第8話 引っ越そう
今回はすごく短めです…………。
ユウナさんから引っ越すと聞いて自分も何か手伝えることはないか聞いてみたところ、もうほとんどやることが終わっているらしく、自分の荷物は自分でなんとかしろの言葉しかもらえなかった。
とりあえず荷物はエナメルバックとその中身だけと思っていた。
だが忘れていた、俺は奴の存在を完全に忘れていた。
「自転車どうしよう………」
今俺がいるのは召喚された部屋である倉庫。
倉庫といっても道具類などは引越しによる片付けで一切なく、今は広いスペースを一人で使っている。
ユウナさんに聞いたところ引越しには馬車を使用する、まあ当たり前か、他に手段なんてなさそうだし。
とにかく馬車を使用するということは自転車は大荷物であり、この世界では珍しく、またとても精巧なもの。
容易に他人に見せない方がいいだろう。
だがなんとかして持っていきたい、他人に見られなければ結構な便利ツールである訳だし。
ここに置いていてこちらに利益がある訳もなし。
結局答えは出ず日が昇るまで俺は悩み続けた。
✝ ✝ ✝
さて、朝だ。
ほとんど寝れてないせいで頭がまわないし働かず、ただぼーっとしている目の前で引っ越し業の人達が荷物を持って忙しなく運んでいる。
これを見るとここは本当に異世界なのか?タイムスリップではないのかと思ってしまう。
なぜなら荷物を運んでいる人達全員が俺と同じ人間だからだ。
しかし、近くにいるエルフであるリイナ親子の尖った耳を見て、やっぱりここは異世界なんだと考え直すが、整形手術すれば可能じゃね?と思いついたけども、そもそもそんな技術はこの世界には存在していないだろうと結論を出す。
そんな事を考えていると引っ越し業の人が一際大きい、布に包まれた物を運んできた。
俺の自転車だ。
結局俺は朝にユウナさん達に相談して布に包み、他人には見られないようにした。
布の中身を見られる可能性なんてほぼゼロなのに、ヒヤヒヤしながら見ていると、どうやら俺の自転車が最後の荷物だったようで、全ての荷物を縄で馬車に括り付ける作業に入っている。
長年この仕事をしているらしく一連の動作に無駄がなくとてもスムーズに進み、みるみるうちに終わっていき、ものの数分で何時でも旅立てる状態になっていた。
こういうのを職人技と言うのだろうか、感動を覚えてしまう。
「それでは出発致しますので、皆さんお乗りください」
御者台に座った人がリーダーのようで、声をかけてきた。
皆乗り込んで、いざ出発!
ゆっくり進んで行く馬車の中で、この旅に期待が募る一方で俺は一つの疑問が出てきた。
あれ、この旅って何日くらいかかかるのだろう?と。
目的地が見えない馬車の中で俺はこれからの苦痛に苛まれるのだった。
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