5-9 「底の底」
「無事かヒナー!?」
ヒナを追って穴へと落ちる。元々上下も分からない場所ではあるけど、まぁ穴に落ちてるんだから下に行ってるっていう認識で良いんだろう。……あのヒナ、朱鳥っぽいけどシレっと落ちてるんだよな……。
「ヒナー!!」
「ピー!」
見つけた!鳥だから流石に無事か。一応肩に乗せ直して周囲を確認。さっきと大して変わんないような気はするんだけど……あ、地面の感覚だけちょっと違う。
「土……ぽいな」
「ピュイ」
さっきの場所より外みたいな気配が強い。相変わらず虚無みたいな空間ではあるけど。正直なんも感じないところより居心地が良いな。
「上……は、戻った方が良いのか?」
「ピュ」
願えって言ってたけど……朱鳥がどこにいるのかが分からないんだよな。現実に戻っても意識はないだろうし。やっぱここ進むしかないかぁ。
適当に進めば進むほど、少しずつ外の気配が強くなっていく。ここが朱鳥の深層心理なら、朱鳥にとっての一番居心地が良いところが外ってことになるんだけど。
「ん……?あそこ、誰かいるよな?」
「ピュイ」
流石に朱鳥……だと思うけど、ヒナの例もあるから油断出来ねぇ。いや本当にヒナは何なんだよ。このヒナが朱鳥でも朱鳥じゃなくても、どっちにしろ突っ込みいれる必要あるんだが??
踏み入れた先は完全に森だった。森というか……最初にゆっきーとシンさんがいた怪異の領域、恐らく朱鳥が拾われた場所。
「……朱鳥?」
「ピョ……?」
「…………」
朱鳥が大きな木の根元で眠っている。魘されてる感じではないし、呼吸してる様子も見れるからそこまで切羽詰まった状況ではない。ただ……。
「また木、かぁ……」
「ピ」
朱鳥を縛ってた術式も木だったんだよな……やっぱどんな術式にしろイメージしやすいものがモチーフにされがちなのか?
「あす……」
「寄らないで」
思わず後ろに飛びのいた。声は確かに聞こえた、けど姿はどこにも……木の上?
「……ひいらぎさん?」
「これ以上、朱鳥を奪わないで」
木の上に人の影はない。でも朱鳥の後ろ辺りから声が聞こえてるし……木の陰にいるのかと思って透視してみても誰もいないし。ヒナがしきりと俺を突いてくる。
「ちょっと大人しくしてろヒナ」
「ピ!ピ!」
「今お前に構ってる場合じゃないんだって」
「ピ……キ!」
「木?」
木……?朱鳥が寄りかかってる大きな木は一回透視したけどそんな人影なんて……いや待てよ?
「まさかひいらぎさん……」
じっと目を凝らす。ピントを合わせるのはひいらぎさんからあの命そのものみたいな気配。……大きな木は、その身に溢れんばかりの煌めきを蓄えて朱鳥を支えている。
「ひいらぎさんが木……ってことか?」
ピンときた。朱鳥が拾われた場所にもあった大きな木、ひいらぎさんの「叶えてほしかった」、っていう不自然な言葉、そして、俺がみたひいらぎさんから伸びていた気配と大きな木の気配が一致すること。
「ひいらぎさん……あんたもしかして、怪異……なのか?」




