5-17 「楽園の子」
「楽園種族、と呼ばれるもの達を知っているか?」
あれ、それさっきコレットさんが言ってたやつだよな。あの人旧族がどーのこーのって言ってたけど。数が少ない……今は廃れたはずの種族、みたいな感じだった。
「……楽園にいた人類、人であって人でない者、だよな?」
一志の言葉にジョーカーはゆるりと口角を上げることで肯定した。人じゃないんだ、楽園種族……。
「大まかな認識はそれで合っている。因果に縛られた忘却をしない種族、ただ愛玩するために産み出され、本来ならば楽園から出られぬ籠の鳥」
忘却をしない……ゆっきーとは正反対の性質だな。ぶつけたらどうなるんだろ。その辺りは技量による?じゃあゆっきーが勝ちそう。
「楽園から出られない……あれ、さっきコレットさんが旧族の楽園種族を取引したとか言ってたけど」
「コレットって誰?」
「見つけ次第駆除すべき邪悪だ。……ああ、本来ならば楽園種族は地上の世界強度には耐えられない。だが、”楽園の子”は?」
ジョーカーってコレットさんに対して何か当たり強くない?気のせい?
楽園種族は楽園から出られない。けれど、楽園の子によって楽園は閉ざされた……あ、確かに矛盾するな。楽園の子って言ってるんだから多分そいつは楽園種族のはずだし……。
「いるのだよ、楽園種族でありながら地上に降りた者が。記録者、叡智の結晶、追放者、楽園の子、楽園の鍵……様々な名を持ちながら、その正体を頑として明かすことなく現在まで生きているものが、な」
「……記録者?」
一志が怪訝そうな声で復唱する。忘却をしないから記録者……っていう感じなのかな、わざわざ楽園に鍵かけてまで出て来て追放者って呼ばれるのもちょっと違和感あるけど。……というか追放者ってワード、さっき聞いたぞ。
「受容体を知っているか?中継地点にあったあの結晶、その上位互換だ」
あー……?樹達を取り込んでたアレか。俺はバンバン壊してたけど、ノエルさんも壊してなかったし……多分一志もそうなんだよな。あんだけ暴れても結晶ヒビ一つ入ってなかったし。何か特殊なモンだったんだろうなってことは分かる。大雅は壊したっぽいけど。
「中継地点にあった結晶と対峙したのならば分かっているだろうが、あれは今回、色彩が青の者からの攻撃は受け付けないようになっている。青の呪いの応用だな。敵生体もまた模倣でしかなかっただろう?」
「呪いの応用……」
やな応用だ。つまりあの青の呪いの劣化版だったツタ、あれも受容体ってやつだった、ってことか。だから第二形態怪物化した……?いやそれにしたってあの怪物化は謎だわ。
「あれは本来対峙した全てから情報を集積する結晶でしかない。精神汚染を無効化し、触れたら高密度の情報圧で対象を廃人にする。この情報圧は世界強度、と言い換えてもいい」
「つまり……楽園種族が地上に来れないのは、受容体のせい、ってことか?」
「賢いな」
あの結晶、とんでもないモンだったんだ……あれ自体は劣化版らしいけど、触れただけで廃人になるとか即死ギミックじゃね?
「現在楽園種族、と呼ばれるもの達に受容体はない。また旧族は一切後継機をつくらなかったため、血縁関係もない」
「え、じゃあ言ってるだけ……ってこと?」
「いいや。詳細は省くが種族が違うのは確かだ。能力とは違う特殊な力を持っている者達、因果に縛られ自由を奪われた者達の総称だよ」
能力じゃない力を持った不憫属性……何か、ぼやぁっと誰か浮かびそうな気配してるな。気のせいかな。
「今存在する旧族はただ一人、記録者と呼ばれかつて追放者としてリューイの設立に携わった紫。今の名前を、藤水紫苑という」




