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苦手な方はご注意ください。

央真が時に

作者: MTL2

「はぁっ、はぁっ、はぁ……!!」

何も見えない闇の中を疾走する、一人の少女。

彼女は何かに追われているのか、時折後ろを振り返りながら走っている。

長いこと走っているのだろう。息は切れ切れで足はふらついている。

それでも彼女は走ることを止めず、ただ出口の無い迷宮を彷徨い続ける。

「何で、私がぁっ……!」

何かを嘆くかのように言葉を零す彼女。

だが、それに帰ってくるのは自身の吐息と静寂だけだった。

いや、もう一つだけ。

暗闇の中を這いずる何かの音。

「嫌、嫌、嫌! 来ないでぇ!!」


ぶちゅっ


その音は、例えるならば生肉を地面に落としたような音。

跳ねもせず割れもしない生肉が吸い付くように地面に落ちた音。

そしてそれを掻き消す少女の絶叫。


ずる、ずる、ずる


何かを引き摺るような音は少女の絶叫をさらに加速させ、増幅させる。

しかし、その絶叫も間もなくぴたりと止まった。

暗闇に相応しい静寂の中、絶叫の代わりに響くのはぐち、ぐち、という噛み切れない肉を何度も租借するような音。

そして、地面に広がった泥水を啜るような、ずるるるるるるるという音だった。



衛灯エイトウ町】


衛灯町の外れにある、小さなマンション。

例えるならば映画に出てくるオバケマンションとでも言おうか。

それ程に錆び付いており、壁にツタが這っている。

コウモリの羽音か猫の鳴き声が響き渡っていそうな魔城に、その男は居る。

「んっーー……。やっぱりラーメンはしょうゆですねぇ」

その男のが膝に置いている帽子は茶色の、いわゆるソフト帽というヤツで、来ている衣服は中年サラリーマンが着そうな帽子と同じ色のくたびれたスーツ。そして彼の手元には近所のスーパーで大特価売り出し中の庶民に愛され三十年のカップラーメンが一つと新聞が一枚。

「[衛灯高校生徒の行方不明事件多発。警察は目下捜査中]か。怖いなぁ」

ずずず、とカップラーメンの残り汁を啜る、中年の男。

彼の体つきは筋肉質であり、腕も細々しくも逞しい。

まるで一家の大黒柱で日曜大工に勤しんでいるような、そんな男性だ。

ボサボサの灰黒髪は短く纏められており、オールバックに近い。

そんな彼は古くさい、このマンションに相応しい椅子を揺らしながら彼は大袈裟に肩を震わせていた。

彼の見ている新聞の内容は大雑把に言えば衛灯高校生徒の行方不明事件が多発しており、警察は犯人の足がかりさえ掴めていない。しかもその行方不明になった生徒は同学年でこそあれど明確的な共通点がないのだ。

