死んで花実が咲くものか ⑬
tamaとはS駅構内にあるEという喫茶店で会うことになった。
tamaはまだ少し早いが、目印に赤いマフラーを首に巻いてくるという。
tamaから会えないかと請われたときは、mimiが亡くなったときのように野次馬が興味本位でtamaと美佳がどんな人物なのか見物に来ないかと心配だったが、tamaの心中を察すれば美佳自身のそんな憂いなど些末なことだとして、美佳はtamaと会う決心をした。
夕方のS駅は人でごった返していた。
Eという喫茶店の店内をガラス越しに外から覗いてみると、やはり混んでいた。
とりあえず、美佳は喫茶店の入り口付近に立ってtamaを待つことにした。
駅構内にはいろいろな人が突っ立っていた。
大方、みんな誰かと待ち合わせをしているのだろうが、こう人が多くては敵わないなと美佳は思った。
お互い見ず知らずの相手とちゃんと出会えるか心配だった。
待てども待てども、tamaらしき人影はない。
季節外れの赤いマフラーを着けた女子高生……ナニ高か聞いとけばよかったかな?
それともすっぽかされた?
所詮ネットだけの付き合いだったもんね。
美佳は少しだけ惨めな気持ちになった。
でも、tamaが“ 死ぬよ ”と言ったのが本当に冗談で、誰の助力も必要としていないなら、それに越したことはないと思った。
待つこと20分……30分経ったら帰ろ。
これまでぼんやりと雑踏を眺めて待ち惚けしていた彼女だが、もう帰る気満々で鞄から読み掛けの小説を取り出し、栞を挟んだページを開いたときだった。
「あ、あの、すいません、人違いだったらすいません。ミヤさんですか?」
男子用の制服を着た人が彼女に声を掛けた。
「は?」
彼女は思わず顔を歪めた。




