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シシオトシ

作者: カナリヤ

オカルトな話をいくつか見ての創作のオカルト話。

別にモデルのなければ、ベースもない。

 近くの山の中に、川があって滝(と言っても、ちょっと段差があるだけ)もあるのだが、誰かがふざけて設置したのか鹿威しがある。しかもご丁寧に看板まである。ただ、設置したのが馬鹿なのか、それとも誰かの悪戯なのかわからないけど、カタカナで書かれている看板はシシオトシになっている。

 でも、ふざけたにしては鹿威しは意外と立派で、山に登るジジババがきちんと手入れしているらしい。

 健康の為なんだが判らないけど、ジジババはよく山に登るらしい。だけど、子供とかは登らせるなってなっている。

 子供が山に行くなんてそれだけで危険だから判らなくはないけど、田舎で遊ぼうと思えば候補に挙がるのは仕方ない。山だとイノシシや、ヘビなんてどこにもいるらしいけど、その山にはまったくでないから遊び場所としては悪くない。

 それに、山と言ってもそこまで広くはないし、騒音とかないから鹿威しの音が聞こえるから山の中で迷ったら鹿威しの音を頼りにして川まで行って、川にしたがって下山すれば人里近くに出れる。その川も遊び場の候補によくなる。

 そんなわけで、山の中も鹿威しのお蔭で子供内では遊び場になっていた。


 そんな山である日事件が起きた。事件と言っても、子供が暗くなっても帰って来ないというものだ。

 田舎では子供が暗くなっても帰って来ない事件っての言ってしまうと悪いが、全国的によくある事件。住人総出で山狩りしたりして子供1人を捜すのは当然の流れだった。

 だけど、その日はわけが違った。なんでも殺人犯が逃走中だかで、目撃情報が近くにあるから注意しろと回覧板が出回ってたからだ。

 成人は勿論、ジジババも駆り出されて子供に行きそうな場所聞いてはすぐさまそこに行くという、まるでハチの巣をつついたような騒ぎに発展した。

 そんな騒ぎの中で子供を見つけたのは山を捜したジジババだった。だけども、見つけられた子供はまともじゃなかった。

 「くろいのが……」とか「きられたら…」とか要領を得ない事ばかりを言うからだ。その子の両親は子供が見つかったから一安心といったところだったけど、ジジババを筆頭に大人は厳しい表情だった。

 とりあえずその日は解散となって、次の日にジジババが定年間近の警官を連れて山に登った。子供からすればなんでそんな事をしたのかが判らなかったが、しばらくは山で隠れてでも遊べなくなったのは確かだった。


 後日、新聞で逃走中だった殺人犯が山中で変死体で発見されたと報じられた。


 死因は溺死。川があるんだからそれくらい変じゃないかと思うだろうけど、あの山での川で溺死なんてまずおきない。川は小川と言えるくらいの規模で、そんなに深さはない。それこそ、顔面を川に押し付けられでもしないと溺死できないような川。

 だけども、争った形跡がないから、足を滑らして運悪く顔面から川に入ってそのまま気絶して溺死したという事で終わった。


 しかし、子供にとってまだ終わってなかった。時間が経って子供は成人になって、当時は要領を得ない事を言ってた子供が当時の事を詳しく話したのだ。

 山で遊んでいたら友達とはぐれて、仕方なく帰ろうとしたんだけども道が判らない。それで鹿威しの音を頼りにしての帰る方法を使うのだが、なぜか途中から鹿威しが聞こえなくなったのだ。

 唯一の頼りを無くして途方に暮れたけど、なるようになるだろうと子供特有の開き直りで適当に歩きまわった。辺りが暗くなってきた頃に、運良く鹿威しがある場所からもう少し登ったとこに出れた。

 そこには、変死体で発見された殺人犯もいた。見ただけでヤバいと判ったそうだ。目は血走っていて、服装は何日も洗ってないような薄汚れ、ちょっとした動作でもわかる粗暴さだったそうだ。誰が見たってヤバい。

 怖くなって逃げ出そうとするけど、殺人犯の方が早かった。目撃者を消そうとしたんだろうけど、もっと速かったのがいた。

 ソレは2人の間に割り込むと、殺人犯を斬った。だけども、血なんかは流れずに殺人犯は倒れた。なにが何だか判らなかったけど、いきなり出てきて斬った奴は真っ黒でぼんやりと輪郭がわかるだけで不気味。

 ヤバい大人に襲われそうになる、ヘンナモノを見るというダブルアタックで涙腺は決壊し、泣きながら川にしたがって下山途中にジジババに保護された。その時には、いつもの鹿威しの音はまた聞こえるようになっていた。


 成人になった連中が集められた会合で酒が入っていたこともあって、その話は茶化されたけど、集めた時代が時代なら長老様とでも呼ばれそうな老婆が「そりゃあシシオトシだよ」なんて言うから場の空気が一瞬で凍った。

 シシオトシって、誰かの悪戯でシシオドシの濁点が消されただけじゃないの?って誰もがアイコンタクトを取る。当然、成人になった連中は全員そう思っていた。

 重々しく、老婆が成人にシシオトシの由来を話し始めて誰もが絶句。一言で言うと、あの山は落ち武者に呪われている。

 もっと詳しく言うと、落ち武者が今は鹿威しがある位置まで落ち延びたけど死にそうになったけど、子供が助けてくれて一命を取り留めた。

 しかし、大人は敵側の武者だったから子供諸共殺した。その際に、落ち武者は自分を殺そうとした大人達の四肢を傷つけてほとんどを再起不能にして絶命。

 それから、山に大人が入ると四肢の感覚が無くなったり、動かせなくなる怪奇が起きるようになった。不思議な事に、老人や子供はなんともないのだ。明らかにおかしいとされて、坊さんなどに依頼したら大人だと途中で邪魔をされてどうにもできず、老人だと最後までできなくて落ち武者の霊をどうにもできない。

 それで仕方なく、落ち武者の霊のご機嫌をうかがう為に鹿威しが設置されたそうだ。鳴っている間は、なんでも素振りや試し切りをしていて無害らしいが、大人が力場に入ると鳴らなくなって斬る構えをする。

 坊さんによると、山にいる物の怪や集まってく霊はその落ち武者にかたっぱしから試し切りにされているらしく、かなりを力を持っている。だけども、生きている人を直接は殺せないらしく、死の直前のように四肢を落とすのが限界だそうだ。

 しょぼいと思うかもしれないが、間接的には殺人犯のように殺せるそうだ。四肢が動かせないと、川に顔を突っ込んだら死ぬのは当然だ。その山で死ぬ大人は、ほとんどが落ち武者が間接的に殺されているそうだ。

 もう入るなと念押しされたが、そんな話を聞いて入る気など到底起きやしない。

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