警察も急に消える物だから判断が付かず、また誘拐犯による物として捜査を進めても身代金要求も目撃情報もないので手が打てないのだ。


―――――――――――――プルルルルルルル


「おっと」

男以外は居ない空間に鳴り響く電子音。

その音の発信下は刑事ドラマの取調室に出てきそうな無機質な机の上に置かれた電話機器だった。

彼はその電話機器から受話器を持ち上げ、耳に当てる。

勿論、庶民に愛され三十年のカップラーメンを机に置いて、だ。

「はーい、もしもし? こちら央真オウマ探偵事務所」

『……央真オウマ 夕月ユウゲツだな?』

「はい、こちら央真探偵事務所所長の央真 夕月ですが」

『私は算頭サンズ 騎河ノガワだ』

「おぉ、これは算頭さん! お久しぶりですなぁ!!」

『あぁ、久しぶりだな。貴様が前回の仕事の後始末を放り出し、私に大量の尻ぬぐいをさせた時以来だ』

「その節はどーも。いやぁ、こんな年老いた男にはどうもね」

魔天狼マテンロウと恐れられた男の台詞か? それは』

「やだねやだね。そんな中学生が着けたような名前。嫌いじゃないけど」

『…………今はそんな事はどうでも良い。仕事だ』

「えー。また厄介ごと?」

『衛灯町各地で霊的反応が検出された。そこそこ大きい』

「ウチは探偵事務所なんだけどねぇ」

『知った事か! 今回の仕事は[衛灯町で観測された霊的反応の排除]! さっさと仕事をし』

ブツンッ。という音と共に電話機器の上に受話器が放り投げられる。

算頭の怒鳴り声が途切れ、部屋には再び静寂が戻ってきた。

央真と呼ばれた男性はぐーっと背を伸ばし、酒を飲み終わったオッサンのように息を漏らした。

「大変だねぇ。天霊院テンレイインも」

彼は自分のスーツと同じ、くたびれた煙草を口に咥えて火を付ける。

ポシュッという小さな音と共に部屋の天井へと白煙が上っていく。

「……さて、お仕事開始と行きますか」



【喫茶店】


「ねぇ、サキ。元気だしなよ」

「……うん」

放課後の、夕日が町を照らす頃の喫茶店。

衛灯高校近くにあるこの喫茶店はよく女学生やカップルが訪れる。

会社帰りの社員が訪れる事もあるのだが、今の時間では女学生とカップルしか居ない。

そう、カウンターで香ばしい薫りを放つ珈琲を飲む男を除けば、だ。

八坂ヤサカちゃんの事は仕方なかったじゃん……。あの事件に巻き込まれるなんて解らないし」

「でも……、私に関わった人が、全部……」

「偶然だよ! それなら私に関わった人でもあるじゃん」

「でも…………」

何やら、騒がしく相談事を交わす二人の衛灯高校女生徒。

言葉から察するに、八坂という友人が連日の行方不明事件に巻き込まれたのだろう。

しかも行方不明になった人間は彼女達の関係者でもあるらしい。

「運が向いてきたと言うか、ここでの六時間張り込みが実を結んだというか……」

そう呟いた男は新聞を片手に、再び珈琲を口元へ持っていく。

因みに彼が六時間の張り込み中に注文したのは珈琲と最も安い食事だけ。

店員からすればさっさと出て行って欲しい人物である。

尤も、そんな店員より出て行って欲しそうなカップルが居たのだが。

そのカップルは男に対して露骨に聞こえるような嫌味の会話を行ったり、睨み付けたりしているが男は一行に動く気配が無い。

だが、その動かなかった男は急に席を立ち、やがてある人物の元へと向かって行った。

「妹のスズちゃんも、最近は部屋から出て来ないんだっけ? 昔はオママゴトとかしてよく遊んだのにね」

「うん……。去年ぐらいから、ずっと」

「…………そっか。私も両親の帰りはいつも遅いし、また一緒に遊べるならお泊まり大会とかしたいんだけどなぁ」

「ごめんね、シズ。いつも迷惑ばっかりかけて……」

「ううん。咲は私が守るよ! 誘拐犯なんかが来たら私の光速パンチで……」

「ちょっと失礼、お嬢さん方」

彼女達の会話に、片手に珈琲を持つ男が割り込んでくる。

ソフト帽を被っており茶色のスーツを着たその男。

しかも女子高校生の会話に入り込んでくるのだ。どう考えても不審人物である。

「何ですか! 警察を呼びますよ!?」

「いや、せめて怪しい言葉の一つでも吐かせて貰えないかなぁ……」

「ま、まぁ、静。この人の話も一応は聞こう? ね?」

「助かります……。いや、私は央真 夕月という探偵でしてね。最近の行方不明事件について調べているんですよ」

「た、探偵さん?」

「咲! 気を付けて!! 探偵は存在自体が死亡フラグよ!!」

「ほう、大の大人の男泣きが見たいと仰る」

「し、静。幾ら何でも失礼だよ……。探偵でも生き残る人は居るから。この人はどうかと思うけど」

「目頭が熱くなってきましたねぇ。心は寒いですが」

「あ、私は彩菜アヤナ サキと言います。こっちは風野カザノ シズ

「……どーも」

「えぇ、先程自己紹介しましたが改めて。私は央真 夕月。町の外れで探偵事務所を行っております」

「……それで、行方不明事件を調べてるんですか?」

「咲!」

「話ぐらいなら……」

「えぇ、そうなんです。話を聞いていただいて有り難いですね」

「私達は行方不明事件についてなんて、殆ど知りませんよ……?」

「まぁ、参考ぐらいにね。……先程、八坂さん、でしたっけ? その子が行方不明被害者になったんだとか」

「は、はい。彼女は私達の共通の友人だったんですけど、行方不明になってしまって……」

「……ふむ。行方不明になる前、何か変わった事などは?」

「特にはないですね。いつも通りだったのだけれど……」

「そうですか。では最後に質問ですが、学校でこっくりさんとか流行ってません?」

「こ、こっくりさん?」

「そう、十円玉でやるアレね」

「別にそんなのは……。ねぇ、静?」

「う、うん」

「だとしたら良いんですよ。いやはや、ご迷惑をおかけしました。お詫びにこれ、どうぞ」

央真が机の上に置いたのはこの喫茶店の割引券だった。

キッチリと財布に忍ばせている辺り、やはりオッサン臭い。

「あ、どうも……」

「では、私はこれで失礼しますので。また御縁があれば会いましょう」

「は、はぁ……」

終始、困惑することしか出来なかった彼女達を尻目に、央真は会計を済ませて店から退出していく。

その後ろ姿は如何にも残業終わりの朝帰りなオッサンだ。

「……変な人だったね」

「全くだよ! 何か如何にも怪しかったし……!」

「でも静? 会うなり不審者とか言っちゃ駄目だよ?」

「う……、解りました」

「よろしい」

咲は心底嬉しそうに頬笑み、静もその笑顔に連れて頬を緩ませる。

親友同士の二人は央真の置いていったクーポン券を使い、今暫く友情の時を過ごすようだった。

そして、そんな彼女達を尻目に店を出るカップル。

それは央真に対して彼に対する嫌味な会話を露骨に聞こえるように離していたカップルだった。

彼等は出口へと向かう途中、咲と静の机に男の足があった。

彼女達の机に置かれていた珈琲が揺れ、少しだけ静の足に掛かったが、男は誤りもせずに出口へと向かって行く。

「あ、あの!」

「あァん? うるせぇよ」

男の彼女であろうガングロ女も謝ること無く、男の後ろについて会計の元へと走っていく。

央真の後を追うように出た彼等は扉を強く閉め、やがてその姿を町中へ融け込ませていった。

「何あれ? 感じ悪いわね」

「だ、大丈夫? 静」

「うん、大丈夫。それより咲は? 怪我とか無かった?」

「うん……、私も大丈夫だよ」

「はぁ、良かった。咲も体は強くないんだから、あんなのに突っ掛かっちゃ駄目よ?」

「でも、静が守ってくれるんでしょ?」

「モチロン! 私に任せない!!」

「……うん!」

彼女達はカップルの一件が無かったかのように再び笑顔を取り戻す。

そこにあったのは親友同士の、仲睦まじい姿だった。




【路地裏】


「お、出た。算頭さんですかな?」

ガンガン

『……何だ、央真か。調査に進展はあったのか?』

ガンガン

「えぇ、まぁ。どうやら反応は[こっくりさん]のブームによる様な、集団的な物ではないようですな」

ガンガン

『それでも反応は衛灯町全体に広がっている。貴様の地元だ……。何か、話は聞いていないのか?』

ガンガン

「怪しい話と言えば連続誘拐事件ですかね。警察も足取りを掴めていないようですし、関連性がないとは否めないかと」

ガンガン

『……天霊院は今、手一杯でそちらに回せる手駒がない。だからこそ貴様に頼んだのだ。失敗はしてくれるなよ?』

ガンガン

「こんな老人に何と酷な…………」

ガンッグチャッ

『よく言う物だ。……それより、先程から何やら妙な音がするが、何だ?』

グチャッグチャッ

「あぁ、いえ。先程まで喫茶店に居たのですが、そこで私の存在が気に入らない人達が居たようでね? 路地裏にまで連れ込まれて財布が取られそうになったので断ったら[頭を下げろ]と言われましたので、今、必死に下げているんですよ」

グチャッメキッ

『……やり過ぎるなよ』

メキッゴキッ

「えぇ、死なない程度には。それでは失礼しますよ」


ゴキンッゴリュッ


「さて、電話が終わりましたけれど……。まだ頭を下げなければなりませんか? 正直、足腰が痛くて痛くて……」

「もうやめて! 死んじゃうから!! 死んじゃうからぁ!!」

央真の足下には一人の、先程のカップルの男が居た。

彼は彼女であろう、山姥という言葉が似合いそうな女性を連れて央真を路地裏に連れ込んだのである。

理由はこうだ。先程の喫茶店でお前のせいで気分が悪くなった、慰謝料を請求する。

男が得意げにそう言い、女は大爆笑。央真も自分は場外れだったのを自覚していたし、店には悪い事をしたので特に反論する理由はなかった。

頭を下げろと言われれば下げるつもりだったのだが、カップルは金品を要求してきたのだ。

央真がこれを断ると彼等は土下座しろと言い出した。だが央真は土下座まではやろうと思わない。

なので代わりにカップルの男に頭を下げて貰っているのだ。下げろと言われたから下げてあげているのだ。

最初の方は自分で下げろと言っていたのに拒否する物だから、取り敢えず踏みつけ続けていたら静かになった。

もうかれこれ数十回以上は頭を下げているのだろうが、まだ男から許しの言葉は出ない。

カップルの女の方が央真の足に縋り付いて泣き喚いているが、どうにも彼ほどの歳になると耳が遠くていけないのだ。

「おっと、もうこんな時間ですか。申し訳ありません、そろそろ家に帰らないと。日も暮れてきて、最近は物騒ですし……」

「あ、アンタより物騒なのなんて……!」

「例えば連日の行方不明事件とか」

「っ……!!」

「気を付けてくださいね、本当に危ないから。……では失礼」

央真は男の顔面からねちょりという音と共に足を引き上げる。

彼は自らの革靴に付着した血液を地面に擦り付けながら、ソフト帽を深く被り直した。

カップルの女は地面に頭を落としたまま、痙攣にも近い形で震える男へと縋り付く。

その男はごぶり、と血を吐き、やがて気絶したのか動かなくなってしまった。



【央真探偵事務所】


「ふぅ、今日も腰が痛い……」

腰を曲げながら冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出す央真。

因みにこの栄養ドリンクも近場のスーパーで特売品の山だったので購入した物である。

売り文句は[今日も元気に頑張ろう!]なのだが、央真のイメージ的には今日も元気に特売商品として頑張っていた感じしかない。頑張りのベクトルが違う。

「しかし手がかりが少なすぎますねぇ。今日一日歩き回って得たのは霊的反応の発信箇所と行方不明者の僅かな情報。そして[こっくりさん]などの集団的な物ではないこと……。これでは些か情報が少なすぎる」

