5-6 「底の入り口」
何もない空間に放り出される。どこだろうなここ、何かを知れるのは間違いないけど、ここが何なのか、っていうのはあの謎の声はついぞ説明しなかった。
「んー……」
「ピョー……」
腕組んで悩んでたら隣から気の抜けた声が……ひよこ?俺見て首傾げてるなコイツ……警戒心ないのか?
「ひよこ……」
「ピョー!」
痛い痛いつっつくな!!羽ばたつかせてるけどこれ俺怒られてます?ひよこじゃねーよ!みたいな感じか?
「どう見てもひよあだだだだ」
「ピ、ヨ!」
「いやピヨピヨ言ってんじゃん!」
「ピョー!!!!」
何だコイツ!?当然のように俺の言葉分かってるし意思疎通は一方的だし!!なんなんだコイツ!?
「あー分かった分かった。じゃあお前ひよこじゃなくてヒナって呼ぶからな」
「ピ!」
「良いのかよ」
何でひよこだけ異様に嫌がるんだよ。ヒナもひよこも変わんねーだろ。ひよこ……もといヒナが俺の肩によじ登って収まりのいい位置に陣取る。いやホント何?
ヒナを肩に乗せたまま虚無を進み続けてれば、少し先にぼんやりとした光が見えた。近付くにつれて少しずつ音や色がつき始め、それによってこの空間の意味を知る。
『おいおい……何でこんなとこに子供が』
『ゆっきーそれ子供じゃない』
『え』
『なんだっけ、ほむす…?』
『ほむす?』
『まあいいや。そいつ、成立して精々一週間だよ』
『……俺とシンさんが任務に振られたのはそういうことかよ』
光の中に見えるのは今と大して変わらない奏さん……じゃなくてシンさんと、樹の面影を宿すゆっきー。ゆっきーの腕の中には幼い朱鳥がいて、ゆっきーとシンさんの会話はあまり明るいものではない。
『証拠隠滅のためにゆっきーを利用しようとしたってこと?』
『だろーな。あーくっそシンさんを利用しようとしたとか腹立つ』
……ゆっきー思ってたよりガラ悪いな。シンさんが湿度高めに執着してるのは分かってたから別にいいけど、ゆっきーの執着方向、何というかじっとりとかじゃなくてどっしりしてる。
「朱鳥が……ホムンクルス?」
確か大雅は怪異の領域で見つかった両親不明の幼子っていってなかったか。いやホムンクルスなら両親不明なの合ってるけど、なんかこう……言葉遊び感があるな。
『シンさん、俺ァこの子を連れて帰ろうと思うんだけど、ホムンクルスだってことお口チャック出来る?』
『お口チャックするの?なんで?』
『ホムンクルスを人だと思わねー輩がいるから、ってのと……俺達が知ってるってことを知られないため』
『見たら分かるのに?』
『そこは俺が誤魔化せばいいっしょ』
強気だなゆっきー……それが出来るだけの実力があるってのは分かるんだけど、シンさんに対して指示出してる姿とかやっぱ樹であって樹じゃないんだなっていうのがよく分かる。
「あれ……」
ノイズが入って映像が切り替わる。これは……ちっちゃい大雅?と、多分ソウさん。ソウさん今と変わってなくね?
『わぁ。大雅と同じくらいかな?はじめまして』
『は、じめ、まして?』
『ふふ、可愛いね』
にこにこと微笑むソウさん。うーん変わらないなこのひと。ああでもやっぱ青の呪いにかかる前っぽいから普通に元気そう。大雅は……真顔で朱鳥ガン見してるな。
『大雅』
『たいが?』
『ん』
わー!すっげー不愛想!新鮮!ちっちゃな手をつないでお兄ちゃんしてる大雅、今じゃ考えらんねぇ!




