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治子6歳の戦い ⑦

 安徳寺はS町の隣町であるT町にあった。治子の一家はこの寺の檀家であり、彼女の祖父の四十九日や一周忌寺などもこの寺の住職を招いて行なっていた。安徳寺の一角は保育所として利用されていて、治子は毎朝、寺所有の古くて白いバンに送迎されてその保育所に通っている。


 その日もいつものように保育所に行って、保母さんに世話を焼いてもらいながら過ごして、夕刻になりみんなが帰り始めたころ。いつもなら治子も竜也や勝也といったS町の友達と一緒にバンに乗って帰宅するのだが、その日は保母さんに言われて保育所に居残りしていた。


 重信は相変わらず治子にくっついていた。


 彼もほかに人がいる場合、彼女が構ってくれないのは分かっているから、人がいる間は大人しく座っていた。


 外がすっかり暗くなったころ、父がやってきた。


 保母さんが引っ込み、住職兼園長先生が出てきて、挨拶もそこそこに本題に入った。


 治子に憑いた霊を祓う……結論から言えば、安徳寺の住職には無理とのことだった。


「……葬式も四十九日も、すべては生きている人間のためにあるんですね。生きている人間がきちんと死者とお別れして、きちんと弔ったと満足するためのものなんです。それこそ仏さんは皆極楽浄土へ参ってらっしゃるわけですから、幽霊になって俗世に居残るということ自体、ま、ないとは言い切りませんが、あるともお答えできません。」


 住職は法要の際によく行なう説法におまけを加えて親子に聞かせた。


「という前提のうえで、お話し申し上げます。ハルちゃん、幽霊はなにかハルちゃんに悪いことをしますか?」


「はい、くっついてきます。」


「くっついてきて、幽霊はなにか悪さをしますか?」


「遊ぼう、遊ぼうって言います。」


「ハルちゃんはその幽霊が恐ろしいですか?」


「はい、すっごく怖いです。」

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