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最初の村

「最初の村か」


 零夜の目の前には結構丈夫そうな木の門と、二人の門番らしき人物が立っている。門の上には《マルサ》と書いてある看板があった。


 たしかに読める…日本語ではないはずなのに読めるってなんか変な気分だな。とりあえず入ってみるか。

零夜が村に入ろうとすると、案の定門番に止められた。


「おい、そこの止まれ」


「なんでしょうか?」


「お前…その格好はなんだ?」


「え?」


 門番に言われて自分の格好を見てみると、着ていたはずの制服ではなく、真っ黒なタンクトップに下半身は真っ黒の鎧のような物を着ていた。


「なんじゃこりゃ!!ってか俺なんで気が付かなかったんだ!?」


 思わず大声を出してしまい門番二人が武器を構えた。


「驚かせやがって何者だお前!」


「今この村には我々、アルドラン帝国戦闘部隊隊長ガルム様直系第二隊が休息の為一時滞在している。お前のような怪しい奴を入れるわけにはいかない」


「アルドラン帝国直系………って長いわ!覚えられるか!」


「我々を知らんのか!?だからアルドラン帝国直系…「もういいよ!」」


 初っぱなからめんどくさい事になってきたな。大きな溜め息が出る。


「つまり我々がいる間この村の安全は絶対なのだ。この魔物だらけの砂漠を越えたきたお前には悪いが入れるわけにはいかん」


「つまりお前らがいなければいいんだな?いつこの村から出る」


「我々は訓練を終えて村に来たばかりだ。最低でも日が七回昇るまではいるだろう」


「日が七回…って事は一週間か」


 一週間なんてとてもじゃないが待ってられないな。腹減ってるし、どうすればいいか考えよう。


一・この門番を殺して村に入る

二・この門番を殺して村に入る

三・この門番を殺して村に入る


って駄目だ!!この方法しか思い付かない。だけど殺したらこいつらの仲間も殺らなければいけなくなるからな……野宿か。


「それにしてもお前よくここまで来れたな。並の冒険者じゃなければ魔物に食われて終わりだろう。武器も持ってないと見ると魔法使いか?」


 たしかに思えば魔物だらけだったな、一般の人だったらすぐ食われてただろう。


「いや、魔法使いではないんだけど…」


「それならどうやって…………ん?」


 門番二人が零夜の後ろの空を眺めている。


「どうしたの?」


 零夜も後ろを見てみると、遠くの空から何やらでかいのが飛んでくるのが見えた。


「あれは………鳥?いやいやデカイな」


 遠目で見ても鳥って分かるぐらいデカイ。怪鳥ってレベルだろう。


「おいおい………あれ《炎凰》じゃないか?」


「Aランクかよ!!しかも炎鳳だけじゃないぞ!」


 炎鳳の後ろから飛行系の魔物が次々と現れた。


「どうなってるんだ!急いで隊長を呼んでこい」


 一人の門番は村の中に急ぎ、もう一人は角笛みたいなのを吹いた。


「これは?」


「もし危険と俺達が判断したら、村人達にも分かるよう角笛を吹けと隊長に言われたんだ」


 すると村

から叫び声が聞こえたり、どうやらパニックになっているようだ。


「俺はここで足止めしなければ…」


 微かに門番の足が震えていた。それほどあの怪鳥は危険なんだろう。


「Aランクってのはそんなに危ないのか?」


「あぁ……隊長が全力で戦ってようやく勝てる相手だろう。しかし問題は炎鳳が率いている魔物の数だ」


 まだ距離はあるが少なくとも百はいる魔物が空を埋め尽くしている。よく見るとさっきの三つ頭の豚もいた。


「あいつもいるんだ」


「運よく《黒虎》はいないみたいだが」


「黒虎?」


「翼のある真っ黒な魔物だ。あの牙で噛まれたら即死だろうな、この砂漠の主のはずだが…」


 マジか…心当たりがありすぎる。


「ちなみにランクは?」


「Aだ。黒虎のいるこの砂漠に炎鳳はいないはずだが……」


「じゃそいつが死んだから炎鳳がやって来たってことじゃん?」


「なるほど…それならこの現状の意味が分かるな」


 分かって欲しくなかった!!つまり俺が虎を殺したから危ない事になってるのか。この事は隠しておこう。


「距離が近くなってきたな…」


 すると、門の中から青髪の美少女と筋肉ムキムキ男を先頭に兵士が続々とやってきた。


「隊長!!」


「現状は!?」


 隊長と呼ばれ反応したのはムキムキ男じゃなく青髪の美少女だった。


「そっちかい!!」


「今はまだ距離がありますが、ここに来るのも時間の問題でしょう…」


「休息中にこんな目に合うなんて……それとこの男は?」


 美少女が俺に気付き門番に聞いた。


「怪しい奴だったんで足止めしていました」


 俺が美少女を見つめると目が合い、何故か頬を赤らめ目をそむけた。


「そ、そうなの。じゃとりあえず中に避難させときなさい」


