第18話 狼を捕まえろ①
話が全然進まない……
さて、まずはジルのところが至急を要するようなので、そちらに行くことにする。
すでに狼共が相当目立っているため、これ以上目立たないようにチート能力をあまり使わないように気をつけながら、三分と掛からずに、頭を抱えて小刻みに震えながらうずくまって怯えているメイド(?)服を着た少女とその少女の周りを駆け回りつつ尻尾を振って吼えているジルを見つた。
ちなみに吼えている内容は大体はこんな感じだ。
『おねーちゃん、おねーちゃん!』『遊ぼ!遊ぼ!』『かまってかまって!!』『どうしたの?!何してるの?!』
お前はちっさいガキか!と問いただしたいような内容しか言っていない。こんな不思議空間が目の前に広がっていたために足を止めて観察してしっまていた。
そんなことは一切知らないメイドさんは「どうしてこんなところに魔物が…」とか「怖いよ……だれか助けて…」とか小声で言っており終いにはポロポロと泣き出してしまった。
流石に見ている場合ではなくなったので急いでジルを取り押さえに掛かる。俺が近づいてきたことに気づいたジルが逃げようと俺に背を向けて走り出そうとしたが、俺のほうが一段速かったために、逃げられる前にジルの背の皮を掴んで捕まえることができた。
そのままの状態で土下座する勢いで戻って、実際に土下座して謝った。
「すみません、すみません、すみません!こいつがとんだご迷惑をかけてお掛けしてしまい本当にごめんなさい!こんなことは金輪際一切合財無いようにするので許してくださいお願いします!」
『痛い痛い痛い痛い!頭がへこむ!頭がうもれる!頭がつぶれるぅ!』
ぶっちゃけて言えば、今の俺は自分でも何を言っているのか分からないくらい混乱していた。だって、女の人の涙なんてこっちに召喚されたときにリイナのを見たくらいで、それよりも前となるとリアルで見たのは小学校以来見た覚えなんてないし。そしてジルの言葉は無視だ、こいつはこの痛みを以って反省するべきだ。ついでに捕まえていられるので一石二鳥だ。
少女の方は、人がパニックになっているとき、それ以上にパニックになっている人を見ると冷静になるということに当てはまるらしく、だんだんと泣き声が小さくなっていき、やがて完全に泣き止んだ。
「とりあえず、顔を上げてください。私は大丈夫ですから」
許可を得たので顔を上げて立ち上がる。この際ジルは両足で挟んで逃がさないことを忘れない。
顔を上げたときに見た彼女の目元は赤くなっており、先ほどまで泣いていたのがよく分かってしまい、罪悪感が出てくる。
「本当に大丈夫?どこか怪我はしてない?」
「大丈夫ですよ。どこも怪我なんてしてませんし、痛むところもありません」
「そっか、それならよかった」
お互いに笑いあってみると、少女はとてもかわいらしいと思えた。
年齢は十代後半だろうか。容姿はボブショートの茶髪とそれと同系統の瞳の色は少女を全体的に明るく、そしてやわらかく見せ、体格も痩せ過ぎず太りすぎず、身長も150センチから160センチの間で平凡と言えなくはないが、声をかけやすく話しやすい印象を与えてくれる。ただ、髪や肌の手入れが行き届いていないのか、所々荒れてしまっている。
「でもただ謝罪だけで終わりっていうのは、ちょっと失礼だから何かお詫びしたいんだけど、何かしてほしいことはある?」
「お詫びですか?特にこれと言ってしてほしい事はないですね」
「特に無しか……。だったらちょっと目を瞑ってもっらてもいい?」
「何をなさるおつもりですか?」
急に少女が顔を険しくして警戒しだしてしまった。もしかして何か変なことをされると思ったのだろう。
「大丈夫、危害を加える気はないよ」
できるだけ相手を安心させられるような笑みを浮かべるように努めると、未だに警戒しているようだが、渋々と言った感じで目を閉じた。
目を閉じてもらったことを確認してから、少女の後ろにまわって彼女の髪を手にとって最大限気を落ち着かせる。髪を手に取った瞬間に少女の体がビクッとなったが未だに何もされていないので、一応警戒している程度だろう。
これから俺がやろうとしていることは、RPG風に言うと治癒魔法といったもの。
もちろん、少女が怪我をしていないというのは聞いたし、嘘でないと思う。なら何故治癒魔法を使おうと思ったのか、理由は簡単で彼女は怪我こそしていないものの、髪や肌にはダメージを受けているのだ。
よく、シャンプー・リンス・トリートメント等のCMで髪がダメージを受けているイメージ映像を思い出し、ダメージを受けているのならばそれを治癒すのことは可能なのではないか?と考えたのだ。
だいぶ気分を落ち着かせることができたので、魔法を使う。
「『我が手は全ての傷を癒す魔法の手』」
今回は何となく詠唱してみたが、次回からは急を要するときと、周囲に人がいないとき以外は絶対にやらないようにしよう。厨二病臭いし恥ずかしいしで、俺の顔は今真っ赤に染まっている。
俺の後悔はともかくとして、魔法の効果はしっかりと発揮して手が、淡く緑に発光しだし、手櫛をするとさっきまであったような抵抗がなくなり、ごわごわしていたとは思えないほど髪の毛はサラサラになっていた。
数分後、そこには髪の毛サラサラ、肌は艶々の綺麗な女性が立っていた。
一応断っておくが、彼女の身体には髪の毛以外触ってないぞ。効果範囲を広げて身体の方はいっきにやりました。
大学生活始めました。
始まって一週間で講義で寝てしまいました。
そろそろ紙に書いたストックがなくなりそうでやばいです。