治子6歳の戦い ①
新章です
2016ホラーには確実に間に合いません
諦めました
試合終了です
ただ、夏はまだ終わっていないので、続けます
平成9年10月。
児島治子は6歳の元気で平凡な女の子なのだが、ふつうの人には見えないモノを見ることができた。
見え始めた時期を意識したことはない。物心付いたころから見えていたのだ。
彼女が3歳のころから、なにもないところに向かって誰かと会話しているかのような独り言を喋っている彼女の姿が度々目撃された。両親は最初、誰かの真似をしてるか一人でおままごとでもしてるつもりなんだろうと考えた。だが、家でだけでなく屋外でも同様の姿を認めて、両親は“ 治子はちょっとおかしいんじゃないか ”と思うに至った。
そこで両親は小学校に上がる前に治子に知能検査も受けさせてみたが、平凡な結果に終わり胸を撫で下ろした。
では、治子の奇行はどう説明すればいいのか?
5歳になるころには、治子は自分が見えているモノが両親には見えていないことを理解していた。一方、両親は治子にしか見えないモノがある、ということを理解していなかった。だが、それは両親にかぎったことではなく、それは友達も同じだった。伝えた当初こそ幼い友達は“ お化け ”だ“ 幽霊 ”だなどと言ってキャッキャと騒いでおきながら、あとになると親に入れ知恵された挙句に治子のことを嘘吐きよばわりするのだ。
結局、“ お化け ”のことを誰に伝えてみたところで、いつだって返事は
「なに変なことを言ってるの?」
とか、
「そんなのあるわけないじゃん」
といった類のものばかり。だから治子はいつからか自分にだけ“ お化け ”が見えるということを誰にも話さなくなったし、“ お化け ”のことも無視するようになった。
あまり変な子だと思われたくないのだ。
せっかく受けられるはずの両親の愛情に同情や不審といったノイズが入ってしまうのが厭だった。漠然と、ふつうの子と同じように愛されたいといった感じに治子は思っていた。
そんな治子にとって一番の悩みは、“ お化け ”と“ ふうつの人 ”との区別を容易に付けられないことだった。
たとえば擦れ違うときに、無視して進路を譲らなければいいのか、自分の方から避けるべきなのか……など、区別が付かないとどう動けばいいか判断しかねる場面もしばしば。
そうした不便を解消するためにも、どうにか見分けが付かないものかと治子は考え、約1年振りに“ お化け ”に声を掛けてみた。




