねる。


「そういえば、治子さんは幽霊が見えるとのことですが、いまも幽霊は治子さんにくっついて来ているんですか?」


 問われて、治子に父が


「どうなんだ?」


 と尋ねると、彼女は


「うん、くっついて来てる。」


 と短く答えた。


「いまはどこに?」


 と、千堂が尋ねると、


「ここ。」


 と、彼女は右後ろを振り返り、手の平で幽霊の頭を撫でるような仕草をした。


「ホントにくっついてるんだね。残念だ。どうやら私には幽霊は見えないらしい。」


 そう言って千堂は儚げな笑みを浮かべた。

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