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解像度×理解度  作者: 霧科かしわ
1 日常とその縁
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1-8 「後を語り先を問う」

 結論から言おう。奏さんマジで夢オチにしやがった。流石に全部は無理だったみたいだけど、それで誤魔化されちゃう樹はもう少し奏さんを疑え。

「万が一を考慮して恭也も玲士と緊急時の符号決めときなよ」

「奏さんとこのワンコール三回とかそういう感じ?」

「そう」

玲士も樹に巻き込まれた形だけど怪異に狙われた経緯がある。因みにあのときの怪異は藍沢先生曰く”逃げられた”らしいから、その内会うかもしれない、と。でかいスライムみたいので相性が悪かったらしいんだよね。藍沢先生の戦闘方法は俺知らねぇけど。

「樹はともかく玲士は怪異のこと知らないからなぁ……無難なとこでいえばお前がスマホを二台持ちする」

「まず玲士に頼ってもらうところから始めなきゃいけないんだけど」

「その辺りは大丈夫でしょ。お前に対する玲士の態度、完全に雛鳥が親を誤認してるときのやつ」

「分かりづらい例えだなー」

それつまり刷り込みってことじゃねぇかなぁ……?玲士は確かに可愛いけど俺の方が玲士に頼りきってるぞ。主に勉学。ああ誇れねえ。

「お?今雛鳥の話した?」

「してないから帰って」

「えーつれなぁい。奏さんが先帰ったから僕後始末まで一人でやったんですけどー」

「はいひよこ饅頭」

「わーいありがとー!」

 ひいらぎさん単純……!ひと箱まるまる受け取ったひいらぎさんがくるくると楽しそうに回る。何だろうな……説明してくれた時は大人っぽいとか思ってたけど、こう見ると大分動きが子供っぽいぞ。

「あ、そうそう。恭也くん今後もヘレティックに来るんだよね?」

「え、あーはい。一応その予定ですけど……」

「じゃあちゃんと自己紹介しとこうかな。僕はひいらぎ、色彩は赤だよ」

「恭也です。俺も色彩は赤」

「おーナカマ!嬉しいねぇ」

楽しそうなひいらぎさん。というか自己紹介で色彩教えてくれたのもしかしてひいらぎさんが初めてか?シエルさんも陽翠さんも俺色彩知らねぇもんな……。

「色彩赤はムラが大きくてあんまりソロでは戦闘出来ないからねー。話聞いた限りだと君戦闘員適性あるじゃん?いつか手合わせ願いたいなっ!」

「手合わせ……」

ちょっと気になるな手合わせ。流石に奏さんと戦いたいとは思わないけど、他の人の戦い方はちょっと……いや大分気になってる。

「俺もいつかやりたいっすね……」

「うんうん!やる気があってよろしい!」

ひいらぎさん、フレンドリーだし気さくだしでいい人すぎない?

「あ、そろそろ僕仕事だから!また今度ねー!」

「はい!」

ぱたぱたと軽い音を立てて走り去っていったひいらぎさん。元気で明るい人だな……同じく見送った奏さんが普段と変わらない表情で俺の方に視線を向ける。

「……恭也、連れてきた俺が言うのもなんだけどあんま関わりすぎると同業者扱い受けるよ」

「あー……でも戦える力がないと玲士のこと守れないし」

「自衛だけなら今でも充分強いよお前。玲士一人なら守れるだけの技量もあると思うけど」

「……」

 奏さん、今更怖気づいたな?俺が関わって、今の関係性が歪むことに怯える奏さんは多分過去を引きずりまくってる弊害だ。……何だかんだ俺達のことも心配してくれるんじゃん優しいねぇ。

「奏さん。俺は別に同業者扱い受けてもそういうもんだって受け入れるよ?」

「……でも、それは違うじゃん」

「戦える力が欲しいって思ったのは事実じゃん。最初の目的は玲士を守るためで、最初のきっかけが些細な巻き込まれだとしても、俺は、玲士だけじゃなく樹も、奏さんのことも守りたいって思う訳よ」

「必要ないよ」

「そんなの今はそうでもいつか必要になるかもしれねーじゃん。支えあえば憂いなしってさ?」

「備えあれば、だよ」

「あれ、そうだっけ?」

やべぇ馬鹿がばれる……!いや今更だけど。

「とにかく!俺が奏さんの同業者扱いうけても今の関係が変わることはないし、俺の交友関係が海のごとく広がってくだけだから問題なし!」

「……本当に?」

「本当に!」

俺の根拠のない自信満々の言葉に、奏さんはちょっとだけ悩むように沈黙を返したけど最終的には諦めたらしい。細い細い息を吐いて、それから少しだけ口角を上げた。

「じゃあシエルに言っとく。遠慮せず情報叩きこんで良いよって」

「え゛」

もう既に結構なスパルタ受けてるんですけど……!?まだ色々覚えることあんの?これ以上のスパルタされるの勘弁してほしいんだが!?

「お前が、何があっても生きられるように」

「ががががガンバリマス……」

「うん。頑張って」

あー楽しそうだなチクショウ……!絶対俺がこうなること分かってて黙ってただろ奏さぁん……!そうだったこの人悪戯大好きだもんなァ……!

 …………それでも、楽しそうな表情に混じる安堵を見つけてしまったから、俺はこうするのが良かったと何度だって思うんだろうけれど。


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