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第3話 しつけ

 完全にぶち切れている。

 怒っている顔はまさに鬼の形相のだ。

 いや鬼の形相と言うより、鬼の顔にしか見えないな。

 真っ赤な顔もあわせてとても似ている。

 そんな顔のまま、さっきまで話していた奴を先頭にこちらにずんずんと近づいてくる。


 しばらく歩いたところで、相手の足元を踏み外し俺とリイナの視界から消えた。


 ドスンという音がして5人全員が落とし穴に落ちた様だ。

 ちなみにこの落とし穴は、俺が落ちたような無機質なものではなく、ちゃんとした古典的な落とし穴だ。

 だいたい縦20メートル横10メートル深さ10メートルといった巨大なものだ。

 というかよく考えたら、子供向けのモンスターバトルアニメの○ケット団はたった数時間でこれくらいの規模の穴をほぼ毎回掘ってるってのはすごいよな。

そういえば最近は、ポケ○ン見てなかったな…。

 こんなものに落とされたら、全員が肩車をして筋肉質の奴がそれをたどってジャンプしてもぎりぎり地上にはとどかないと思う。


 もしとどいたとしても一対一なら勝てる見込みはあるし。


「どうなってかな…っと」


 穴の中の様子を上から覗いてみると全員が全員尻餅をついて痛がっている。

 とりあえず相手が何かしらの行動を起こす前にこちらが先に行動を起こさないといけない。

 小走りでそこから離れて、用意しておいた網をリイナをいじめている奴等全員にかかるように穴に落とす。


「リイナ、頼む」


 次にリイナに向かって声をかけ、魔法を使うように指示し、集中している様子を確認してまたすぐに小走りで布をかぶせて隠しておいたもう一つの穴を出して、もう一度不良グループ(なんか一番しっくり来たので以後こう呼ぼう)の方に向かい今度はそちらに声をかける。


「は~い、注も~く!」

 手をパンパンとたたき、不良グループの視線を集中させる。


「リイナ、やってくれ」

 リイナのほうに向き、もう一度指示を出す。

 リイナは頷き、魔法で作った水をもうひとつの穴の方に入た。

 

 ザッパーン!!


 小さな穴のほうに溢れんばかりの水が注がれ盛大な音がする。

 突如、俺の左下の方からも水の音がする。

 二つの落とし穴の壁と底を小さな穴で貫通させ水が通るよう工夫したから、人がいる方の穴にどんどん水が溜まっていき、それと同時にいじめっ子メンバー顔がみるみる恐怖の色に染まっていく。


「ここは人通りのあまりないところ、穴にどんどん水が入っていき、日が暮れるまでには水は満タン。

そしてここには、そっちを助けることができる人(詳しくは人一名、エルフ一名だけど)が二名。

そしてこちらは、そっちにいじめられている奴が一人。

こちらにはこちらの要件があり、そっちにはそっちの要件がある。」


 ふぅ、と一度息を吐きもう一度吸う。


「さてここで問題です。早くしないとそっちは死ぬ。そっちがこちらの要件を呑んでくれればこちらはそっちを助ける。

 さあ、どうする?こちらの要件を呑むか、それともここで死ぬか…」


 ニィ、っと悲惨に笑う。


「そっちの言うことなんでも聞くから!!だから助けてくれ!!」


 決断早っ!

 さすがに早いよ!!

 もうちょっとぐらい根羽ってよ!!


 必死にそう叫ぶリーダー。

 涙を眼にためている。

 他のメンバーも同じ事を思っているのか、コクコクと頷いているだけ。

 皆一様に心に傷を負ったようだ。


 まぁ、いい気味だな。


 可愛い子をいじめる奴は、こんな眼にあって当然!

 そして、これよりひどい目にあってもらうぜ!!


「はいは~い、いいですよ…っと」


 そう言いながら、また準備していた板を小さい穴の方に放り込む。

 準備は万全だ。


 ポチャンと音がし、水が止まる。

 だが、大きい穴には水は全員の胴が浸かっている、網はかかったまま。

 今はそれを何とかする気はないので無視しておく。


「まず一つ目。……これ以上リイナをいじめるな」


 不良グループに見える様に右手人差し指を突き出す。


「…わかった」

「ならこれでお前らを許してやる」


 不良グループの顔が安堵によって緩む。


「次に二つ目」


 右手中指を突き出す。

 不良グループの顔を一人ずつ見ていく。

 さっきよりちょっと顔が強張っている。


「…なんだよ。さっさと言えよ」


 嫌な感じに勘付いたのか、くすんだ金髪、空色の眼の奴が言ってくる。


「じゃあ言うけど、…お前ら俺の下僕になれ」

「「「「「はぁ?!」」」」」


 リイナを含めた全員がびっくりとしていた。


「だってお前さっき『何でも言うこと聞く』って言ってたし。ここでこの条件を飲まなければならない立場だってのは、全員分かっているんだろう?」


「でもさっき『許す』って!だからさっさと出してくれるんじゃなかったのかよ!」


 戸惑いながら一人こちらに訪ねてくる。


「俺が言ったのは『許す』とは言ったが、『そこから出してやる』とは言ってないぞ」

「そんなの卑怯だ!!」


「卑怯とは言われてもな、そっちだって散々ひどいことをリイナにしてきただろう?

そもそも、最初に突っかかって来たのはそっちなんだろ?しかも、悪いのはそちら側だ。なのにこちらが卑怯だと?そんなことを言う資格はお前らにはないのに。

 そもそもよく考えてみろよ。

 リイナは非の打ちどころのない可愛いくていい子だ。そんな子供が村中を歩いて『私はいじめられている』と言い回れば、誰もがリイナを信用するだろう。今までそういうことをしなかったのは、一重に恥ずかしかったからだそうだ。

 また、親には心配をかけたくなくて今までお前らがしてきたことは言っていないそうだ。村を一緒に周ってくれる友達もいないらしかった。

 だから恥ずかしい。

 だが、今は俺がいる。

 俺がリイナと村を回り歩いてやれば、それも解決だ。


 っと、ちょっと話がそれたな。簡潔に言う。村の人間に今までの行いをばらされたくなかったら俺の言うことを聞け。それが嫌なら、ここで死ね」


 出来る限り事務的に平坦な口調で言い終える。

 緊張とこんな感じで良いのかという不安が顔に出ていないか、ちょっと怖い。

 どうやら、相手の顔を見る限り大丈夫そうだが。


「…分かった、お前の下僕になろう」


 結局、リーダーは即決。





 そういえば、10人にいじめられてた、とリイナが言っていたが、残り5人は?



 あと、こいつらの中で話したのは、2人だけだったな…。

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