央真は無機質な机の上にメモ帳を置き、自らの腰も椅子の上に落ち着かせる。

今のところ手がかりらしい手がかりはなく、女学生には不審者扱いされ、不良カップルには絡まれるという散々な一日だった訳だ。

神様仏様は一体全体こんな年老いた老人に何をさせようというのか、と考えながら央真はテレビのリモコンを手に取る。

取り敢えずいつも視聴しているニュース番組にチャンネルを合わせてみたが、面白いニュースも目ぼしいニュースもやっていないようだ。

「可能性が考えられない事もありませんが……。さて、これはどうしますかね」



【路地裏】


「畜生! 畜生!!」

逢魔の過ぎ去った後、それも数時間ほど過ぎた場所。

繁華街の街灯も差し込まず、鼠の鳴き声だけが響き渡るような路地裏に彼等は居た。

喫茶店に居た薄汚い男を殴り倒し金を奪おうとしたら、逆に血まみれにされた男とその彼女。

何処からどう見ても自業自得で相手が悪かったとしか言いようがないのだが、そんな事は関係ないと言わんばかりに男の怒りは央真へと向いていた。

「あの野郎、ぶっ殺してやる!! 仲間内に収集賭けてリンチだ!! 死ぬだけじゃ許さねぇ!! 拷問かけてバイクで引き摺り回して瀕死にしてから町中で全裸で殺してやる!! 殺してやる!!」

「た、たっくん、やめようよぉ……。あのオッサン、絶対マジモンだって……」

「うっせぇ! 黙ってろ!!」

「でもさぁ……、明らかにやびゃっ」

「あの野郎は殺す……! あの野郎は殺す……! あの野郎は殺す!!」

男は気付かない。自らの彼女が隣でぐちぐちという音と共に人間ではなくなっていっている事に。

男は気付かない。自らの彼女が隣でぼりぼりという音と共に血肉を喰らわれている事に。

男は気付かない。自らの彼女を隣でぶちぶちという音と共に喰っていた何かの興味が、既に彼女にない事に。

「おい! 今すぐ先輩達に」

男は気付かない。

自分の、首元に真っ赤に染まった歯が迫っていることに。




【彩菜家】


「咲ー! 咲ぃ! 居るのーー!?」

灯りの灯った、小さな一軒家。そこ響き渡る母親の声。

その声に応えるように、彩菜 咲は急いで階段から駆け下りてきた。

「何? お母さん」

パジャマ姿の彼女は風呂上がりなのか、タオルを首に掛けて長い黒髪をうなじに張り付かせている。

艶めかしい姿でこそあれども、彼女のような幼い姿では色気も消し飛んでしまうだろう。

「どう? 鈴の調子は」

「ううん、駄目……。まだ寝込んでるみたい。部屋から出て来ないの」

「学校で何かあったのかしらねぇ……、もう数週間も部屋から出て来ないじゃない。咲がご飯運んでくれなきゃ部屋の中から物を投げてくるぐらいだし……」

「あの子は私や静には懐いてたから……。あ、でもお母さんが嫌いって訳じゃないよ?」

「フフッ、ありがとね? それじゃ、私はちょっとお買い物に行ってくるから」

「うん。最近は物騒だし、気を付けてね」

「えぇ、そうね。……八坂ちゃんも、早く見つかれば良いわね。高校に入ってからやっと出来た友達だったのに」

「……私には静が居るから」

「そう言って静ちゃんに頼りっきりじゃ駄目よ?」

「……うん」

咲は何処か物悲しげに呟き、表情に影を落とした。

内向きな性格の彼女は昔から奥手で、友達は殆どいなかった。

そんな彼女に対して積極的に関わってきてくれたのが風野 静だったのだ。

彼女らの関係は喫茶店の通り今でも続いており、親友と呼ぶに相応しい仲である。

「じゃぁ、行ってくるから」

「うん、行ってらっしゃい。気を付けてね」

咲は玄関から出て行く母を、小さく手を振りながら見送った。

彼女はばたんっ、と仕舞った玄関を暫く見つめ、やがて二階の方へと振り返る。

彼女の視線は何かを憂うような、そんな寂しい物だった。





【央真探偵事務所・地下】


「…………ふー」

上階とは全く違う、その空間。

白色で覆い尽くされた周囲は硝子張りの窓があり、その中には射撃場らしき場所が見える。

部屋全体の広さにして数十メートルはあるだろう。それこそ人ならば数十人は入りそうだ。

そんな部屋の端の部分で、央真は上半身裸で首にタオルを掛け、筋力トレーニングを行っていた。

トレーニングと言っても単純で八十キロほどの重りを片手で上げ下げするだけだ。

彼の片腕はそれを持ち上げるにしては異質なほどに細い。

しかし、その体つきは巨大な岩というよりも何重にも束ねられた鋼のような、そんな堅々しい物だ。

鉄パイプや金属バットで殴ればそちらの方が凹んでしまうのでは無いかと思えるほどである。

「やはり歳ですねぇ。昔は百はいけたんだけど」

央真は重りを台の上に置き、タオルで額を拭う。

もう何度も汗を拭いているのだろう。タオルは全体的にぐっしょりと濡れている。

それはそうとしても、部屋の中は異常な程の熱気に覆われている。

彼は一体全体、どれほどの間トレーニングを行っていたのだろうか。

「うーん、もう七時ですか。少し長い間やり過ぎましたかな?」

地下からは見えないが、外ではもう朝日が昇りきっている。

新聞配達員は町を回り終わり、電柱の上では雀がさえずっている程だ。

因みに彼の起床は五時半。もう生活リズムが完全に老人である。

「しかし捜査の進展が無いと、また天霊院から文句を言われますね。具体的には算頭さんから。……さてはて、どうすべきか」

彼は暫くの思考を重ね、やがて気がついたように地下から出て行く。

やがて数分もしないウチに戻ってきた央真の手には一冊の本があった。

埃を被っていそうな程に古い、古文書のような本。

彼はそれを手頃な机の上に広げ、静かに瞼を閉じた。

「〔空は青にて雲は白。その中に混じる斑点が如き黒の翼。天から降り注ぐ目の雨は全てを捕らう〕」

央真の詠唱と共に古文書のような本に刻まれた絵柄は光を放ち、周囲を照らす。

彼はその絵柄の上に手を翳したまま詠唱を唱え終わり、静かに息を吐く。

そうして、その絵柄の上に白煙と共に召喚されたのは三ツ目の鴉だった。

「三ツ目の鴉、三目鴉ミモクガラス。偵察用とは言え、使い魔を出すのは割と久々な気が……」

「グェッフション」

「く、くしゃみ……?」

汗臭い空間に放り出された三目鴉は不満を吐き出すように妙なくしゃみをする。

三目鴉からすればせめて蒼空の下で召喚して欲しかったのだろう。ここは外より暗いし、何より汗臭い。

「オッサン、せめて外で召喚しろや。キレるぞ」

「しかも喋った……」

「何もおかしい事はねェだろ。俺達は神や悪魔の使いであり魔道書に契約された存在だ。霊力の高い者が召喚すれば言語知能ぐらい得るのは当然だろうが。……ま、霊力が低い奴がやれば言語能力までは会得出来ねぇだろうけどよ」

