5-10 「底の柊」
「……人は、僕らのことをそう呼ぶね」
マジかよ。本当に色彩が指標でしかない例じゃん。あれ、でも妖怪と怪異の違いって……確か、味方かどうか、じゃなかったっけ?ふわりと姿を現したひいらぎさんは、静かに俺を見据えている。
「ひいらぎさんは妖怪じゃん」
「違うよ。僕は怪異だ」
「味方は妖怪……」
「リューイには敵対してるから怪異」
ご、強情……!何でかは知らないけどこの人意地でも妖怪だと認めない気だ……!ひいらぎさんが怪異なんだったらもっと人外してる奏さんとかどうなんだよ。正体が見ただけで正気削るとかいう鎮さんに至っては人外超えてエイリアンになっちゃうじゃん。
「……まぁいいや。ひいらぎさんが朱鳥を育ててた……んだろ?」
「たった数日ぽっちの生活をそう表せるのなら、そういうことになるね」
なーんかひいらぎさん、トゲトゲしてる気がするな?警戒してるっつーか、心を開いてないっつーか…………ここ朱鳥の深層心理であってひいらぎさんに影響はないと思ってたんだけど、どういうこと?
「ひいらぎさん、朱鳥を助けに来たんじゃないのかよ」
「助けに来たよ。もう二度と失わないように」
「……つまりそれ、起こすつもりはない、ってこと?」
「この子を傷付けるしか脳のない世界なんて、必要ないでしょ?」
…………うん。おーけーおーけーよーく理解した。色々言いたいことがない訳じゃないが、ここは朱鳥の深層心理、暴れて困るのは朱鳥。だから俺は賢くいこう。
何の変哲もない拡声器を出現させる。別にこれ自体に特別な機能なんてつけてない。ただ声を出したらその声が大きくなるだけ。……一応ヒナには防音ガードつけておこうな。
息を吸う、息を吸う。俺の目的は願うこと、だからそれ以上でもそれ以下でもない方法で言葉を届けてやろうじゃねえの。
「朱鳥!!!」
「うっるさ……!」
「俺は!お前に願いに来たぞ!!!」
大声を拡声器で更に大音声にする。いででヒナつつくなつつくな。ひいらぎさんは耳塞いでるし、朱鳥はぼんやりとしているけど目を開けてる。よし、聞こえてるっぽいな。
「俺はァ!!楽園を開くことなんざ望まねぇ!!!代わりに!お前の願いを望む!!!!」
「は……?」
「さぁ朱鳥!!!!お前が願いを言え!!!!俺がその願いを聞き入れる!!!!」
ひいらぎさん、明らかに表情が何言ってんだコイツみたいな感じだったぞ。いやでもこれが正解じゃね?
俺は朱鳥が「願う」ことを願った。その願いがなんであれ、叶えるのは俺だと宣言した。つまりこの場合聖杯の能力は、「朱鳥自身の願いを言う」ことに使われる、はず。
朱鳥の瞳は赤いしひいらぎさんは怪訝な表情してる。ヒナにはノンストップでつつかれてるけどちょっと反応してる暇はない。流石にこの願いに朱鳥の全生命使うほどリソース必要だとは思ってないけど……。
「ぼく……の、ねがい」
「おうそうだよ。言っとくけどお前がどこかの誰かが祈った願いを代弁するのは許さねーからな。お前が、心の底から祈った願いじゃなきゃ聞き入れねぇ」
楽園開きたいとか言われるのは御免だからな。ゆっきーに会いたい……だと微妙に困るけど、アテはあるし。それ以外が来たら来たでどうにかなるだろ、多分。
「…………ぼく、は……」




