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生霊 ⑲

 智美を殺害した日の晩、琢磨は薬を飲んで眠った。


 目が覚めると、いつもの部屋にいた。


 壁に落書きはなかった。

 彼は声を押し殺して自身の勝利を叫んだ。


「おう……ついに、勝ったぞ……幽霊め!」


 翌々日から彼は会社に出勤した。


 上司からは無断欠勤を怒られ、同僚や後輩からは陰口を叩かれた。とはいえ、無断欠勤したのだから文句を言われるのも仕方ないと、彼は特に陰口を気にも留めなかった。


 ハルとは一言も口を利かなかった。


 互いに口を利かないのはいつものことで、今日が特別というわけではなかった。ただ、彼は自分の変化に対し、彼女がなにかしらの興味を示してくれてもいいのではないかと思った。要は、彼女の助力なしで幽霊に勝ったことを彼は自慢したかったのだ。


 そんな思いも虚しく、彼女は一向に彼に興味を示さなかった。


 夜。


 昨晩、夢を見なかったとはいえまだ完全に安心しきっていない彼は、いつもと変わらず薬を飲んだ。薬を飲めば、深い眠りに就ける気がした。そして、祈るように彼は眠った。


 それから数日間、彼はぐっすりと眠れる日々を過ごした。


 しばらくすれば体調も万全になるように思われた。


 そんなある日、彼は仕事でミスを犯した。


 作成した見積書の数字を間違えたことが、先方から確認の電話が掛かって発覚した。


 彼が見積書のPDFファイルを確認すると、確かに桁を1つ間違えていた。


 データはプリントアウトしたあと、きちんと紙で再確認したのだ。


 1桁間違えるなんてミス、ありえる筈がなかった。

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