「そうなんですか……。今まで適当に召喚してたので、そんな事は知りませんでした」

「何それ怖ェ。〔神魔召喚〕は霊力操作も難しい部類だろうによ」

「だって私、召喚師じゃありませんし。……おっと、それよりも三目鴉、少し偵察をお願いできますか」

「おう、召喚されたからにゃぁ応えるぜ」

「この町で霊的反応が確認されています。それも各地で。その原因を突き止めて欲しい」

「集団的反応じゃねェのか? 昔も[こっくりさん]ブームとか、あっただろ」

「その点に関してはある程度調査済みです。可能性は低い」

「だとすれば俺と同じ神魔召喚の使い魔だな。霊的反応が各地に散らばるなんざ、使い魔か複数人による行動しかねェ」

「えぇ、それは私も予想を立てたんですが……。この地に名のある魔術師は居ませんし、一般人が気安く召喚できる数でもない」

「ちょっと待て。今、何て言った?」

「え? だから名のある魔術師は……」

「……テメェ、そんな爆弾並みの抱えててそれを言うのか?」

「嫌ですねぇ。だから私は単なる老いぼれですってば」

「過ぎた謙遜は嫌味だぜ。神と悪魔の使いである俺以上の霊力を持ってる癖によ」

「はっはっは」

「……だとしても、使い魔が相手だとマズいな。被害は出てるのか?」

「行方不明事件……、もとい〔人喰い〕が少々。無論、神魔召喚が行われたのを前提として、ですが。いや、それでも人喰いで補える霊力量ではないでしょう」

「人間ってのはある意味でも霊力の固まりだからな。それを喰えば霊力を補給出来るだろうが、保持は出来ねェはずだぜ」

「えぇ、外部からの補給と違って内部からの保持は違いますからね。継続的に霊力を送るタンク的な存在が必要なはずです」

「そんなモン、用意できるのは魔術師ぐらいだろうな。そもそも人間側では人喰い事態が禁止されてるんだろ?」

「えぇ、天霊院はうるさいですよ? その点に関しては」

「……霊的存在の秘匿だか何だか知らねェが、随分と手間ァかけるね」

「強大な力を得た人間ほど恐ろしい物はありませんから。では、霊的反応の発信源とまでは行かずとも、せめて神魔の類いなのかどうかは突き止めてください」

「おうよ、任せときな。……ところで外には何処から?」

「階段上から。……ま、何はともかく急いでくださいね。嫌な予感がしますから」



【衛灯高校】


「……皆さんに、大変残念なお知らせです」

沈んだ声の教師が述べたのは、先日、衛灯高校の生徒が二名死亡したという事だった。

普段から素行の良い生徒達ではなく、その現場も路地裏だった事からあまり良い憶測は飛び交っていない。

彼等が最後に目撃されたのは路地裏に男性と入るときだったそうだ。

ソフト帽を深く被りコートを羽織った四十代後半であろう痩せ形の男性。

本来ならばその男性に疑いが掛けられるだろう、が。そうはいかなかった。

ここまで教師は言わなかったが生徒達の情報網にその情報は既に引っ掛かっていたのだ。

その生徒達は原形を留めるまでもなく、いや、原型のパーツすら揃っておらず。

肉食獣に喰い散らかされたかのように各部を無くし、血肉も殆どが損失していたらしい。

それが決して一般的な殺人事件でない事は素人目にも明らかだっただろう。

「怖いね、静」

「猟奇的殺人ね……、咲も気を付けなさいよ?」

「うん。……でも、静が守ってくれるんでしょ?」

「私だって完璧超人じゃないんだから、何でもかんでもは無理よ? 咲だって可愛いんだから気を付けないと」

「えへへへ……」

「そ、そこで照れられても……。……咲?」

「うん?」

「顔色、悪くない?」

「少し寝不足なの……。静のこと考えてたら!」

「ちょ、ちょっと!」

二人の声は決して大きくはなかったが、教師からすれば充分な音量だったのだろう。

鋭い眼光に当てられた彼女等はしゅんと肩を竦ませ、教室中から微笑を集めることとなった。

そんな非日常すら寄せ付けない日常の中を覗く三つの眼光。

教室の生徒や教師がそれに気付くことはなかった。



「咲ー、お昼ご飯食べよー」

それから時は過ぎて昼休み。

朝の不吉な報告が無かったかのようにクラス中は活気に満ちていた。

彼等からすれば、それ程にあのカップルはどうでも良い存在だったのだろう。

風野 静からしてもそうだったのだろうし、彩菜 咲からしても同様なのだ。

「あ、風野さん、彩菜さん。私も一緒で良いー?」

そんな彼女達の中に一人の女子が入ってくる。

彼女は八坂ヤサカ マナという人物と仲が良かったのだが、連日の行方不明事件から彼女が居なくなり、一緒に弁当を食べる人が居なくなってしまったのだ。

よって咲や静の元に来たのだが、そんな彼女を否定するかのように咲は酷く不機嫌そうな表情となっていた。

「だ、駄目かな……?」

「あー……、ごめんね? 今日は、ちょっと」

「そう……。うん、じゃまたね!」

「ごめんねー……」

申し訳なさそうに去りゆく女子生徒。

彼女に苦笑しながら手を振る静は、やがて呆れ返ったように深くため息をついて咲へと視線を戻した。

「やっぱり、まだ駄目?」

「…………うん」

「人見知りなのは仕方無いけど、いい加減に直さないと苦労するわよ?」

「ごめんね、静。……でも、私には静が居るから」

「私ばっか頼っちゃ駄目だぞー? 昨日みたいに変なオッサンと会ったらどうする?」

「そ、それは……」

「咲も、もっと我が儘を言う事を覚えなきゃ駄目よ。それに我慢も、ね?」

「……うん、解った。だけど、まだ慣れないから……」

「それまでは付き合ってあげるから」

「ありがと、静。……やっぱり静は私を守ってくれる、親友だよ」

咲の笑顔に、静は思わず両頬を赤く紅潮させる。

照れ隠しのように微笑んだ彼女は急いで飯をかき込んだ。

何ともない、ごく普通の光景。

その中に紛れ込んだ、ほんの少しの異質。

空を見上げなければ誰も気付かないであろう、いや、見上げても気付くかどうか解らないほど小さな異質は、黒翼を羽ばたかせ、空へと消えていった。



【衛灯高校校門前】


「今日はどうする?」

「うーん、今日は少し早く帰ろうかな。鈴にも、早く部屋から出てきて貰わなきゃ」

「鈴ちゃんもどうしたんだろうね? 昔はよく遊んだし八坂ちゃんとも仲が良かったのに」

「その八坂ちゃんが行方不明になる前ぐらいに、もうずっと引き籠もってたんだっけ。……何か関係が」

静の言葉を遮ったのは、彼女自身の肩に置かれた手の感触だった。

ごつごつとしたその感触を、彼女は思わず払いのけた。

反射的に身構えた彼女の目に映ったのは驚きと申し訳なさそうな感情を入り交じらせた表情の央真だった。

「あ、申し訳ない……」

「ま、また貴方!?」

「央真さん、でしたっけ……」

