表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/162

生霊 ①

ここで章が変わります

 朝、都内にある安アパートの自室で目を覚ました佐藤さとう琢磨たくまは絶句した。

 

 スマートホンの液晶に浮かぶ時刻は午前8時。


 遅刻じゃん!


 時刻と共に着信があったことを示す表示を見て、彼はさらに焦った。履歴には会社の同僚の名前が並んでいた。彼としてはすぐに掛け直したかったが、すでに朝礼が始まっている時間であれば、朝礼が終わるの待たなければならず、電話を掛けるなら8時15分頃か……と彼は思った。


 それまでに、彼は洗面所で身嗜みを整えた。


 少し憂鬱だったが、遅刻はもう覆らない事実なので慌てても仕方がなかった。会社へ行く準備を進めながら、彼は頭の中ではどう言い訳しようかと、そればかり思案していた。


 ふと、昨晩は女が寝かせてくれなくって……という言い訳が思い浮かんだ。まさかそんなこと言えやしない、と思ったが、とはいえ、本当のことなんだ……と彼は歯噛みした。


 女といっても生身の女ではなく、それは夢の中の女だった。


 夢の中でのことなので、起きてしまえばほとんど記憶に覚束ないが、なんとなく心地良い印象ばかり残っていた。そして、また寝るきわに夢でその女に会うことを望むと、不思議とその晩の夢の中にまた同じ女が現われるのだ。


 夢の中にその女が現われ始めて、もう一週間ほどになるだろうか。


「すいません、ええ、頭痛でどうしても動けなくて……、いえ、だいぶ落ち着いてきましたので、出社はします。はい、すいません、9時半ごろには着くかと思います。」


 結局、言い訳に選んだのは頭痛。


 電話をしたのち、彼はアパートを出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