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第15話 現実離れ

 その門は鉄で出来ているみたいで、門自体は黒く頑丈そうで厳重そうな感じだ。

 どれだけ頑張って押したり引いたりしても、ビクともしなさそうだ。

 奥にあるお屋敷も今まで見たこともないような大きい建物だし、現実離れしている。


 馬が急にいななき、荷馬車が止まって、慣性の法則に従って荷馬車に乗っている人が少しだけつんのめる。

 特に馬車そのものに慣れていない俺は他の皆よりも少し、ほんの少しだけ盛大に倒れそうになったのだが、誰にも気付かれていないようだ……よかった。


 ドンッ、と言う音が背後でしたので何か荷物が落ちたのかと振り返って見てみると、おっちゃんが荷馬車から降りて門番のところに歩いて二・三言会話してすぐに戻ってきた。


「おっしゃ!今から屋敷の中に入るから無礼なことすんなよ!」

「「「了解!!」」」


 ガテン系の野太い特徴のある声がハモリ、その声がまるで暗証コードのように門が開いた。

 本当に門は前にも後ろにも開かず、横に開いた。

 所謂、引き戸、日本の障子や襖のように横スクロール。


 あれ?でも引き戸って日本の寝殿造りが元になっているんじゃなかったっけ?

 こんなまだ世界のほとんど全ての国が発展していないような世界で、そんな文化が輸入されるだろうか、いや、どう考えてもおかしい。


 なら独自の方法で開発したのか?


 はぁ、判断材料が少なすぎて何も分からん。

 でもってこのことは別に調べようが調べまいが俺には何も関係ないし、生活に支障をきたすわけでもない。

 それに世界の真理を突き止めたいとか、下手に政治とかにも関わりたくもない。


 リイナを守ってさえいれば、とりあえずの食い扶持は稼げそうだし。


 おっと、もう屋敷の玄関に着いたようだ、でかい庭だったから物思いにふける時間がかなりあったようだ。


 あれ?玄関に誰か立ってる、誰だろう?


 玄関には髪は銀髪で、赤い目をしていて、さらには口周りにヒゲを蓄えて、厳つい顔に厳つい表情のおじいさんが玄関に立っていた。

 気になってもともとここに住んでたリウスさんに聞こうにも、緊張しているのか顔が強張って聞けそうにない。

 諦めてユウナさんに聞こうと思ったが、こちらもリウスさん程ではないにしろ若干緊張している様子で話しかけれそうにない。

 仕方ないのでおっちゃんに小声で聞いてみる。


「はぁ、仕方ない。本っ当に仕方ない……おっちゃん、あの人誰?知り合い?それとも執事さん?」

「何で二回言った?!精神的ダメージが割り増ししたじゃあねえか!」

「大事なことなので」


 ちなみに俺達は終始顔を近づけて話しているため話をしていることは周囲は分かっても、何を話しているかまでは分からないだろう。


「で、結局あの人誰なんですか?」

「ばッ、お前“あの人”とか言うな!“あのお方”とかもっと丁寧に呼べ!あのお方はなぁ────」

「ただいま戻りました。お父様(・・・)


 おっちゃんの続きの台詞はいつの間にか馬車から降りた、リウスさんに取られてしまった。


 え?ていうか、この人リウスさんのお父さん?全然似てないんですけど?

 片や優しい笑顔の似合うリウスさん、片や厳つく怒った顔の似合うリウス父。

 とてもじゃないが血が繋がっているとは思えない。

 養子とかそんなことを言われた方が、まだ信じれるレベルだ。

 性格も似てなさそうだし、いったいどこをどうやったらこんなに違うんだろう?


「ふむ、よく帰って来たなリウスよ。……それによく来たなユウナ殿」


 リウスさんの名前を呼ぶときには怒りをできるだけ隠して、ユウナさんの名前を呼ぶときには怒りをほとんど隠そうともせず、威嚇するように圧力(プレッシャー)を増やして、呼んだ。


「お久しぶりでございます、セデレッシュ様」


 今度はユウナさんが音も無く荷馬車から降りて、リウスさんの父、つまりはセデレッシュさんに今まで見たことのないようなすごく畏まって綺麗なお辞儀をした。


「挨拶などいい。それより儂の孫はどこにおる?」


 ユウナさんの挨拶を一言で一蹴し、『儂の』と言う、まるで孫は自分の所有物であるかのような発言にイラッとしたが、自らの孫を目だけで探していたセデレッシュさんにおもいっきり睨まれ、すぐにそんな気持ちは萎んでしまった。

 しかし睨まれていたのも一瞬で、すぐに雰囲気が柔らかくなった。

 何事かとセデレッシュさんをよく見れば、その目は俺を見てはなく、彼の孫にあたるリイナを見ていた。


 見られているリイナは、俺の背後に周りセデレッシュさんの視線を阻害しようと試みており、他人から見れば何とも微笑ましい光景ではあるが、当人である俺にとってはセデレッシュさんの視線をモロに受けて居心地悪いことこの上ない。

 しかもリイナが俺を盾にするというのは俺の主観であるからして、客観であるところのセデレッシュさんからしてみれば、俺はリイナに抱きつかれているように感じられるだろうことを安易に想像できる。


「貴様、名前は?」

「紺、といいます」


 完全に敵として見られているため、緊張して早口に手短に伝える。

 

「コンか。で、貴様はリイナとはどういう関係だ?」

「いえ、別にこれといったk──────」

「コンとあたしは特別な関係だよ!」


 リイナの一言でその場の空気が凍った。


「ちょっとぉ?!リイナさん?!何言ってやがりますか!そんなこと言ったら絶対に勘違いされるだろうが!!」

「でも、間違ってないよ?」


 ああ、そうだよ、それが問題なんだ。

 言っていることは合ってはいるが、言葉を選んでもらいたい。


「ほう………、それはどういうことかね?」


 ほらぁ!!こう言って勘違いする人が出るからさあ!!


 これからどうしよう…………取り敢えず、現実逃避でもしようか。



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