死んで花実が咲くものか ⑰
その晩はtamaの書き込みを見るのが怖くて、美佳はサイトを見ることなく眠った。
だが、翌日もずっと頭からtamaのことが離れなかった。
正直、彼女は彼に悪いことをしたと思っていた。
来週の月曜には彼は死んでしまうというのに、2度も門前払いしてしまうなんて。
ああ、ああ、ああ……。
そんな心情だったから、授業にも身が入らなかった。
もし、私の命が来週の月曜までだとしたら……。
今日はもう木曜日。あと半日と、金、土、日……!
「あと3日しかない!?」
「おい、なにがあと3日なんだ?」
授業中に大声を出してしまい、先生を軽く怒らせてしまった。
周りはシンとしていた。
彼女は恥ずかしさと気不味さで顔を真っ赤にして謝り、その場は事なきを得た。
朝から頭を抱えていて、さらに先のような授業中の奇声もあったからか、彼女が彼のことを忘れようと思って友達をカラオケに誘うと、友達は彼女の話聞きたさもあってカラオケに付き合ってくれることになった。
ふだん、自分から友達を誘うことがなかった彼女にとって、自分の声掛けで数人とはいえ友達が集まってくれたことが嬉しかった。それもあって、教室から出て自転車置き場まで一緒にふざけながら話している間も楽しくて、彼のことなどすっかり頭から消えてしまっていた。
彼女としては臭い物に蓋のつもりで、CR内でtamaが過去の人になる頃合いまで“ 死んで花実が咲くものか ”から離れるつもりだった。
彼のことを邪険にしたことも含め、彼とは厭な関わり方をしてしまった。でも、一昨日、昨日とあんなに冷たくしちゃったから、、もう二度と彼と会うことはないね……と思った。
だが、校門から出てみると、昨日に続き今日も彼が待っていた。
「ミヤちゃん!」
そのとき美佳は友達と一緒にいたというのに、そんなのお構いなしといった具合に声を掛けてくる彼。
ミヤって誰だよ?
ここに至って、美佳は友達と一緒にいたことを悔やんだ。
友達に“ 死んで花実が咲くものか ”のようなマイナス志向のサイトを見ていることがバレたらどうしよう……という不安がまず先に立った。
「なによ? あんたも凝りないわね?」
そして、ダメだと分かっていながら、彼女は彼と相対するとつい悪態を吐いてしまう。
「なに? 美佳の友達?」
友達が彼女に尋ねたが、その言葉は彼女の耳に入らなかった。
「今日はなんの用なの?」
理性では彼の話を聞かなければと思っていたのだ。
「ごめん、もう友達と遊ぶ約束とかしてるのかもしれないけど、今日1日だけオレに付き合ってください!」
初めて見る彼の真面目な顔だった。
「分かったよ。」
彼女は今日こそ彼の話を聞くことにした。




