5-18 「初代の紫」
「紫苑……!?」
紫苑、同じ名前の別人じゃなけりゃ、前に悠人さんが言ってたレスバが強すぎる人のはず。一志の反応を見るに、知り合いなのは確かだろう。
「んん?じゃあ紫苑ってやつ、むっちゃ長生き?」
「時代によって名前も姿も変えて生きてきているからな。とはいえ、リューイに所属していたのは初代の頃と今だけだぞ?」
あ、やっぱ初代の追放者って奴が紫苑なんだ……。紫が楽園っていうのも紫苑が紫だから……ってことかな、旧族だってバレてるってことはリューイの方も初代の一人だって分かってて取引材料にしたってことだけど。
「どうして今になって……」
「逆だ。今だからこそ、奴もまた動かざるを得なくなってしまった。この言葉の意味、貴様はよーく理解している筈だが?」
「……」
何か俺を放置して二人だけで会話してますねぇ……一志、朱鳥の記憶見た感じ割と新参っぽいんだけどそれはそれとして色々秘密抱えてそうなんだよな。
「今再び色彩は揃う。それが転生であれ本人であれ……先に動いたのはあちらだぞ」
「くっそ……!」
「一志一志、俺置いてかないで」
途中から何も分かってないんだよなー!取り敢えず紫苑って奴が初代の紫で取引材料にされたってことくらいしか分かってないんですわ……。あとは楽園の鍵だから……あれ?
「楽園の鍵ってことは、楽園教に狙われるんじゃね?」
「気付いたか」
「は!?」
「しかもジョーカー、確か今リューイは教会に全ての都合を握られてるとか言ってなかった?」
「ほう、ちゃんと覚えていたようだな。その通り。現在に続く色彩が黄色の者への執着は初代の黄色が教会にとっての現人神のような存在であったが故だが、最も初代に近い幼子は狂犬二匹に阻まれ迂闊に手を出せない状況にある。研究所すら潰され形振り構ってられなくなった奴らにとっては、最早初代であることに何の意味もない」
研究所、確か決してそそげぬ罪を犯したとか言われてた場所だよな。えーっと、初代の黄色は教会……多分楽園教にとってのカミサマみたいな存在で、リューイは楽園教によって現在は運営されている……?で、現在初代の転生者とか初代本人が集まり始めてて……楽園教にとってのカミサマである黄色は子供で狂犬二匹?に匿われてる?そんでもって焦ったリューイは初代本人だと分かった上で紫苑を楽園の鍵として扱おうとしている……ってことかな。
「憶測なんだけど……初代ってことは強いんじゃねーの?」
「強いよ。紫苑はそんな簡単にやられるタマじゃない」
一志の信頼しきった言葉は間違いじゃないんだろう。一志に身内贔屓っていう概念があるのかは分かんないけど。
「あいつは、自ら囮になったよ。少しでも人員を減らさなければ、注目を逸らさなければフミを逃がせなかったからな」
逃がせなかった、その言葉が妙に耳に残る。誰かのために、皆のために。何かずっとそういうやつばっかだな。……そういうやつだからこそ、利用されるんだろうけど。
「自己犠牲は、共通点?」
「どうだろうな。かつての後悔が自らの価値を曖昧にしているだけかもしれんぞ」
それは……腹立つな。俺は過去を知らないのにあっちは勝手に囚われて手放そうとするとか。過去は消せないのに、その過去を引き合いに出されたらもう勝てねーじゃん。
「そう責めてやるな。貴様もいずれ知ることになる過去だ」
「俺は、もっと早く知りたかったよ」
知ってどうにかなったとは思ってないけどね。それでも、無知を理由に手放されるのだけは勘弁してほしかったな。