「えぇ、見かけたので声を掛けようと。また事件があったそうじゃないですか」

「貴方には関係ないでしょ!」

「心配して来たんですが……。聞き込みの途中だったんですよ」

「し、静、そんなに怒鳴っちゃ……」

「どー考えても怪しいのよ! 私達の行く先行く先に現れるし……!! 第一、この人の見た目って完全にあの噂の!!」

「しっ! そこまで言っちゃ失礼だよ」

「……この人は間違いなく捜査中に謎の影に襲われるわ」

「はっはっは。泣きますよ」

「でも事実! 貴方の見た目は噂の……!!」

「あぁ、路地裏の? アレは私ですよ」

その言葉を聞いた瞬間、静は咲の前に飛び出て拳を構えた。

今すぐその拳が央真の顔面に叩き込まれそうなほどの怒気を溢れ出させて、だ。。

「お、お、落ち着いて……」

「咲! 今すぐ逃げて!! この人は!!」

「い、いや、あの件に関しては完全に誤解ですよ? 警察の方にも話しましたし、誤解も解けました」

「……本当?」

「この清廉潔白な面持ちを見ていただければ」

「嘘ね」

「酷い!?」

まぁ、実際の所は天霊院が根を通して警察の上層部に今回の捜査を打ち切らせたのだが。

それは央真の知る所だし、嘘というのは強ち間違ってはいないのだ。

「まぁ、それはそうとお二人に少し聞きたい事がありまして」

「聞きたい事?」

「最近、何か異変はありませんでしたか? 行方不明事件以外の、何か小さな事でも構いません」

「…………私は特にないけど、咲は」

「私も、特にありません」

「そうですか……。いえ、無いに超したことはありませんからね。では何か異変があればここに電話してください」

央真は自らの懐から取り出した切手を一枚、静へと手渡した。

何の変哲も無いただの名刺なのだが、彼女はそれを爆弾でも受け取るかのように慎重に指先で摘み取る。

「……毒なんて塗ってませんよ?」

「胡散臭いので」

「あ、目頭が熱くなってきた」

「ご、ごめんなさい……」

「いや、まぁ風野さんと彩菜さんでしたっけ? 二人とも何事も無ければそれで良いですので」

彼はソフト帽を深く被り直し、二人に一礼を残して下校生や社会人で構成された人混みの中へと姿を消していく。

やがて何ともない普段の光景へ戻った喧騒の中、静は名刺を持ったまま呆然と立っていた。

そんな彼女の意識を戻したのは、再び肩に置かれた手の感触だった。

「……さ、咲?」

「怪しそうな人だけど……、悪い人じゃないみたいだし、ね?」

咲が彼女に語りかけると同時に、静は酷く咽せ込んだ。

前屈みになるほど咽せ込んだ静は、咲の手を掴んで頬へ擦り寄せる。

彼女の頬に当てられた手は、その微かな震えを感じ取った。

「し、静?」

「……でも、あの人。私を見つけたとき、何だか」


―――――――――――――獲物を見つけた、獣のような目をしてて。




【路地裏】


「間違いありませんね」

肩に一羽の鴉を乗せた、茶色のソフト帽とスーツを来たその男は静かに呟く。

昨夜の事件もあって封鎖され、誰も近付かなくなった路地裏には彼の影があった。

未だ清掃されていないのだろう。壁面や地面には凄まじい量の血液と、部分的に飛び散った肉片があった。

「霊的反応の一致。不慣れな神魔召喚による体力の損失。身近に居る人物による影響。条件は一致してるぜ」

「魔力タンクは親しい物による人物縁で補った、という所でしょう」

「……しかし、あんな嬢ちゃんがねぇ」

「力を得た人間ほど恐ろしい物は居ないという事でしょうね」

「触れたときの感触、間違いねェんだな?」

「えぇ、残念ながら。…………ならば行う事は一つ」

「良いのか」

「そんな事、遙か昔に割り切りましたよ」

「なら良いがね」

三ツ目の鴉は両翼を広げ、欠伸をするように口を天への器とした。

降り注ぐは夕暮れの日光。時は来る、逢魔の時が。

「さて、今晩、決着を付けましょう」

「あぁ……、そうだな」



【風野家】


「…………」

静は天井を見上げ、電灯の光を遮るように腕で目元を隠していた。

ベットに寝転がった彼女の表情は酷く疲弊しており、今にも事切れてしまいそうな程に呼吸は弱々しい。

部屋の中には女性が好みそうな置物などが多くあり、可愛らしい人形なども多い。

だが、彼女はそんな物は関係ないかのようにただぼんやりと天井を見上げていた。

「…………咲」

ふと呟いた彼女は寝たきりの老人のように震える腕で、枕元の充電器に繋がれた携帯電話を手に取った。

電話帳のボタンを押し、何度か方向ボタンを押して[彩菜 咲]にカーソルを合わせる。

虚ろな目つきでそれを見つめた彼女は、ゆっくりと決定ボタンを押し込んだ。

それとほぼ同時だろう。彼女の家の玄関でごとんっ、という物音がしたのは。

「……?」

何かが落ちたのか、誰かが転んだのかにしてはあまりに大きな音。

彼女はふらつきながらも窓まで歩いて行き、そして見た。

表で一人の、コートを着た男が何かを潰した瞬間を。

闇の固まりのようなそれは男によって一瞬で潰され、血肉を爆ぜさせて彼のスーツを濡らした。

静はその異質な光景をカーテンで遮断するも、見てしまったのだ。

男の双眸が自分を捕らえているのを。

「っ……! っ……!!」

自分の呼吸が乱れるのが解る。自分の心臓が恐怖しているのが解る。

今の光景は見間違いなどではない。間違いなく、そうだ。

あの男は自分を殺しに来たのだ。

「咲……! 咲……!!」

彼女は決定ボタンを押したはずの携帯電話に縋り付き、それを耳に当てる。

しかし、そこから聞こえてきたのは雑音だけだった。

その雑音は彼女を孤独の中に叩き落とし、恐怖に染め上げる。

「ッッッ…………!!」

家族は今外出しており、帰ってくるのは少なくとも数時間後。

表の男が何をしたのかは解らない。だが、窓ぐらいは叩き割って入って来るだろう。

このまま布団に籠もっていても、恐らく……、殺される。

「……!」

静は周囲の物を漁り、やがて一本の彫刻刀を手に取った。

あの男に対しては余りに頼りない獲物だろう。だが、何も無いよりはマシだ。

「来るなら……!!」

人は極限状態に陥ったとき自殺思考すら持つという。

彼女が彫刻刀を持ったのも、それからだろう。

あの双眸は間違いなく人のそれではない。

アレは、獣などでもないだろう。

間違いなく化け物の、それだ。


ピンポーン


「あのー、風野さん、いらっしゃいますかー?」


その化け物が礼儀正しくチャイムを押してきたのは、流石に静にとっても予想外だっただろう。

彼女は拍子抜けするように彫刻刀を落とすが、それでも彼が危険なのは変わらない。

地面に落ちた彫刻刀を再びしっかりと握り締めて、彼女は下階へと降りていった。

「……」

やがて玄関の前まで歩き出てきた静は、額や背筋に多量の汗を伝わせながらも息を殺していた。

