6-13 「誘心者」
あー……いってぇな。やっぱこの鎖碌でもねぇやつだったわ。いや頭なしで動くコレットが予想外すぎただけなんだけど。
「勿体無い……」
俺に絡み付いてた鎖消して頭を着け直す。お前の頭着脱式かよ……。鎖消したってことは能力でくっつけてるんだろうけどな。
「これだから全というのは度し難い。数の優位を個の優位だと勘違いし稀少資源を容赦なく使い潰そうとする」
おー苛立ってる苛立ってる。反動で地面に這いつくばってる俺を見る目が歴代屈指の冷たさですわ。いやぁ人を煽るのは十八番なんでね!
「所詮群の一、貴方の生死など私にも群にも影響は無いので」
『止めろ』
動きが止まる。俺もコレットも声の主が誰かは気付いている、その上で動けないし動かしてもらえない。硬い声は緊張じゃなく、全部押し殺したときの決意の声だ。周囲の轟音すらなくなって、この空間全てがただ一人の声に耳を澄ませている。
『これは色彩達の問題である。貴殿に関係はなく』
「と、り、引、は」
『我が身の所在はリューイではなく。我が身は因果を超えた者に捧ぐもの』
因果?因果……ああ楽園種族ってそういう生き物なんだっけ。因果に縛られた……忘却をしない種族。紫苑の言葉を要約すると、因果をどうにかしないと誰も紫苑を救えない……っていうことだろうな。
紫苑が背負う因果が何なのか、っていうのは分からない。楽園の鍵って言われるその役割こそが因果なのかもしんないし、それ以外なのかもしんないし。いっぱい呼び方があったってことは因果も複雑なのかもしれないし。
「楽園……」
楽園からイメージ出来るの禁断の果実くらいだし確かそれってリンゴだったかブドウだったか……いやブドウは楽園関係ない気がするな。ブドウは奏さんが言ってた方だよ。イザナギとイザナミのやつ。どうなんだろ……因果を捨てたいんだからあんまり楽園に近すぎるのって駄目なのかな、取り敢えずどっちかイメージ……ああ考えてたらなんかブドウ出来ちゃった。わーフルーティー。
「いやよりによってブドウかよ……」
考えといてアレだけどちょっと遠すぎる気はするな。でも同時に考えてこっちしか出来てないってことは俺にとってリンゴを生成する難易度は高いっぽいし……難しいな。
『貴方達に、我が身は捧げられない』
目の前よりも深い溝だな。どうせ救えない、救わせないという強い意思すら感じるぞ。諦観より決意の方が強いの、逆にすげえよお前。
「紫苑……」
「……一志。今のが全てだ。お前も例外じゃない」
やっぱり一緒に帰る気はない、と。友達である一志にすらこの対応は……双方傷付くよな。だってあれどこからどう見ても本心だとは思えないし。いや、正確にはなんていうんだろうな……エゴという名で押し殺した献身にしか見えない。
「俺が止めている内に二人は逃げろ。……お前達に楽園兵は倒せない」
このロボット、楽園兵って言うのか……一志の苦々しい表情から一志ですらちゃんと倒せてはいないことを悟る。俺なんかちょっと腕とか膝落とせた程度だぞ、再起不能にはとてもとても。
「……因果さえどうにか出来れば、お前は帰ってくるんだよな?」
「…………理論上は、な」
「なら」
「今ここで、お前を奪うよ」




