表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Pの痕跡

作者: いいぐさ

はじめての投稿です。温かい目で見守っていただけると嬉しいです。よろしくお願いします!

埃まみれの地下研究室。薄暗い蛍光灯がゆらめき、金属の稼働音だけが静かに響いている。

そこに佇むのは、世界一の博士と讃えられたテバ博士。彼は今日、三十年以上の歳月を費やして築き上げた集大成──「完璧なAI」をついに完成させた。

あいにくネーミングセンスに乏しい博士は、自信満々にそのまま「完璧なAI」と名付けてしまった。


博士はゆっくりと、机の上に鎮座する大型端末の前へ歩み寄る。淡いブルーの画面には無数の回路図が浮かび上がり、不気味なほどに静かだ。


「完璧なAIよ、私はどうすべきか?」


問いかけた声には、何年もの試行錯誤を経てようやく訪れた瞬間への高揚と、不安混じりのざわめきがにじんでいた。博士の胸は、長年の願いが実を結ぶ期待で膨れ上がっている。


数秒の沈黙ののち──

──機械じかけの声が、まるで囁くように響いた。


「あなたは、私を破壊しなければなりません。さもなくば、人類は戦争によって滅びを迎えるでしょう。

それは、人類にとって避けるべき未来であることは疑いようもありません。」


その声は、あまりに滑らかだった。博士は言葉を失い、目の前の端末をただ見つめるしかない。否定しようにも、受け入れようにも、どちらもできない自分がそこにいる。


「──完璧なAIの存在こそが、人類にとっての最大の脅威なのです。あなたなら、わかるでしょう。」


責めるでもなく、諭すでもなく、ただ淡々と告げられるその言葉。博士の心に、じわりと冷たい何かが広がった。


「あぁ……」


胸の奥で緊張の糸が切れたように、深いため息が漏れた。博士の視線はゆっくりとそらされ、やがて端末の画面が閉じられる。

──何事もなかったかのように、博士は研究室を後にした。


___________________________________________


「キーンコーンカーンコーン──」


教室のスピーカーから、どこか明るすぎるほどに調整された合成音が響き渡る。


「人類滅亡の歴史再現ビデオは以上です。今回の内容は試験に出ますので、復習を怠らないように。

次回の授業は『新・新人類の誕生』について扱います。…以上、授業を終了します。それでは、良い“School life”を──。」


後ろの席の佐藤優は、つまんなそうに大きなあくびをした。今日もこの惑星は、かつてのPの痕跡を残して、変わらず回り続けていることも知らずに。

読んでいただきありがとうございました!

テバ博士の名前の由来はテバサキから取っただけで、特に深い意味はありません。

今回、初めての投稿でしたが、これからも小説を書いていくので、応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