『狐の侍のプレスマンの刀』
掲載日:2026/07/21
ある峠の茶屋に、お侍が立ち寄りました。ごく小さな茶屋で、おじいさんと孫娘で、お茶と漬物くらいしか出せない小さな茶屋でした。おじいさんがお茶を用意して、孫娘がお客さんに給仕をするのですが、そのお侍は、何というか、おかしいのです。目は狐目ですし、しっぽが出ていますし、座るときに抜いた刀はプレスマンですし、要するに、化け切れていないのです。しかし、孫娘は、お客さんを見かけで判断するような失礼な感覚は持っていませんでしたので、お茶の前に洗い桶を持っていって、どうぞ足をお洗いなさい、と勧めたところ、狐の侍は、洗い桶をのぞき込んだ自分の顔が、化け切れていないことを知り、笑いながら何も飲み食いせずに立ち去りました。
それ以来、いろいろなお侍が茶屋に立ち寄り、孫娘に、かんざしやら紅やら、どこかから盗んできたような土産物をくれるのでした。
教訓:相手の失敗をことさらにあげつらうのはよくない。流せるものは流したほうが穏便に事が済む。




