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治子6歳の戦い ⑥

「正直に言うと、前は治子が冗談を言ってるんだと思ってたんだ。父さんたちには思いも寄らない一人遊びでもしてるだけだろうってね。まず、そこから謝っておくよ。ごめんな。そのときにちゃんと話を聞いてやれなくて。」


 謝る父に彼女は首を振った。

 まさか父は勘付いてしまったのかという焦りが彼女にはあった。


「治子には父さんたちには見えないなにかが見えてるんだろう?」


 彼女の父も母も純粋に彼女のことが心配だった。信じ難いことだが、これまでの彼女の奇行に霊が絡んでいるとなると、対処の方法さえ見当が付かず、自分たちの力不足を痛感するばかりか、いままでの彼女への素っ気ない対応を鑑みれば、親としての未熟さも痛感させられ、まだ幼い娘を前に恥じ入るばかり。


 なぜ霊は自分たちの前に姿を現わさないのか……、これが両親を一層不安にさせた。

 治子にしか見えないのだ。

 治子を自分たちがしっかりと引き留めておかなければ、いずれ彼女はそれはそれは巧妙なやり口で霊に攫われてしまうんだと、両親は考えていた。


 一方、当の治子はといえば、父の問い掛けを聞いて、自分が変な子と思われていやしないかという疑惑が確信へと変わり、父から変な子という一生消えない烙印を押された気がした。


 治子は父に抱き締められて、自分が変なことばかりしてるから心配させてしまってるんだと思った。


「なにも見えてないから、心配しないで。」


 父にそう言ってみたものの、今後、なにも見えていない振りをするのには限界を感じていた。だが、見えてると言ったって、結局、父と母には見えないのだ。これまでの苦い経験を思うと、治子は素直になれなかった。


 父はいまの治子の言葉をどう解釈したものか迷っていた。自分たちに心配させまいとして言ったのか、それとも自分たちをのけ者にするために霊にそそのかされて言ったのか。


「明日の夕方、安徳寺の坊さんに相談してみよう。」


 父は治子に提案した。

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