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生霊 21

 秋も深まってきたころ、琢磨は会社を辞めた。


 智美の亡霊が邪魔で仕事どころではないし、上司からの戦力外通告にも納得していたのだ。いくら幽霊のせいとはいっても、他者から見れば仕上げた仕事の結果が全て。いまのオレは智美の亡霊とワンセットなのだ……と彼は思った。


 智美の亡霊の行動は悪戯めいたものから次第にエスカレートしてゆき、彼を怪我させたり殺そうとしたりするものになっていった。


 なぜトドメを刺さないのか、彼には不思議だった。


 だが、生霊がそうだったように、じわじわと痛めつけるのが智美のお好みなのかもしれない。


 そう考えると、合点がいった。


 そんな生活だったから、以前とは打って変わり、眠るときだけが彼にとっての安寧の時間になっていた。


 薄暗い部屋の中。

 日中でも遮光カーテンが開くことはなくなった。


 会社をやめると、途端に社会との接点が消えた。


 ハローワークに雇用保険給付のための手続きには行ってみたものの、自己都合退職扱いになっていたから、給付開始は2ヶ月後。


 幸い預貯金はあったから、しばらく身体を休めようと彼は思った。


 買い物と通院以外は家に籠った。


 インターネットだけが彼と社会との接点になった。


 マイナス志向の言葉を徒に検索しては、適当にページを開いてみるようになった。


 あるとき、“ 自殺 ”というワードで検索をかけて、また適当にページを開いてみた。


 それから、自殺を考える人ってどんな感じなのかな? という興味でチャットルームを覗いてみた。


 すると、なんとそのチャットルームの書き込みには実際に誰それが死んだとあるじゃないか。しかも、それが1人や2人ではなく、それ以上の人間が、きちんと自殺予告をしたうえで指定した日にきちんと死んでいるようだった。


 不可解なのは自殺予告の次に必ずといっていいくらい、自殺予告を否定する当人の書き込みが続くことだ。


 これはさすがにおかしい……と琢磨は思った。


 さらに画面をスクロールしていき、彼は衝撃を受けた。


 自殺予告者の中に、智美の名前があったのだ。

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