6-6 「実質強化合宿」
「戦闘、特に知性のある相手と戦うときは双方の手札の管理、情報とリソースの残量を正確に把握することだ。相手を理解し、自分を管理してそうして初めて作戦ってのは機能する。いかに主導権を握るのかってのは見た目だけじゃ判断できねぇってことだな」
俺の猛攻をものともせず、一切のブレなく言葉を続ける傭兵。おう言っておくが現状は見た目も実情も俺が不利だぞ煽ってんのかコイツ。
「お前、本能で動くなら呼吸を意識しろ」
「こ、きゅうっ!?」
何言ってんだこいつ。物は試しで相手の呼吸を意識してみるけど……あ、確かに言いたいこと分かるな。相手の状況も分かるし攻撃のテンポ感ってのもなんとなく分かる。だからって一気に状況が好転するわけじゃないけど……少なくとも、目の前にいるコイツが一切動揺してないことだけは分かるぞ。何やっても呼吸乱れねぇ。
来華は演算者ありきでの”見てから避ける”だった。でもコイツ、多分そういう能力じゃない。単純にバトルセンスが高くてリソース管理が滅茶苦茶うまいだけだ。距離感が絶妙な上にさっき言ってた呼吸の取り方が完璧に近い。多分俺が知ってる中で一番近い方向性の戦い方をするのはソウさん。
「お、呑み込みが早いな」
「そいつはどう、も!!」
くっそ明らかな手加減!!!分かってんだからなお前が手札を一切見せてないことくらい……!理解も何も、俺の実力じゃこいつの呼吸を乱すことすら出来ねえ!
こっちに対して本気の殺気はこない。そもそも攻撃すら殆どしてきてない……されたのあの小石のときだけなんだよな。小石のあれも例えとしてやっただけみたいに見えるし……いまいちコイツの目的が読めない。足止めというより俺の鍛錬じゃん。
「お前何が目的だ……?」
「傭兵にも守秘義務ってあるんだぞ?」
「ま、真面目……!」
いや傭兵としての信頼に関わるから当たり前か。……改めて考えると傭兵業って何してんだろうな。雇われ型の同業者??
「隙あり」
「うぐっ」
こいつ……!肉体的にダメージはなくても精神的ダメージってのは結構あるんだからな!?おいイタズラが成功したみたいな笑顔浮かべるんじゃねえ!
「くそがよ……!」
「勿体ねぇな。やるんだったら本気でやれ」
「本気だが!?」
これが今の全力だよくそったれ!そう言い切った俺の言葉に、初めてコイツは呼吸を乱した。……行動は全然乱れてないけど。
「…………なるほど?」
「……?」
気配が……変わった?感じるのは殺気じゃない、けど、神経を直接握られてるような……皮膚全部引っぺがされて感覚が敏感になったみたいな、そんなひりついた気配だ。細められた瞳が、あざけるように上げられた口角が、その感覚を補強する。
「今の本気がこれなら…………まだ子供のお前の方がマシだな」
「……あ゛ぁ゛?」