扉の向こう側に居るであろう、男を殺す為に。

「あれ? 居ないのかな……」

扉の向こう側から聞こえる、何の変哲もない声。

だがしかし、その声は静からすれば獣の唸り声にも近いだろう。

「あれ? 開いてる……。開けますよー?」

ゆっくりと扉が開き始め、室内へ月光が差し込んでくる。

そして、それと同時に男の細長く逞しい指も。

「静さっ……」

扉の隙間。半径十センチもないであろう、その隙間に通った腕。

そしてその先に持たれた白の短い刃。

「……全く、笑えませんね」

その刃は寸前で止まっており、央真の血肉を抉る事はなかった。

静の腕は全力で突き出されているがそれが伸びきることはなく、ただ力の行き所を無くして震えているだけだ。

尤も、その腕を止めているのはたった二本の指だったのだが。

「女の子が持って良い物じゃないでしょう」

「止めっ……!?」

「はいはい、落ち着いてください。何も殺しに来た訳じゃないんですから」

「……!?」

央真は人差し指と中指で彫刻刀を弾き飛ばした。

いや、正しくは折り砕いたのだ。

プラスチックの破片が周囲に飛び散り、静は思わず彫刻刀の柄の部分を放り捨てる。

刃を指元でねじ曲げた央真は玄関を開けたまま静を見下ろすようにして頬笑みを見せた。

「やはり、貴方ではなかった。アレを召喚していたのは」

「……な、何?」

「彩菜 咲さんでしたね。……彼女こそが、今回の行方不明事件の犯人です」




【彩菜家】


「……ねぇ、鈴。私は間違ってないよね?」

灯りの無い、咲以外誰も居なくなった一軒家。

月明かりだけが照らす薄暗い廊下で膝を抱えていた少女は、もう数ヶ月近く開いていない扉の前で膝を抱えていた。

「鈴も言ってくれたもんね。静は私の親友だ、って。だから、独り占めしても罰は当たらないよね?」

彼女が座る扉の中では、一人の少女がその話に耳を傾けている。

傾けては居るが、言語を理解出来ているかどうかは怪しい所だろう。

魔力タンクと化したその少女がそれを理解出来ているかどうかなど、解るはずもなく。

「だからさ、八坂さんも他の人もあのカップルも全部全部全部全部全部……、消しちゃった。私と静の間に、邪魔だったから」

彼女の声は、最早、妹であった存在には届いていない。

無限回廊のように自分の中でぐるぐると回り続けるだけ。

自分の言い聞かせるように、自分への言い訳のように。

「……だからさ、ねぇ。鈴? …………まだまだ頑張ってね? 私と静の間に、邪魔が入らないように」



【道路】


「……どういう、こと?」

「要するに、彼女は何らかの目的を持って貴方を守っていたんですよ」

夜遅くの、月光だけが照らす道路。

左右に造林並木を持つその道には時折通る車以外、何の灯りもない。

そんな道を茶色のソフト帽とスーツを着た男は、隣に少し距離を取った女子高校生を連れて歩いていた。

「守っていたなら、別に」

「守ると言っても術を違えば殺戮でしかない。彼女は自分と貴方の関係性を守る為だけに自分達に近付いた人間を殺し続けていたのですよ」

「そ、そんな事!!」

「無論、彼女自身が、ではありません。恐らく神魔召喚による使い魔を使用したのでしょうね」

「さ、咲はごく一般的な女子高校生だ! そんなこと……!!」

「誰かが術を示せば可能ですよ。少しばかり手を加えないといけませんが」

「……手?」

「最近、貴方や彼女の周りで血縁関係及び親しい関係にある人物が消えませんでしたか? それも、行方不明事件によって」

「…………八坂ちゃん」

「恐らく、その子でしょうね。最初の餌は」

「最初の……?」

「使い魔を維持するには霊力が必要となります。しかし、ごく一般的な女子高校生が祖におような術を持っているはずが無い。そうでしょう?」

「だったら、どうやって……」

「人喰い。自然より命を賜りし、人間という霊力の固まりを喰らう行為だ」

その言葉を述べたのは央真の肩に降り立った一匹の鴉だった。

三ツ目のその鴉が急に喋ったことによって静は思わず悲鳴を上げそうになるが、央真は彼女の眼前に手を翳し、それを制す。

「これがその使い魔です。私は以前に友人から受け取った……、というか廃棄処分寸前だった魔道書から彼を召喚しました」

「何それ初耳なんだけど」

「……鴉が人を喰うの?」

「いえ、彩菜 咲さんが召喚しているのは半獣半人型です。人喰いに特化した形のね」

「使い魔ってのは神様や悪魔の化身だったり眷属だったりするからなァ。人間が敵うはずもねェよ」

「そうですねぇ。使い魔は人間を小指で弾き飛ばしたりしますから。あぁ、怖い」

「ま、俺みたいに非力なのは別だけどなァ」

「…………どうして、こんな夢物語みたいな事に咲が巻き込まれてるのよ?」

「巻き込まれた、というよりは巻き起こした、じゃねェか?」

「ですね。天霊院も被害者が出た以上、黙って見過ごすのは不可能でしょう」

「……天霊院?」

「こういう類いの警察みたいな存在ですよ。貴方も知った以上は何らかの処置を執るでしょうが、まぁ黙認程度で済むんじゃないですかね」

「咲は…………?」

「良くて実験動物として捕獲、悪くてその場で処分と言った所でしょうか。人食いを行った身としては当然の結果ですね」

「せ、せめて! どうにか……!!」

「現実と夢物語を履き違えてはいけませんね、風野さん。物を盗めば罪になるように、人を食えば罪になる。それだけの事でしょう」

「何で咲はこんな事を……!」

「……踏みつけられた陰の花が、光に縋ろうとしただけでしょう。身の丈に合うはずだった願いを、外法を使ったが故に自らを枯らす結果となってしまった」

「もうどうにも、ならないの?」

「せめて苦しまず。別れの言葉を告げさせるぐらいでしかーーーー……、っと」

央真達の行く手を遮るようにして現れたのは三体の使い魔だった。

半獣半人のそれは錆びた赤色を歯にこびり付かせたまま、ぼたぼたと地面に涎を垂れ流す。

その涎にも幾らかの血と肉片が含まれており、周囲には酷い悪臭が蔓延していた。

「有象無象の、生物の負の感情を具現化した使い魔だな。名すらねェ。言語を解してる様子もないし、当たりか」

「素人でもこれを現界させられたなら立派ですよ。……ここは私が相手しますから、三目鴉は静さんを連れて咲さんの家に向かってください。すぐに追いつきますから」

「人間が勝てる相手じゃねェぞ?」

「足止めぐらいしかしませんよ。こんな老いぼれが戦えるはずもないし」

「わ、私が先に行っても大丈夫なんですか?」

「恐らく咲さんは貴方と一緒に居る私を始末する気だ。ならば、貴方は狙われる道理がない。私は三雲鴉と一緒に行動していただけると、それだけで追いつけますのでご心配なく」

