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死んで花実が咲くものか ⑩

 美佳には信じられないことだったが、111という見るからにやる気のない名前の主は、本気で幽霊の存在を信じているようだった。


 最近までは111も幽霊なんていないと思っていたようだが、自分自身が幽霊の被害に遭って考えを改めたらしい。


 そして、あろうことか111はいまも自分が幽霊にやっつけられていると言った。


 111の主張はすぐにはCR内でも受け入れられなかったが、当人にその気がないにもかかわらず自殺するという原因不明な現象が続いているため、誰も即座には反論できなかった。


 幽霊の仕業だったとして、解決策はあるのかと誰かが111に尋ねた。


 111は幽霊を退治できる人がいると言った。


 その幽霊を退治できる人について尋ねてみても、個人情報だからと教えてくれなかった。


 かといって、111がその人に掛け合ってくれるというわけでもなさそうだった。


 その後は111が現われることなく、erosの自殺予定日がやってきた。


 05:00 ;eros

 いま身体を拘束してもらいました

 ちなみにいま書き込んでいるのは友人です

 これで飛び降りは避けられるものと思います

 1時間おきに友人には生存報告をしてもらうつもりです

 ほか、なにか進展があれば書き込んでもらいます


 美佳にとってはいつもの月曜だった。だが、erosにとっては命を賭けた長い1日になるんだろうな、と彼女は思った。


 学校から帰ったとき、erosがまだ生きていればいいが。


 午後5時半頃、彼女は帰宅した。


 erosのことが気になったので、急いでパソコンを立ち上げた。


 午後5時までは1時間ごとにerosの書き込みがあった。


 ただ、自殺の実行時刻は午後6時になっていたから、まだ完全に安心はできなかった。


 午後5時半にもまだ大丈夫という書き込みがあった。


 17:30 ;eros

 まだ自宅です

 もうどんなに急いでも指定の駅に18時までには行けないので、とりあえず自殺予告どおりにはならないはずです


 彼女は心の中でerosの無事を祈りながら、午後6時までパソコンの前に貼り付いていた。


 なのに、午後6時になってもerosの書き込みはなかった。

 

 みんなが口々に心配した。


 午後6時15分、待望のerosの書き込みがあった。


 18:15 ;eros

 お待たせしました


 一言だけ。

 随分素っ気なかったが、なんにしても自殺していないならよかった、と彼女は思った。


 みんながそれぞれ喜びの言葉を口にした。


 18:20 ;eros

 約束どおり、死にました


「はあ!?」


 彼女には珍しく、パソコンの前で声が出た。

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