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生霊 ⑩

 玄関の方から不気味に鳴り続ける呼び鈴に戦々恐々としながら、琢磨は改めてスマホの画面を操作した。


 ハル以外の人に状況を説明しようと考えたのだ。


 彼女と違い、ほかの人には幽霊や夢の中で襲われてるなんて話、早々信じてもらえやしないだろうが、形振なりふり構っていられる状況でもなかった。


 だが、誰に電話しても“ 電源が入っていない ”、“ 電波が届かない場所にいる ”というメッセージが流れるだけで、まったく繋がらない。とはいえ、琢磨はこの電波状況にこそ納得した。むしろ、ハルのスマホに繋がったことが実は錯覚だったのではないかとさえ思った。


 それから玄関の方に目を向けた。


 相変わらず呼び鈴は馬鹿の一つ覚えのように鳴り続けていた。


 このまま夜明けが来て、目を覚ますこともできるのだろうか?

 

 プルプルと彼は首を振った。


 相手が幽霊なら、ドアなんて容易に突破できるはずだ。このままここにいていいわけがない。彼はそう思った。逆に、律儀に呼び鈴を押し続ける幽霊というのが彼には信じられなかった。


 彼は服を着替えるとベランダへ出るスリッパを履いて手摺を乗り越え、2階から1階の中庭に飛び降り、目隠し用の植栽を手で払いながら外に出た。


 肌に纏わり付く蜘蛛の巣とか、アスファルトを踏みしめる感触とか、環状線を走る車とか、走行音とか……夢のクセにやけにリアリティがあるなと彼は思った。果たしてここは本当にオレの夢の世界なのか、それとも幽霊が見せる幻覚? 幽霊が用意した殺戮の舞台?


 周囲を警戒してみたが、幽霊の姿はないようだった。


 彼は環状線沿いにあるドンキホーテで一夜を過ごすことにした。


 ドンキなら周りに人もいるし、明るいし、幽霊が出ても対処できそうな気がした。


 とにかく、このまま死なずに夢から生還してやろうと彼は考えていた。


もしかすると、無事に夢から目覚められれば、この記憶も消えないかもしれない。

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