「……気を付けて」

「えぇ、死亡フラグは回避してみせますよ」

央真は深くソフト帽子を被り直し、懐から手を抜きだした。

使い魔共と対峙した彼は、何と言う事はない、ただ仕事に向かうかのような足取りで。

平然と人間を喰い殺す化け物へと向かって行くのだ。

「では、少し獣と戯れてきます。こう見えても動物好きでしてね」

「……行くぞ、嬢ちゃん。残ってても足手纏いだ」

三目鴉は静の肩へと文字通り飛び移り、何度か頭を傾げさせる。

肩に異質な存在が飛び移ったことで彼女は少しだけ怯えたが、そんな事に足を震わせている暇はないと判断し、奥歯を噛み締めた。

「……!」

彼女の足音が遠のいていく。

使い魔達は静と三目鴉をまるで空気のように無視し、容易く後方へと通していった。

それもそのはずだろう。彼等からすれば静はむしろ主の目的でもあるのだから。

しかし、それは裏を返せばそれ以外の存在、つまり央真は駆除すべき害虫でもあるという事。

「人間では到底敵い得ない化け物……、使い魔が相手ですか」

彼は懐からしなびた、近所のスーパーで購入した安煙草を取り出す。

それを口へと咥えて愛用の百円ライターで火を付け、彼は深く深く吸い込んだ。

「ならば、魔天に吠ゆる狼ならばどうですかな?」

白煙が空へと登り、使い魔の咆吼が周囲の木々を揺らしざわめかせる。

魔天狼は静かに歩み、その拳の骨音を闇夜に響かせた。



【彩菜家】


「……なんつー、禍々しさだ」

ごく普通の、空き地に挟まれた一軒家。

昼間ならば小学生が前を通り、隣接する電柱の上では鳥がさえずり、主婦同士が談笑しながら通り過ぎるような、有り触れた一軒家だ。

だが、今は違う。

外からでも解るほど歪な雰囲気と、血肉の異臭。

明らかにこの世に存在していて良い物ではない事が静の目ですら一目瞭然だった。

「こりゃ使い魔の俺でも吃驚だぜ」

「……この中に、咲が?」

「おう、そうだ。……ま、囚われのお姫様じゃなくて魔王様ってのが問題だけどな」

「…………皮肉?」

「別に。ただ、俺は解らねェんだ。人喰いまでするような奴をまだ友と呼ぶお前の考えがな」

「……咲は友達じゃないわ。親友よ」

「例え、それが人間すら喰らう化け物でも?」

「あの子は、本当はそんな事望んで……」

ぐしゅっ、と。

何かが潰れたわけではない。むしろ感覚はほぼ無かった。

静がそれを理解出来たのは彩菜家の玄関が休息に迫ってきた時。

「え?」

後ろで何か、三目鴉が羽音と共に叫いている。

自分の体を手のような、巨大な陰が包み込んでいる。

直後、彼女の後ろで玄関の扉が閉まる。

「……いらっしゃい」

呆然とするしかなかった静を迎えたのは、脆々しい笑みを浮かべた咲だった。

彼女は夕暮れに別れた時とは、もう全くの別人と言っても良いほどに変わってしまっている。

目の下には黒い隈が出来、髪は乱れ、手足は病人のように細々しい。

それでも解る。それが親友だ、と。

「咲……。……っ!?」

彼女を襲う嗚咽感。

喉元から込み上げてきたそれは彼女を思わず前屈みにさせるほど大きな物だった。

体の底から、脳の奥から、精神の随から。

この異質な存在の言葉に応えることを否定しているのだ。

「ごめんね、ちょっと散らかってるの」

彼女が足下に落ちた荷物を退けるように、蹴ったのは人肉の固まりだった。

原型こそ留めていない上に血肉の紅色と異臭が隠してしまっているが、それは確かにエプロンを着用している。

そして、その隣には黒いスーツとレンズが割れ、本体が拉げた眼鏡も落ちている。

元の形など無く、さらに二つの肉片が合わさってこそ居るが、間違いなく彼女自身の母親と父親だ。

「部屋にね、鈴が居るの。また遊びたいって言ってたでしょ? だからね、久しぶりにオママゴトでもどうかなー、って」

「…………っ」

「ねぇ、静? どうかな」

「さ……、き」

「ねぇ、静」

ぞくりと。

背筋をなで上げるかのような、感触。

目の前の狂気が、自分の喉元を鷲掴みにする。

「どうかな?」



「私がお母さんでね、静がお父さんでね、鈴が娘」

小さな、少女の部屋に似合う可愛らしい机。

巨大な円陣の中心から少し外れた場所に置かれたそれの上に、咲は慣れた手付きで空の茶碗を置いていく。

いや、正しくは空ではない。

それには彼女の手形でくっきりと、血の跡が付いていた。

「鈴ー、今日の晩ご飯はね、何が良い?」

酷く肩を震わせる静の事など関係ないかのように、咲は枯れ果てたミイラのような何かに語りかける。

恐らく、それが鈴なのだろうが、静の記憶にある姿とは全く違う。

全身から水分を抜いたような皮膚は既にひび割れており、眼球は陥没して歯は全て抜け落ちていた。

もう生きているかどうかすらも怪しいその物体に関し、咲は純粋無垢な笑顔で語りかけ続けている。

「私はね、お鍋なんか良いと思うの。皆で楽しく囲んでね。静も、そう思うでしょう?」

「…………咲」

「どうしたの? 静。顔色悪いよ」

「もう……、止めて……。もう…………!」

「ねぇ、静。静? 静? 静? 何言ってるの? 私は何も、変わってないよ。静が守ってくれなきゃ弱い女の子なままだよ? ねぇ、静。静。静」

机の上に置かれた茶碗が床に落ちるのも厭わず、咲は静へと詰め寄っていく。

彼女の細く、氷のように冷たい指が静の手首へと絡められる。

まるで抱きつくかのようにして静を押し倒した咲は、妖艶な吐息を切らすかのように荒くしていた。

「静。私ね、駄目なの。私ね、駄目なんだよ。静が居ないと何も出来ないの。だから、だから、誰にも静を取られて欲しくなくて、だから」

「咲…………!」

「私ね、静」

咲の舌が伸び、静の首元へと迫っていく。

彼女の唾液が月明かりに照らされて、ゆっくりと静の首筋を上がっていった。

それから、咲は吸血鬼のように首元へと吸い付く。

静の柔く雪のように白い肌に咲の歯形が付き、唾液が胸元へと垂れ落ちる。

「咲…………?」

「静、ねぇ、静。私を守ってくれるんだよね、静。……私は、もう、静しか居ないよ」

床に押し倒された静の上に乗りかかる形となった咲は、そのまま彼女の胸元に顔を埋め込む。

例えるならば母親の温もりを求める赤子、だろうか。

余りに脆々しく弱々しい彼女は、両手を濡らす血など厭わずに静を抱き寄せた。

「そこまでです、彩菜 咲さん。…………いや、今はもう彼女ではありませんか」

その二人の間に割って入った声の主は部屋の扉を開けたまま、ソフト帽を深く被り直す。

彼のスーツは血にこそ汚れているが一切乱れていない。

その男の肩に留まった三ツ目の鴉もまた、何も言わずにただ静かに羽を休めている。

「人間の負の感情の集合体である使い魔を使役しすぎて霊力を過失し、その感情に取り込まれている貴方は、もう別人だ」

「…………だぁれ?」

「私は貴方を眠らせに来た、ただの狼ですよ。お嬢さん」

「……静じゃない」

「…………えぇ、違います」

「静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない静じゃない」

「……そうですね」

「静は、ここ」

咲の腕に力が込められていく。

その力は到底、人間の出せるそれではない。