「分かりました。おい、早く入るんだ」


 門番にそう言われたが、零夜はその場に座り込み動こうとはしなかった。


「な、早く入るんだ!緊急事態だぞ」


 零夜の肩を掴み、立たそうとしたが全く動かない。


「いやーこの村の中にいても安全とは限らないでしょ?」


 その言葉に門番は手を離した。兵士達は微かに足が震えている。皆勝てるか不安なんだろう。門番が戸惑っていると隊長が零夜の前に来た。


「あの数でも私達は必ず勝つ!あなたも私達を信じて」


 美少女は全く怖じ気付いてなかったが、さっきの門番は全力でやって炎鳳を倒せると言っていた。あの数はさすがに無理だろ。


「さすが隊長さんだ。怖くないのか?」


 零夜の言葉に隊長は少し考え、そして零夜の目をしっかりと見て言った。


「怖くないと言ったら嘘になる。だけど私達がやらないと、私達がいる間だけでもこの村は守らなきゃならないの」


 隊長の眼差しは決して嘘を言っているようには感じられなかった。


「なるほどね……よし、分かった!」


 零夜は立ち上がり、村の方ではなく魔物の群れの方に歩き出した。


「ちょ!あなたどこに行くの!?」


「どうやらこうなったのも少し俺に原因があるみたいだし」


「それどういうこと?」


 兵士達は皆ざわつき、戦闘体制をとった。


「あなたが魔物を呼んだってこと?」


 隊長が剣を構え、ムキムキ男も巨大な斧を取り出した。


「いや、俺が黒虎って奴を殺したからあの炎鳳が来たみたい。やっぱ俺がいると、ろくなことにならないみたいだな…」


「あの黒虎を?」


 隊長も兵士達も目を大きく開け零夜を見ている。


「あぁ、だから俺が片付けて来ますからそこで見といて。あ、やっぱなるべく見て欲しくないけど」


「ちょ本気!?」


 隊長の言葉に耳を傾けず魔物に向かって仁王立ちをした。




 零夜と炎鳳達の距離がだいぶ近くなり、

その距離五十メートル程。


「ちょっと!大丈夫なの?」


 隊長と兵士達は不安でいっぱいなようだ。


「隊長さん大丈夫だよ。ちょっと試したいこともあるし」


「試したいこと?」


 地球にいたら絶対に出来ないこと、ここならやっていいよな……さっき虎を殺したときに急に記憶が蘇った様に思い付いた。なんだか昔使ったことがあるみたいだ。


 零夜は上空に手を広げる、すると魔物達の周りの空間が歪み、魔物達が入った透明な球体が出来上がる。


「デスフィールド改Ver.!」


 何か異変に気付き炎鳳が空中で静止する。しかし、他の魔物達はそのまま球体に突っ込み骨となっていった。


「え!?」


 隊長達は目の前で起こった事が理解できず、ただただ戸惑っている。


「あの炎鳳ってのは見えてるのか?なら…」


 零夜は両手をくっ付けた。すると球体も小さくなっていき炎鳳を骨とした。


「いやー恐ろしい力だ我ながら……見えないものほど怖いものは無いよね」


 自分の力に少し恐怖を覚えた

「あなた……今のは闇魔法?」


 恐る恐る隊長が近付き聞いてきた。


「闇魔法か……魔法じゃないね」


「じゃあ一体……」


「俺も恐ろしくなってくるよ。俺は死を撒き散らす存在だ……そして」


 隊長の持っていた剣を取り、自分の胸に突き刺した。


「な!!!」


 しかし剣を抜き取ると傷一つ付いていない。


「俺死ねないんだ……いちゃいけない存在なのに死ぬことも許されないって惨めだよな…」


 隊長に剣を返し、その場を立ち去ろうと歩き出した。



「ちょっとどこ行くの!?」


「もうここにはいられないだろ?力使っちゃったし、他のとこに行くよ」


 すると隊長が零夜を抱き締めた。


「えっ?えっ?」


 零夜は今の情況が分からなく困惑している。


「あなたはずっと孤独だったのね、心の奥底から寂しいと言ってる。いちゃいけない存在なんて言っちゃいけないよ?」


 隊長のその言葉に思わず涙が出そうになるが、隊長を離し後ろを向いた。


「俺の何を知ってるんだ……」


「知らない。あなたの事なんにも知らない、だから知りたいの」


「何を言って……」


「私と一緒に帝国に行きましょう!」


「は?」


 零夜は何故こんな危険な存在を帝国に連れていこうとするのか理解出来なかった。兵士達も騒いでいる。


「こんな危険な男を連れていくなんて!」


「何を考えてるんですか!」


 兵士達が騒いでいるとムキムキ男が咳払いをして兵士達を黙らした。


「隊長の意見に私も賛成です」


 その言葉な兵士達は驚いたが、もう騒ぐことはなかった。


「ありがとうデリアム」


「いえ、隊長の意見に従うのは当たり前ですから」


 いやいや俺行くって言ってないんですけど。とりあえず隊長達と村に入っていった。





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