6-14 「叡智の守護者」
「志葉……?」
志葉って確か友人の一人だったよな?怪異のことを知らないやけに気配察知が鋭いやつ。見覚えのある剣携えて、紫苑を支えるように後ろから現れたの、どう考えてもおかしいぞ。
「……志葉」
「紫苑。……お前を、奪いに来た」
紫苑の表情はなんというか、何故か嬉しそうってよりは苦しそうに見える。巻き込んだから……いや違うな、なんつーか何かを重ねて見てる……?
「どうして」
「お前が、泣いてたから」
「駄目だ。もうこれ以上俺は」
「うるせぇ。二度も半身を奪われてたまるか」
うぉぉごり押すじゃん……。紫苑ますます泣きそうな顔なんだけど、これ大丈夫な奴?何かに気付いたのか一志はじっと二人のやり取りをガン見してる。
紫苑の動揺で能力が緩んだのか、楽園兵も少しずつ動き出す。おい今重要シーンだぞ黙ってみてろ……くっそまだ動けるほど回復してねぇ。
「すぐ終わらせるから。待ってろ」
志葉は紫苑にそう囁くと……え、消えたんだけど。目で追うとかそういう次元じゃない……ってこと?ぐるりと周囲を見回せば何も見えないのに楽園兵だけがバタバタと倒れていく。
「うわ」
一体は斜めに斬れていた。一体は真っ二つになっていた。一体は頭だけがすっ飛んで、また一体は中央に風穴が空いている。視線よりも速く先へ先へと進むからその姿を捉えられない。俺も一志も完全停止出来なかった楽園兵が、いとも簡単に破壊されていく。
「どうなって……」
「志葉、が?……紫苑。志葉はまさか」
「違う。……違ってくれなきゃ、困る」
ほぼ答えじゃねえか。何に対する答えかは知らないけど。あんだけ動けて戦える相手、どう考えても一般人ではないよな……。
「紫苑」
倒した楽園兵の残骸を踏みしめて立っている志葉。真っ直ぐに紫苑を見つめる瞳は緑に染まっていて、何でだろう、その視線の強さがゆっきーに重なった。
「俺の存在が、結果だろ?」
「違う!……お前は、違う」
「そう思わなきゃ、……お前はもう耐えらんないの?」
「っ……一緒だと、俺は、お前をまた喪うことになる……」
紫苑、苦しそうだな。志葉は一切ぶれない辺り決意が固まりきってるのが見える。今のところ一切感情が分からないんですけど、志葉は何を思って対峙してるんだろうな。
「言っただろ。お前を奪う、って」
「っ無理だ。どれだけ抵抗しても逃げきれなかった、二人でいることを守れやしなかった。……結局、俺は」
「逃げられませんよ」
え、何かコレットの様子……いや乗っ取られてねアレ?大人しいと思ったら利用されてやがる。また紫苑に近寄りやがって……くっそ万全の調子だったら見えない壁生成して顔面衝突させてやるのによぉ……!
「貴方は楽園の記録者。楽園を開き、ただ慎ましく我々に愛でられるだけの愛玩器」
「……」
「知識など要りません。無垢であればそれでいい。自我も負の感情も不必要。ただ楽園の地で無為に過ごすことが義務」
は、腹立つ……!不自由の代名詞みたいな指示じゃねえかぶっ飛ばすぞテメー。一志もちゃんとキレてるな……飛び出してないの奇跡じゃね?俺動けてたらアイツの口捻り潰したいレベルなんだけど。