鉄板ですらも簡単に拉げさせるであろう、その怪力は静の全身を軋ませる。

「かっ……! ぁ……!!」

血管すら潰す、彼女の細腕からは出るはずもない力。

それは静の肺から酸素すら奪い取っていく。

喉奥からの呻き声と共に吐き出されるのは吐息と、苦痛。

「やめなさい」

そんな彼女の怪力の腕を、いとも容易く静から引き離す央真。

まるで子供の腕を持ち上げるかのように、彼は容易く咲の腕を持ち上げたのだ。

「静、静、静」

「……風野さん、あまり見ていて気持ちの良い物じゃない。三目鴉を連れて部屋から出て行ってください」

「ッ…………」

「彼女はもう人間と霊的存在の境界すら怪しい。もう一刻でも放っておけば人間の姿を失うでしょう」

「咲を……、咲を助けて……! この子は、この子はぁ……!!」

「現実を見てください。彩菜さんはもう貴方に縋るだけの化け物でしかない。……ここで殺さなければ、天霊院の実験動物と化すだけだ」

「静、オママゴトの続きしよぅ? 静、静、静」

「……選んでください。ここで楽にしてあげるのか、それとも天霊院の元で一生を実験動物として過ごさせるのか」

その選択は、即ち親友を見殺しにするのか、地獄に突き落とすのか、という選択。

つい数時間前までごく普通の高校生だった少女に尋ねるには、余りに酷な物だ。

だが、それでも少女は決断しなければならない。

変わり果ててしまった親友のため、守りきれなかった親友のために。

「…………咲」

胸が痛い。指先が震える。目元が熱い。

親友と、今まで過ごしてきた日々が蘇ってくる。

もう一度、あともう一度だけで良いからその日々を過ごしたい。

「……ごめんね」

三目鴉を肩に乗せ、少女は扉に手を掛ける。

異質な空間から、必死に息を殺して出て行く彼女。

そんな彼女の後ろ姿を求めるかのように、咲は手を伸ばして小さく呟いた。

「また、遊ぼうね」

静の聞いた、親友の最期の言葉。

約束を守れなかった、最期の遺言となった。



【央真探偵事務所】


「…………むぅ」


結果的に言えば。

今回の事件の真相は泥沼に嵌まった少女達の悲劇、と言った所だろう。

泥沼の主は私自身の手で葬った。墓も質素だったが作ったので、浄土では安らかに眠っていて欲しい。

彩菜家と人喰いの件については天霊院に丸投げした。警察と共同して別の霊的事件の犯人に罪を軽くすることを交渉材料に罪を擦り付けるなり何なりするだろうが、算頭さんの機嫌がまた悪くなった事に変わりはないだろう。

一連の事件についてはこれで幕を閉じるだろう。

そう、一部の問題を残して、だが。

彩菜 咲が使用していた魔方陣。下位の存在とは言え負の感情を元にした名も無き使い魔を召喚するほどの魔方陣だ。一般人が用意できる物ではない。

これからの暫くの日々は彼女に魔方陣の知識を与えた人物を追うことで費やすことになりそうだ。

魔天に吠ゆる狼にも休息ぐらいは欲しいのだが、そうもいかないらしい。

……そしてもう一つ、新たな問題。

「くっさ! 何でゴミ箱にゴミを捨てないんですか!? ゴミ袋に纏めたままとか有り得ない……!!」

「あ、あのぅ……」

「良いから黙ってそっちを片付けてください! 服だってちゃんと畳まないと!!」

「…………はぁ」

「って何手帳記してるんですかぁーーー!!」

「こ、これは記録だから……」

風野 静。今回の事件で主要人物とも言える彼女が私の事務所に居るのには理由がある。

それは彩菜 咲に魔方陣の作成、及び使用方法を教えた人物を殴り飛ばす為、だとか。

気持ちは解らないでもないが、その為に事務所の助手として強制的に雇わされた。

給料は要らないと言っているが、流石に雇い主が給料を払わないのもどうかと思う。

……そもそも助手など要らないのだが、彼女はどうにも離れてくれそうにない。

「こんな部屋で仕事出来るんですか!?」

「だ、だって殆ど現場仕事だし……」

「家計簿とか、お金の管理は!!」

「近所のスーパーが生活の支えです……」

「……はぁ?」

「ご、ごめんなさい……」

女は男より強し、と言うが……。よく言った物である。

それはそうと、追記を記しておこう。

天霊院から貰い受けた魔道書だが、今回の事件では大いに役立ってくれた。

三目鴉などの偵察用使い魔なら召喚師でもない私でも使えそうだ。

何にせよ、使い魔と聞いては風野さんが良い顔をしないのは目に見えているのだが。



衛灯町の外れにある、小さなマンション。

例えるならば映画に出てくるオバケマンションとでも言おうか。

それ程に錆び付いており、壁にツタが這っている。

コウモリの羽音か猫の鳴き声が響き渡っていそうな魔城に、その男と少女は居る。

「んっーー……。割とみそも悪くない」

「カップラーメン食べてないで仕事してください! いい加減に怒りますよ!?」

央真探偵事務所。

表向きは何と言う事はない、古びた廃墟寸前の事務所だ。

だが、裏の顔は違う。

魔天に吠ゆる狼とごく一般的な少女の根城。

それこそが、本当の央真探偵事務所なのだ。



読んでいただきありがとうございました。


さて、この小説なんですが実は次回作の間の息抜きに書きました。

別段、私は困る事なんて無かったのですが、ここで編集君との会話をどうぞ。


編集「……は? 何つった? お前」

作者「いや、だから[新作]書くの詰まってきたから息抜きしたい」

編集「あー、だったら何か良い暇潰しを……」

作者「それでさ、新作作らない? オッサンが活躍する系の」

編集「……受験生に一章分の六万文字編集させといて、それ?」

作者「大好き編集君! 愛してる!!」

編集「OK、死ね」

作者「HAHAHAHAHAHA」

編集「第一、アンタの作品が予定通り進んだことがあったか? あ?」

作者「ないね」

編集「その帳尻会わせやらされてんの誰? ねぇ、誰?」

作者「君だねぇ」

編集「金属バットか、それとも絞め技か」

作者「HAHAHAHA,俺はまだ死にたくないぞ編集君!」

編集「…………どういう話?」

作者「オッサンが悪霊狩りする話」

編集「……名前は?」

作者「央真 夕月」

編集「逢魔が時ね……」

作者「その通り! やってくれる?」

編集「どうせやらされるんだろ……、もう良いよ……」

作者「ありがとう編集君! 愛してる!! お礼に俺の秘蔵フォルダから画像を……」

鬼神「送ったら殺すからな」

作者「はいスイマセン」


まぁ、それでも編集してくれる編集君大好き、という事で……。

因みに彼は[秋鋼]編集時、何度か失神したそうですけどそれでも付き合ってくれてます。

いやぁ、今年の受験も頑張ってね!


まぁ、それはそうと今作は息抜きの、新作候補のウチ一つの序章部分を書きました。

新作優先順位は低いんだけど、どうしてもオッサンの話が書きたかったので……。

え? 何? オッサンの影が薄い? 知らん。

何はともあれ、暇潰しに楽しんでいただければ幸いです!

では最後に編集君から一言どうぞ!


「俺が刑務所に入るとき、それは作者を殺すときだ」 by編集



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