〜裏切られた一幕〜婚約者の乗った海上船が行方不明になったので探し当てたら女性と赤ん坊も一緒に現れた!これからも慰め合ってれば
婚約者が行方不明となって一年半経過した。
その間、捜索の資金を投入して必死に探した。
もう死んだと他の人達は言い。
次々と捜索を打ちきり、他の人と結婚なんかしたりしていたが。
シャイラだけは生きていることを信じて必死に資金を投入して範囲を広げた。
そうやって更に二ヶ月経過したとき、見つかったとの報告。
二ヶ月で更に上乗せされてしまうお金がこれ以上消費するのも嫌だと、シャイラ以外の人はもう捜索を打ち止めしていた。
しかし、漸く行方不明となった婚約者が見つかった。
直ぐに飛んでいくと、そこには気まずげな男と女、それに一人の赤ん坊がだっこされていた。
(……は?)
いや、本当には?である。
婚約者の男は辿々しく名前を呼んで、久しいなと言ってくる。
取り敢えず、再会の場に関係のない女が居ることを指摘する。
(は?)
「彼女は、私の子供を生んだ人だ」
もう一度言えと言うと、二度目の台詞がコレ。
頭が真っ白で、二分ほど思考停止して、やがて思考が溶けていく。
「………………はぁ?」
三度目のは?はドスの効いたもの。
更に縮こまる女と男。
聞けば、無人島に遭難して半年。
もう帰れないのだ、と悲観する女を慰めているうちに生まれたらしい。
誠にアホらしい。
たった半年でか。
二年、三年とかならまぁ仕方ない。
シャイラも捜索を打ち切るくらいには。
でもさ、半年ってなに?
アホかこいつら。
何度でも思う。
「ということは、私との婚約は破棄ですね」
シャイラは冒険者だ。
お金も相当持っていたので捜索もして、遭難した人たちを見つけられた。
諦めずに待ってたのに。
なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ!
憤怒で顔が歪む。
ああ、そう。
ふーん。
あーあ、ならもう良いか。
「本当にすまない」
「良いですよ。別に。あ、これ。捜索費と慰謝料です」
魔法で契約書を出せば、さっさとサインさせる。
罪悪感があるのか、男は内容も見ずにサインする。
紙をコピーして渡す。
「さようなら」
地獄へ落ちな、と内心吐き出して外へ出た。
その後、捜索を手伝ってくれた友人のプロフェスのところへ行き、事の些末を話す。
すると、そいつは酔ってたんだなとぱっくり言われる。
分かってるっての。
そいつは酔ったんだ。
悲観にくれる主人公ぶって。
「高額な慰謝料と高額な捜索費を契約書で結んできた」
夜逃げしても、毎月決められた金額を引き落とされるシステムだ。
因みに、個人で引き落としたのでシャイラの任意で金額を変えられる。
変なことを言ってきたら、金額を引き上げられるシステムだ。
「そうなると、結末は変わってくるな」
「あいつは赤ん坊と妻を背負ったまま、既に死亡扱いになりかけていた仕事にも復帰出来るか微妙だし、雇われても安いところだろうし」
赤ん坊を育てるのもお金がかかる。
しかも、無人島にいてブランクもある。
おまけに、捜索を最後までした婚約を裏切り子供を作り浮気。
色々終わっている。
プロフェスはふふ、と笑って元気を出せと言ってくれる。
探すのを手伝ってくれたのにこんなことになってすまないと謝った。
後日。
契約書が効果を発揮して、引き落としされたり、実質高額な借金に気がついた元婚約者がどの面を下げたのか、会いに来た。
勿論、速攻弁護士を呼んだ。
どうして二人きりで話せないんだ、という台詞にもう婚約者じゃないからだと突きつけたら、ショックを受けていた。
減額は受け付けねぇぞ、と言いきると子供が居るんだと恥ずかしげもなく言う。
「私という、婚約者が居ながら出来ちゃった子供のことを言ってるのなら、帰ってくれる?」
弁護士がこんこんと、システムについて説明する。
「そんな!生活出来なくなる!」
「贅沢しなければ生活出来る」
弁護士はプロフェスだ。
プロフェスは賢いから、色んな資格を持ってる。
今回も直ぐに来てくれた。
「酷いと思わないのかい」
「貴方こそ、私を裏切ってなんとも思ってないみたいだね。たった半年で!理性無さすぎじゃない?」
「これ以上なにか言うのなら、名誉を毀損したと金額を上乗せするが、良いのか?」
プロフェスが男を追い払うためか、言い募る。
男は怯んで、また来ると引き下がる。
もう来なくてよろしい
やれやれ、と二人で息をつく。
「お前がどんなに大変だったか、あいつらに見せてやりてえな」
「本当にね。周りの人は打ち切ったし。私がやらなければ、帰ってこれなかったのに」
赤子に罪はない、けれど、親には罪がある。
婚約者を裏切ったという。
支払わなければならぬのだ。
帰ってきたら赤ん坊が、なんて、これなら捜索しなければ良かった。
結局帰ってきてもよいことなどない。
「疲れた」
「甘いもん食いに行くぞ」
プロフェスと食べに行って警備という名の魔法を使い、日夜来る元婚約者の男を追い払う。
一々相手をしていたら、神経が切れそうだ。
というか、働いて返せば良いのに。
一応一生働けば返せる金額だと思う。
それでも使った分には到底及ばない。
これでも、払える金額を計算して減らしたのだ。
あの女との関係は、自己申告なのでもっと早い段階で及んでいた可能性もある。
最早、信じる意味もない。
どこにも信憑性がなく、信用も落ちに落ちている。
元婚約者をあしらう日々に、違いが生まれた。
元婚約者の女が現れたのだ。
なぜ?
