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第2話 いじめ

 え~~~~~~~

 そんなことに、いちいち魔王を呼ぶのかよ……。

 しかも、もしそれで本当にそれを魔王がやっちゃったら、近所の子供どころか村全体が死ぬよ……。

 分かっているのだろうか?

 一応聞いておこう。


「あのさ、魔王なんか呼んじゃったら、近所の子供を懲らしめるどころか、村の人全員を殺されることになっちゃうよ?

 分かってる?」


 少女は困ったように答える。


「……え、そうなの?じゃあ、私もあなたに殺されちゃうんですか?」

「いや、だから俺は魔王なんかじゃないって…。ごくごく普通の一般庶民だって…。」

「じゃあ、どうしてあなたは召喚されたんですか?」


 それは、俺が知りたい…、そして俺が聞きたい!


「そもそも俺はここに来てからまだあまり時間がたってなくて分からないことが多いんだから、何も知らないんだって。とりあえずいったん整理するためにこちらから質問させてもらう。いいね?」


女の子は承諾を示すであろう、首を立てに振った。


「まず名前は?」

「リイナ・ティアイノア」


 良い響きのする名前だ

 …………まて、これはまるでキザだ、言わないでおこう。


「じゃあリイナ、次に魔王を召喚することは、どうやって知った?」

「本で読んだ」


 なんとまぁ、そんなことを本に記していいのだろうか?


「その本には、魔王召喚についてどれぐらい詳しく書かれてた?」

「ええ~とっ、召喚に必要な道具と陣と呪文……あと効果、かな?」


 結構、具体的だな。


「手順を間違えたりした所は?」

「陣を書くために必要な術者の血を、そこら辺にあったとにかく赤いものでなんとかした……ってところかな?」

「それだろ!!」

「えっ?」

「それだよ!それ!どう考えたってそれしかないだろう!

血とか、一番必要そうなアイテムじゃん!それを適当にそこら辺にあったものに換えたら、そりゃ魔王なんて、出てくるはずがないよ!」


 やばい、思わずツッコンでしまった。

 そもそも、そんな間違い魔術なんて知らなくても分かるぞ。


「……まあいい。他に間違った箇所はないか?」

「あとは、もうないと思う…」

「オーケー。で、子供を懲らしめてほしいんだよな?」

「はい…」


 どうやら、どうしてそんな質問をしてくるのか分かってないようだ。

 そういえば、耳が尖がっているって事は、エルフか何かだよな。

 つまり、異種族へのいじめか…。

まあ、差別によるいじめなんてどこの世界でもあるものだな。肌色とかじゃなくて種族による差別なんて始めて聞いたことなのだけれど…。



「そいつ等の年齢と、あと階級は?」

「私と同い年ぐらいで、階級?は全員農家ですけど……あの~何でこんなこと聞くんですか?」

「そりゃあ勿論、そいつ等懲らしめるためだけど?…あっ、あと、いじめてくる奴らの人数も教えてくれる?」

「はぁ…全員で10人ぐらいです…。」


 リイナは呆気にとられながらもちゃんと答えてくれた。

 そういう性格なのだろうか?


 というか、10人ぐらいの中学生にいじめられてんのか。

 とりあえず、質問を続けるか。


「次に、魔法は使えるか?」

「はい…」


 よし!この世界に魔法があることが確定した!


「どれくらい?」

「だいたいの魔法はそこそこ使えます。」

「水を大量に出すことも?」

「出来ますけど…」

「それと一緒に鉄を少量でも良いから出せるか?」

「頑張れば…」


 俯いている。どうやら軽く自信がないようだ。


「じゃあ最後に、網とシャベル広い場所、すべてある?」

「ありますけど……。いったいなんでこんな質問するんですか?何をするつもりなんですか?」

「だから、ガキを懲らしめるためだ」




 ✝ ✝ ✝



 そんなこんなで人気(ひとけ)のなさそうな広い場所。

 簡単に言うと、この場所でガキ共をおとしめる。“懲らしめる”ではないのがみそだ。

 準備には2日もかかったが、いや2日しか(・・・・)と言うべきで、実際ならもっとかかっただろうから嬉しい誤算だ。

 もうひとつ嬉しい誤算があるが、今は言わないでおこう。


 標的も来たようだしな…。


「ったくなんだよ。こんなところに呼び出して」「何の用なんだ?」「面倒くさいなぁ…」等々。

 そんなことを言いながらこちらに近づいて来ている男約五名。

 長身で筋肉質の奴がひとり、さらに筋肉質で目が釣り上がっている奴が一人、のっぽでやや筋肉質な奴が一人、子供特有のくりっとした目をしている奴が二人。

 髪と目は順に、薄い赤髪濁った赤眼、くすんだ金髪に空色の眼、茶髪にブラウンの眼、黄緑の髪に黄緑の眼、藍色の髪とブラウンの眼。

 計五人がこちらに歩いてくる。  


 こちらの段取りのため一時止まってもらおう。


「そこからは、危ないぞ。」

「なんだよ、うるないな」


 むっ、忠告してやったのに(まぁ、計画のためだけど)、判断材料にする気ゼロだな。


 まあどうでもいいか。

 そのまま、男、と言うには若いか。少年たちは真っ直ぐこちらに向かってくる。


 よく見たら、少年ではなく青年というにふさわしい奴が2人もいるし、第一次性徴真っ只中の奴ばかりだと思っていたからびっくりだ。

 だが実際、どれだけ体格がよかろうと年下のガキに手を出す思考と行動が一緒な馬鹿であれば関係ないので、冷静でいられる、パニックになったりすることは断言するがない!

 まだしも、同年代または、年上相手に喧嘩を売り、さらに勝算があるこの状況に興奮を覚えているくらいだ。


 そしてこれもどうでもいいか…。


 一応武力で解決する前に、話し合いを持ちかけておこう。

 …建前(たてまえ)だけ


「この子をいじめているらしいな」


 そう言って隣のリイナを指す。


「そうだが、それがどうした」


 さも当然のように一番の年長者が言う。

 嗚呼、殴りたい!正直言って殴り飛ばして宇宙のもくずにしてやりたい!


 あといじめていることに自覚があるんだな…、酷い事にかわりはないけど。


「じゃあこれからはいじめるな、いいな?」


 途端に相手の顔が険しくなる。


「お前、誰様のつもりなんだ?見ない顔だし、どこの家のもんだ」

「家はこの近くにはないが、今は一応リイナの家に住まわせてもらっている、何か問題でも?ああ、それともあれですか、嫉妬?自分が彼女がいないからって、はっ笑えるな」


 最後に相手と目線を合わして、目と鼻で笑う。


 いじめをしているやつって大抵プライドだけは一人前だからな。

 これで相当プライドが傷ついただろう。


 ぷちっ



 やばい、堪忍袋の尾が切れたような音が聞こえたような気がした。




 幻聴だと、嬉しいな☆

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