5-15 「人は彼を、”天才”と呼ぶ」
笑みは一切崩れない。ポーカーフェイスにも程があるな、奏さんも大概だから別に驚かねぇけど。
「一応聞くが、証拠は?」
「リアンが結界の説明をしたとき、ゆっきーの名前が出たけどリアンはらしい、とかだそうだ、とか……明らかに人から聞いた風な喋り方だった。その割にゆっきーに対する理解度は高いというか……ゆっきーの実力を正確に把握してるみたいな言い回しだったから。そんでもって俺の能力を知ってたり、やけにリューイで起こったとおぼしきことに詳しかったり……あとは勘!」
「勘か」
おう勘だよ。疑惑はちょくちょくあるけど確信持てそうな部分はなかったもん。
「ふむ、……勘というのは些か面白くないが、如何にも。私はジョーカー、シンの元同僚だ」
やっぱ合ってた!今のところあんた不穏ムーブして悪人演技したがってる不器用善人なんだけど大丈夫?元々?
「あの馬鹿が先に辿り着くのは予想外だったのだが……そうか、シンの友人に常識を求める方が間違いだったな」
「何か俺馬鹿にされてね?」
「勘で当てる相手には言われたくないと思うぞ」
ぐう正論。でも勘だろうと当てなきゃ不穏ムーブ続行してたような気がするからさぁ……。
「って奏さんと会ってんの!?あの人既読つけなくて行方不明扱いなのに!?」
「ああそれは私の指示だ。辿り着いたからには相応に働いてもらわなくてはな」
あ、奏さんちゃんと連絡には気付いてたんだ。そんでもって働かされてるんだ……いやよく言うこと聞くなぁ!?これが”気に入ってる”の特権ってやつか……。
「ええと……お前って結局どこまで知ってんの?」
「貴様が聞くようなことはほぼ全て知っているだろうな。信じるかどうか、開示するかどうかは双方の匙加減ではあるが」
あの全人類興味ないムーブしてる奏さんが今でも暗号を覚えている相手だぞ?絶対悪い人じゃないんだろうなっていう確信がある。ジョーカー、態度が紛らわしいだけで絶対指揮官とか向いてるタイプだよ。
「じゃあ今回の騒動も全部把握してる感じ?」
「そうさな。その話はもう少し後にした方が良いだろう」
何でだよ。後にするってことは前提を説明してないとか事態進んでからの方が理解しやすいとかそういうアレ?いつだって先に動いた方が解決って楽じゃない?
「リアン。丁重に案内してやれ」
「分かりました」
あ、リアンがどっか行った。案内ってことはここに誰か来る……誰か向かって来てるってこと?ひいらぎさんとか……?
「さて、騒動と直接の関係はないが、少し説明はしてやろう。リューイに所属していた雪代の遺物についてだ」
「ああ、結界みたいな?」
「そうだ。あらゆる書類からその存在を消した雪代だが……組み上げた魔術はひとつも消え去りはしなかった。殆どは雪代以外が使うと劣化にしかならぬものばかりだが……結界のように、元々雪代が不在でも動くように組み上げられたものは今でもそのクオリティを保っている。朱鳥に掛けられた偽装の術式なども、な」
そういやゆっきー、朱鳥がホムンクルスだってばれないように細工したんだっけ。そうだよな、ゆっきーいなくなったのにばれてないっての、まだ術式が継続してるってことだったんだ。
「ヒナと名付けられたあの鳥は術式が具象化した姿だぞ。朱鳥に合わせて鳥の姿をとっているが、正体は勾玉のはずだ」
勾玉。勾玉??ゆっきーって術式を勾玉に刻んでたの?