プロフェスを弁護士として伴いなにようだと聞くと、借金をどうにかしてもらえまいか、という気が可笑しいことを述べられる。
減額とかなら分かるんだが、どうして無くす方向にシフトする?
「なくすって、なんでなくすんですか?」
「貴女は彼を探すために、捜索したのでしょう?」
「ええ。その結果、バカで脳みそが溶けたような女と子供をもうけていましたが」
鼻で笑って当て擦る。
女は一瞬悲しげな顔をするが、そんな顔をする権利があると思ってるんですかねぇ。
「被害者ぶるのなら帰って貰いますか?本当の被害者の私は忙しいんです」
「あ、お願いします!どうか!」
「え?金額をあげてほしんですか?仕事熱心ですね」
にっこりと笑って脅す。
びくりと肩を揺らす女は、後退り最後にはこそこそ去っていく。
このままでは、あの女どもに日々アタックされる。
警備の人に頼んで命令を出してもらう。
あの二人はとっても肩身が狭くなるが、自業自得だ。
素直に身を粉にして働いていれば、なにもしなかった。
被害者ぶって、減らしてくれだなどと宣うのが悪い。
シャイラは所謂、町の貢献者なので直ぐに警備も動いてくれて二人は来なくなる。
あと、プロフェスが二人が婚姻出来るように手配して、迅速に夫婦にさせた。
離縁が出来ないようにしておいて。
子供に関しては、手元に残すなりどこかへ預けるなりで緩めておく。
子供にまで負わせるのは違う気がしたから。
それから一年後、どこかへ引っ越すにもお金がなくて引っ越せない裏切った人達はまだ虚ろな目で仕事をこなしているらしい。
シャイラはもうどうでも良かった。
なんせ、プロフェスと婚約したから。
一年の期間をおいてプロフェスが付き合ってくれと言い、その言葉に頷いた。
シャイラは渾身的な姿をずっと見てくれていた人たちに祝福された。
婚約して仕事をしなくてもよくなったかもしれないが、まだ未来は不安なので仕事は続けている。
いつどうなるか分からない。
また同じことが起こるかもしれないと、漠然と思っていた。
プロフェスはそれを見抜いて、好きにすれば良いと理解を示してくれる。
風の噂で、元婚約者の妻が愛人に走ったらしいと聞いた。
妻は知らないらしいが、女の方にも捜索と慰謝料を払う契約がなされているので、なくならない。
いつの間にか、なくなっている貯金に悲鳴をあげている頃だろう。
その頃には、浮気をする余裕もないはず。
憐れな元婚約者は、妻に逃げられたことでショックを受けて倒れたとか。
子供はどうするのだろう。
と思っていると、孤児院に預けられたらしい。
「気になるか」
調査書類を捲っていると、愛しい人がこちらを見詰めていた。
「うん。こっそり援助しようかと思ってる」
「また裏切られたらどうするんだ」
「いや、流石に寄付だからそれに対して返せとは言わないから」
契約でもなんでもない。
元婚約者は、契約を破ったからペナルティが凄かった。
これは寄付であり、本人の未来は本人が決めるのだ。
「お前がそれで良いのなら好きにすりゃ良い」
「ありがとう」
呟くと、プロフェスは頭にキスをして寝に上がった。
*
元婚約者サイド
「くそ!またか」
男が近くにあった看板を蹴る。
鈍い音を立てて看板は倒れると、ひしゃげた。
「くそっ、くそっ」
全てが順風満帆だった。
そうだったはずなのに。
全ての始まりは、船の事故だった。
その間のことなど、記憶にも思い出したくはない。
赤ん坊をこさえて、帰還するれば晒される冷たい目。
「なんで俺はこんな目に」
恨み節が口から出る。
しかし、どれだけ言っても借金はなくならない。
後に聞いた話しでは、もしも婚約者が最後まで探してくれなければ、永遠に見つからなかったとのこと。
その費用は、莫大だった。
その費用を何割か、こちらに負担するようにと請求されたのだ。
シャイラという女は有名な冒険者。
お金はあると聞いていた。
そのおかげで今、無人島から帰還できたものの、赤ん坊ができていたことにお冠になって、こうして借金を背負わされた。
これから静かに暮らせばいいと思っていたのだが、質素な暮らしに嫌気をさした共になった女が、男と駆け落ちしたのだ。
耳と目を疑うことだった。
奇想天外な事態に、赤ん坊の世話など無理なので施設にやった。
避妊も妊娠も、することが回避できなかった環境で生まれたので、自身にとっては邪魔でしかなかったからこそ、ちょうどいい。
その後は借金が減ることはなく、女は居なくなったというのに半額もしてくれないケチな元婚約者。
不貞腐れて歩いていると少し遠目で結婚式が行われていた。
派手で、華やか。
光に寄る生物のようにふらりと近寄る。
そこにいたのは知る者。
「シャイラッ」
また一歩近付く。
──ヒュッ
「ガハッ!?」
聞こえないのに突然頭に鈍い痛みが走る。
ころりとなるのは。
「米粒?」
米粒が目の前にあるので、間違えようがない。
目を見開き、確かめてもそれはただの硬い米。
米粒が今近くにある場所といえば、向こうの結婚式。
「まさか」
それを認識するや、体が無意識に震える。
薄くぼんやりしていたが、ヴェールを纏う女がこちらを見て笑っているように見えた。
ヒロインはサバサバしてますね。
もしよければ評価をしてもらえれば幸いです。
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